安倍晋三の法を以って決めたことは法を以って変更すべきを法に拠らずに私利を以って決めた陰謀もどきの黒川検事長定年延長閣議決定

2020-05-11 12:36:18 | 政治
 安倍内閣は、と言うよりは、その身内贔屓の性向から言って、安倍晋三自身の何らかの私利を目的とした意向に基づいてのことに違いない、2020年2月7日退官予定だった、首相官邸に近いとされる検察ナンバー2の東京高等検察庁検事長黒川弘務(63歳)の定年を半年伸ばす閣議決定を2020年1月31日に行った。

 1947年施行の検察庁法22条「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」

 法を以って決めたことは法を以って変更すべきを法に拠らずに内閣の長である安倍晋三の意向で左右することも可能な閣議で決めた。マスコミは検事総長に就任させる布石とも見られていると報じているが、無理はない。黒川弘務が検事総長に就任したなら、森友・加計疑惑、「桜を見る会」の公職選挙法及び政治資金規正法違反疑惑等々で訴えられたとしても、安倍晋三の私利を受けた黒川弘務の私利を以って裁判に応えることも不可能ではない。

 この2020年1月31日閣議決定に対して当時立憲民主党所属の山尾志桜里が2020年2月10日の衆議院予算委員会で早速取り上げた。

 山尾志桜里「私の手元にありますけれども、昭和56年4月18日、衆議院内閣委員会、これは当時民社党の神田厚さんという議員がこういうふうに聞いています。『定年制の導入は当然指定職にある職員にも適用されることになるのかどうか。たとえば一般職にありましては検事総長その他の検察官』、『これらについてはどういうふうにお考えになりますか』と聞いています。それに対して、斧政府委員、これは人事院の事務総局の方です。『検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております』、『今回の定年制は適用されないことになっております』。こういうふうにもう答弁していますよ、定年制は適用されないと、この国家公務員法の。

 適用できないんじゃありませんか」

 対して法相の森まさこは次のように答弁している。

 森まさこ「ですから、先程から答弁しておりますとおり、定年制の特例が年齢と退職時期の二点、これについて特例を定めたものと理解しております」

 「先程から答弁しております」と言っていることは少し前に「昭和56年の国家公務員の(勤務延長の特例を含む定年制を導入した)法改正が60年に施行されておりますので、そのときに、(勤務延長の)制度が入ったときに勤務延長の制度が検察官にも適用されるようになったと理解しております」と答弁したことを指す。

 国家公務員法第81条の3「任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
 2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、1年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して3年を超えることができない」等々定年延長を特例として定めていて、その上、定年退職者の再任用をも認める別の条項を設けている。

 但し森まさこが昭和60年生率の国家公務員法の改正による勤務延長の特例を含む定年制導入と同時に「勤務延長の制度が検察官にも適用されるようになった」と言っていることが正しいとすると、国家公務員法と検察庁法は連動した法律ということになる。

 だから、検察庁法で勤務延長についての法改正の手続きを踏まなくても、国家公務員法でその手続を取りさえすれば、事足りたということにすることができる。

 山尾志桜里が昭和56年4月18日の衆議院内閣委員会での斧政府委員の答弁を紹介しているが、当該委員会では内閣提出の国家公務員法の一部を改正する法律案の審議を行っていた。その答弁箇所の全文を「国会会議録」から引用して載せておく。

 斧誠之助(人事院事務総局任用局長)「検察官と大学教官につきましては、現在既に定年が定められております。今回の法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになっておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております」

 改正国家公務員法では「別に法律で定められておる者を除いている」、つまり国家公務員法と検察庁法は別建ての法律として扱っている。だが、森まさこは国家公務員法の改正当時から国家公務員法と検察庁法を連動した法律として扱っている。

 大体が国家公務員法の改正による勤務延長の特例を含む定年制導入と同時に「勤務延長の制度が検察官にも適用されるようになった」と国家公務員法と検察庁法を連動させて、検察庁法に勤務延長の特例に関わる条文を書き込む法改正を行わなくても、勤務延長の特例に関しては国家公務員法を規準にすれば事足りるとすること自体に無理がある。

 国家公務員法と検察庁法はあくまでも別建ての法律である。だが、安倍晋三以下、安倍内閣の面々は検察官と言えども一般職の国家公務員であるからと、国家公務員法の適用範囲内の扱いとして、検察官の定年延長を押し通そうとしている。

