安倍晋三が12月15日(2017年)、共同通信加盟社編集局長会議で「スピーチ」(首相官邸)した。相変わらず自己都合な発言が多い。ときには詭弁まで使っている。
スピーチは幾つかのテーマで成り立たせているが、今回は朝鮮問題と先の総選挙での自民党大勝に若者の投票が大きく貢献していたとする発言を取り上げ、他のテーマについては次の機会にしたいと思う。
安倍晋三「今週、今年の漢字に『北』が選ばれましたが、この解散総選挙でも大きな争点となったのは、緊迫する北朝鮮情勢への対応でありました。本年に入って、北朝鮮は挑発行動を 一気に活発化。2月から新型とみられる弾道ミサイルを立て続けに発射し、9月には6回目となる核実験を強行しました。 私は、トランプ大統領と何度となく電話会談を重ね、日米、日米韓の結束のもと毅然(きぜん)とした外交を進めてまいりました。ロシアのプーチン大統領とも機会あるたびに首脳会談を重ねるなど、国際社会と緊密に連携することで、国連安保理で、北朝鮮に対して石油の輸出制限を含むこれまでにない厳しい制裁措置を全会一致で採択することができました。 この決議の後、私は解散に踏み切るわけでありますが、この間北朝鮮は暫くミサイル発射を行いませんでした。国際社会の結束による強いメッセージを発し続けたことが、北朝鮮の政策を変更させる大きな力となります。 先月の習近平国家主席との日中首脳会談でも、全ての国連加盟国がこの決議を厳格に履行していくべきことで一致いたしました。通常、石油関連製品の輸入が3割もカットされたら国民経済は成り立ちません。決議から3か月がたち、制裁の効果は間違いなく生じているはずであります。今後も、挑発が更に続く可能性がありますが、重要なことはこうした脅かしに屈しないことであります。 北朝鮮の方から、政策を変更するので話し合いたいと言ってくるまで、国際社会が連携して圧力をかけ続ける。そうすることで、北朝鮮の核・ミサイルの問題、そして最重要課題である拉致問題を解決してまいります。 今月、我が国は安保理の議長国として、正に本日、北朝鮮問題に関する閣僚級会合を開きますが、今後とも国際社会の 取組を日本が主導していく考えであります。同時に、強固な日米同盟の下、高度の警戒態勢を維持し、いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしを守り抜く。これは政府の最も重い責任であります」 |
安倍晋三は石油の輸出制限含む「これまでにない厳しい」対北朝鮮国連安保理全会一致の日本も加わった制裁措置が暫くの間、北朝鮮がミサイル発射を控えた誘因となったかのように言っているが、「圧力、圧力」と騒いだ自身の圧力政策をも正当化しようとする我田引水の最たる自己都合の詭弁に過ぎない。
2017年9月3日、北朝鮮は6回目の核実験を強行。
2017年9月11日、国連安保理は北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で採択。
北朝鮮は、にも関わらず、4日後の9月15日、首都ピョンヤン(平壌)の郊外から北海道の襟裳岬付近の上空を通過して太平洋上に落下させる新型の中距離弾道ミサイル「火星12型」1発を発射。
多分、国連安保理追加制裁決議案に反発、屈しないところを見せたのだろう。
ところが、北朝鮮は1カ月が経っても、ミサイル発射の動きを見せなかった。
2017年10月22日、安倍晋三が「圧力、圧力」と騒ぎ、北朝鮮脅威を「国難」と位置づけて戦った総選挙の投開票があり、自民党は大勝した。
「火星12型」の発射成功9月15日から2カ月と約2週間の間を置いた2017年11月29日、北朝鮮は米本土到達可能な新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射に成功。
この3カ月近い間隔は国連安保理制裁決議の影響を図っていたと見ることができる。その影響を乗り越えることができると見たからこそ、制裁決議に反して、あるいは予想される世界各国の激しい批判の嵐を無視して「火星15」の発射を強行することができたはずだ。
そして中国もロシアも「火星15」の発射を批判しながら、両国共に北朝鮮を軍事力や制裁で追い詰めることに反対、対話重視の姿勢を見せた。
と言うことは、このような中ロの姿勢は北朝鮮から見た場合、世界的な対北制裁の何らかの抜け道の意味を持つことになる。
安倍晋三が言うように「これまでにない厳しい制裁措置」が北朝鮮のミサイル発射を3カ月の間思いとどまらせる効果の役目を果たしたわけでは決してない。
その効果であったなら、米本土到達可能の弾道ミサイル発射などと言った衝撃的な事態を出来させることはなかったろう。
要するに国連安保理制裁決議を受けた加盟各国の経済的圧力は、少なくとも現在のところは効果を見せていないことを示す。
だから、「火星15」を発射することができた。約3カ月間の北朝鮮の音沙汰なしを以って「国際社会の結束による強いメッセージを発し続けたことが、北朝鮮の政策を変更させる大きな力となります」との文言で、音沙汰なしに効果があったかのように言うのは自己の圧力政策を正当化するための薄汚い詭弁、薄汚い我田引水の類いに過ぎない。