 それが同2020年2月10日衆議院予算委員会での森まさこの対山尾志桜里答弁となって現れている。

 森まさこ「検察庁法22条には、定年制を定める旨、そして定年の年齢と退職時期の二点について特例として定めたと理解をしております。

 そして、32条の2だったと思いますが、ちょっと条文の数字が間違っていたら申しわけございませんが、そちらの方に国家公務員法と検察庁法の関係が書いてあるんですけれども、もし(検察庁法に)勤務延長を規定しないということであるならば、そちらの方(検察庁法)に記載がされるべきだと思いますが、記載をされていないこと、そして、検察官が一般職の国家公務員であることから、特例が定められている以外については国家公務員法が適用されると理解しております」

 検察庁法の第22条を改めて記載する。「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63に達した時に退官する」

 但し検察庁法に勤務延長の規定がないということなら、検察庁法に記載がされるべきだが、検察庁法の32条の2によって検察庁法で「検事総長は、年齢が65年に達した時」に退官と「その他の検察官は年齢が63に達した時」に退官の「特例が定められている以外については国家公務員法が適用されると理解している」と、検察庁法の32条の2を根拠にあくまでも別建てであるはずの国家公務員法と検察庁法を連動させて、国家公務員法で検察官の勤務延長を図るべきだとしている。

 つまり国家公務員法の力で検察庁法第22条の「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63に達した時に退官する」の「特例」の時と場合の無効を認めていることになる。「特例が定められている以外については」の「以外」とは65歳と63歳の定年以外の勤務延長や再任用の規定についてはという意味となるから、検察庁法第22条のなし崩しの規定以外の何ものでもない。

 一つの法律の条文を別の法律の条文で操作する。この無理筋は安倍晋三及び安倍内閣にとっては無理筋でも何でもない、常識とすることのできる流儀を持ち前としているらしい。

 では、森まさこが検察官の定年延長の正当性根拠として掲げた検察庁法の32条の2を見てみる。
 検察庁法32条の2「この法律第15条、第18条乃至第20条及び第22条乃至第25条の規定は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法(注・国家公務員法のこと)の特例を定めたものとする」・・・・・

 要するに検察庁法第15条、第18条乃至第20条及び第22条乃至第25条は「検察官の職務と責任の特殊性に基いて」国家公務員法の「特例を定めたものとする」

 検察庁法第15条は検察官の任免について、第18条は二級検察官の任命及び叙級等について、第20条は任命不可対象者について、第22条は例の「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」の検察官の定年について、第25条は「第15条」と「第18条乃至第20条」と「第22条乃至第25条」の「前3条の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない」と検察官の身分保障を謳っている。

 これらのことが「国家公務員法附則第13条の規定」によって一般法である国家公務員法の「特例を定めたもの」としている。つまり別建てとしている。

 国家公務員法附則第13條「一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる。但し、その特例は、この法律第一条の精神に反するものであつてはならない」・・・・

 「その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる」云々と「別に規定することができる」「法律」とは検察官の規定に関しては検察庁法を指しているのであって、検察庁法が国家公務員法とは“別に規定”した「法律」である以上、国家公務員法の適用範囲外であることと同時に両法律が別建てであることの証明そのものとなっている。

 この日の衆議院予算委員会に人事院給与局長である松尾恵美子は政府参考人として出席していなかったが、2日後の2020年2月12日の衆議院予算委員会に出席、2月10日の衆議院予算委員会で森まさこが山尾志桜里に「検察官が一般職の国家公務員であることから、特例が定められている以外については国家公務員法が適用されると理解しております」と答弁したことについて松尾恵美子に尋ねている。

 松尾恵美子「お答え申し上げます。

 人事院といたしましては、国家公務員法に定年制を導入した際は、議員御指摘の昭和56年4月28日の答弁のとおり、検察官については、国家公務員法の勤務延長を含む定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと認識をしております」

 要するに昭和56年に当時人事院事務総局任用局長であった斧誠之助と同じ趣旨の答弁をしている。

 後藤祐一は「やはり山尾(志桜里)さんの言っていることの方が正しいことが明確になりました」と喜んでいるが、2013年作成の「任用実務のてびき」なるものを持ち出して、「検察官については、国公法の定める定年制度の適用が除外されていると書いてある」、「それでよろしいか」などとさらに松尾恵美子に質問すると、喜んだことがいっときの糠喜びとなる。

 松尾恵美子「お答え申し上げます。

 先ほど御答弁したとおり、制定当時に際してはそういう解釈でございまして、現在までも、特にそれについて議論はございませんでしたので、同じ解釈を引き継いでいるところでございますが、他方、検察官も一般職の国家公務員でございますので、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にございます。

 従いまして、国家公務員法と検察庁法の適用関係は、検察庁法に定められている特例の解釈にかかわることでございまして、法務省において適切に整理されるべきものというふうに考えております」

 松尾恵美子が、「検察官も一般職の国家公務員だから、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にございます」と言っていることは、検察官に関しては国家公務員法の定年制は適用されないとする規定は当時のまま同じ解釈を引き継いでいるが、「検察官も一般職の国家公務員だから、検察庁法に定められている」、「検事総長65歳、他の他の検察官は63歳」の定年退官等の「特例以外」の勤務延長とか、再任用とかの規定は「一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にある」と、連携プレーなのだろう、森まさこが山尾志桜里にしたのとそっくり同じ趣旨の答弁を返している。

 当然、「検察官も一般職の国家公務員だから」との根拠を基に国家公務員法の勤務延長とか、再任用とかの規定を検察庁法に適用した場合、「検事総長65歳、他の他の検察官は63歳」の定年退官等の特例規定は、安倍晋三が定年延長に持ち込みたい検事に限って言うと、有名無実化、無いに等しくすることができる。

 安倍晋三はこのことを狙っていた?

 安倍晋三の狙い通りにしないためには、「検察官も一般職の国家公務員だから、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にある」とする、事実を言葉の使いようで誤魔化す陰謀もどきの論理を、誰もが納得できる言葉で論破して、その非正当性を暴かなければならない。

 安倍晋三は2020年2月13日の衆院本会議で立憲民主党議員高井崇志の質問に答えて、同じ論理を披露している。

 安倍晋三「黒川東京高検検事長の任務延長等についてお尋ねがありました。先ず幹部公務員の人事については内閣府人事局による一元管理のもと、常に適材適所で行っており、内閣人事局制度を悪用し、恣意的人事を行ってきたとのご指摘は、全く当たりません(質問者の方を向いて、「全く当たりません」と言葉を強め、ゆっくりと言う)。

 検察官については昭和56年当時、国家公務員の定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと承知を致しております。他方、検察官の一般職も国家公務員であるため、今般、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家の公務員法が、国家公務員法が適用されるという関係にあり、検察官の勤務延長については国家公務員法の規定が適用されると解釈されるとしたところです。

 ご指摘の黒川高等検事長の勤務延長については検察庁の業務遂行上の必要性につき、検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定されたものであり、何ら問題はないものと考えております」

 だが、既に触れたように検察庁法第32条の2は「この法律第15条、第18条乃至第20条及び第22条乃至第25条の規定は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法(注・国家公務員法のこと)の特例を定めたものとする」との条文によって検察庁法と国家公務員法とは別建ての関係にあることを示している。別建てとはそれぞれの法律は独立した関係にあるということである。

 但し「検察官も一般職の国家公務員」という立場上、検察官の任用に関して「特例を要する場合」はあくまでも国家公務員法とは「別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定」しなければならないと、國家公務員法附則第13条は國家公務員法とは別建てであることを求めている。

 当然、黒川高等検事長の勤務延長は、検察庁の業務遂行上の必要性がどれ程に切迫していたとしても、検察庁法を改正するか、人事院規則を改正するかして、それが強行採決であったとしても一応の正当性を持たせて決めなければならないところを、安倍晋三が言っているように「検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定された」とすることは法律というものの建て方から言っても、隠れてするような姑息な、陰謀もどきの非合法な定年延長そのものであろう。

 ところが、2020年2月7日に定年を迎える黒川弘務東京高検検事長を定年となる2月7日から7日を遡る2020年1月31日に滑り込みセーフの形で閣議決定という非合法な方法で、その定年延長を今年8月7日までと決めた。

 安倍政権が国家公務員の定年を段階的に65歳へ引き上げる国家公務員法や検察庁法などの改正案を閣議決定したのは2020年3月13日。これらの改正案の委員会審議が与党が強行する形で開始されたのは2020年5月8日。前以っての閣議決定は法律が成立するまでの繋ぎだったのだろう。

 但し安倍自民党一強体制から言ったら、黒川弘務が定年となる63歳を迎える前に強行採決という手を用いさえすれば、法律を成立させる力を十分に持っていたにも関わらず、そうはせずに閣議決定というワンステップを間に置いたのは、、63歳を迎えたあとに法律に取り掛かかることにした方が問題が大きくせずに済み、騒がれることも少ないと見たからかもしれない。

 この見方がゲスの勘ぐりだとしても、閣議決定が陰謀もどきの非合法な定年延長であることに変わりはない。

 検察官は公益の代表者であって、安倍晋三や安倍内閣の利益代表者ではない。だが、安倍晋三が黒川弘務定年延長に何らかの私利を見ていなければ、非合法な閣議決定で定年延長を認めるような強引なことはしない。

 マスコミが報じているように検事総長に就任させる布石であり、森友・加計疑惑、「桜を見る会」の公職選挙法及び政治資金規正法違反疑惑等々で訴えられた場合でも、安倍晋三の私利を受けて就任することになった検事総長黒川弘務が自らの私利を以って裁判に手心を加える計算からの一連の非合法な陰謀もどきの手続きであることの可能性は否定できない。
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