安倍晋三「最近はマスコミ各社の世論調査でも、全体の結果だけではなくて年齢別の数字をよく出すようになりまして、大変興味深く見ております。共同通信が実施した12月の世論調査では、衆院予算委員会での与党の質問時間の割合が増えたことについて、妥当だとする人が47.4%で、妥当でないの42.8%を上回ったという結果が載っていました。この全体結果と併せて、共同通信は、ちゃんと年齢別の分析も公表してくれています。大体私が何を言おうとしているか予測をしていると思いますが、そこを見ますと、妥当だと答えたのは、60代以上では36%で全体より低い。 ところが、30代以下の若年層では、なんと62.3%だったそうであります。2倍まではいきませんが大きな違いがある。これは投票行動においてもそうなんですが、20代、30代と60代は大きく答えが違ってきているというのが、これは最近の現象ではないかと思います。念のため申し添えておきますが、質問時間は国会がお決めになることでございますから、この結果について私がどうこう言おうというわけでは全くありません。ここのところは間違ってニュースにしないでいただきたいと、こう思うところで ございますが。 私が申し上げたいことは、若者たちは上の世代に影響されることなく、自分たちの意見をしっかりと持っているということであります。SNSやユーチューブなど、インター ネットがこれだけ発達した時代にあって、若い世代は自分で多様な情報を集め、自分で判断するということなんです。 だからこそ今、年代別の意識の違いが注目を集めているのではない かと思います。先般の衆院選の出口調査でも、NHKが年代別の投票先を公表していました。自民党に投票した人が最も少なかったのは、60代。私も60代でありますが、60代であります。32%です。それでも比較第一党ではありますが。 私と同世代が一番低いというのは、随分私も同年代の方に嫌われたものだということで悲しい思いはするわけでありますが、 もしかしたら、ちょうど皆さんの新聞の愛読者層ではないかとも思いますので、もう少しお手柔らかにお願いしたいと思いますが、他方、最も人気があったのは、20代でありまして、 20代では50%の人たちが我が党自由民主党に投票してくれたわけであります。自民党の支持率が高いから持ち上げるというわけではありませんが、若い人たちは自分の意見をしっかりと持っている。私はここに、日本を変革するチャンスがあると思っています。 |
与野党の質問時間が従来の割合から変更されて与党質問時間が増えたことの妥当性に対する共同通信の世論調査で、「妥当だと答えたのは、60代以上では36%で全体より低い」、「30代以下の若年層では、なんと62.3%だった」ということを以って「若者たちは上の世代に影響されることなく、自分たちの意見をしっかりと持っているということであります」と結論付けことができる合理性はどこにあるのだろうか。
単なる平等の観念からの若者の妥当性なのか、野党がより多く担っている国家権力監視の役目に然程重きを置いていないからなのか、あるいは与党に対しても国会質疑の場での出番をより多くしてやるべきだと考えてのことなのか、数字だけからでは見えてこない。
因みに私自身のことを言うと、野党議員が言う程には野党の質問時間の長いことが国家権力監視に直結するとは考えていない。直結させるためには質問時間よりも質問の質・言葉の質がより有効な権力監視の道具・より有効な追及の手段となるはずだが、質問時間が長いだけのことで、気づかないままに堂々巡りの質疑に陥る時間のムダを費やすことが多い。
安倍晋三が数字だけで若者たちが「自分たちの意見をしっかりと持っている」と若者の独自性を保証するのは余りにも安易、余りにも単細胞としか言い様がない。
また、「SNSやユーチューブなど、インター ネットがこれだけ発達した時代にあって、若い世代は自分で多様な情報を集め、自分で判断するということなんです」と若者の判断能力の確かさを請け合っているが、裏付けのない付和雷同型の、あるいは他人の意見をそのまま引き写しただけの情報が氾濫しているのもインターネットの世界でもあって、多様に見えて、類似性を纏っている情報を少なからず見る。
いわば個別に見ないことには独自の判断に基づいた意見かどうかは区別できないということであって、若者の多くが利用し、多くの意見を述べていることを以ってして若者の独自性を言うのはやはり単細胞でなければできない芸当であろう。
さらに安倍晋三は10月の衆院選のNHKの出口調査を取り上げて、「自民党に投票した人が最も少なかったのは」「皆さんの新聞の愛読者層」と予想される「60代」で、対して「20代では50%」という高率である一事を以ってして「若い人たちは自分の意見をしっかりと持っている」ことの更なる根拠とし、高く買っている発言をしているが、逆に「60代」はよく新聞を読んで、その情報をよく吟味し、その結果自民党投票者が最少という数字が出て、対して若者はネットの情報に頼った結果、自民党投票者が50%という数字となって現れたと見ることもできる。
いわば「60代」は「自分の意見をしっかりと持っている」ゆえに自民党投票者は少なく、逆に「若い人たち」はネット情報に頼って自分の意見をしっかり持っていないゆえに自民党投票者が50%もいたとする解釈も可能だということである。
合理的根拠を持たない評価に対する解釈は幾つもに変更可能となる。
若者が「50%」も自民党に投票したからと言って、「若い人たちは自分の意見をしっかりと持っている」と肯定的に評価し、「60代」が「自民党に投票した人が最も少なかった」からと言って、暗に若者と正反対に自分の意見をしっかり持っていないかのように示唆する。
薄汚いばかりの詭弁と我田引水に満ちた情報操作を行っている。