安倍晋三がさもしげにおねだりする様子を隠したアベノミクス賃上げ要請の成果の正体

2015-01-18 07:04:09 | 政治

安倍晋三「成長志向の法人税改革についてですが、27年度には2.5%、平成28年度には3.3%の決定をしているところでございますが、今後さらに上乗せを目指していきます。

 如何に上乗せをしていくか、これはみなさんにかかっている。27年度には2.5%引き下げをする。この引き下げがしっかりと経済に、成長に、その成果が出てくることが最も大切でございます。

 与党、国民の皆様の法人税引き下げの理解を高めるためにも2.5%法人税減税(を約束)したことによって企業がしっかりと賃上げにも応じてくれたようだし、設備投資も行って、競争力も強くなったし、雇用状況も一層改善しています。となれば、『もっとやってよ』と、ま、こういうことになるわけであります。

 そのためにも経営者の皆様に、お集まりの皆様に大いに多くの決断を、勇気を持って、『やるのは今でしょ』ということです。えー、是非取り組んで頂きたいと思うところでございます」(政府インターネットテレビより)

 冗談めかして笑いながら話を進めたのは、一国の首相が自らの優れた政治能力で経済の好循環を生み出す自力本願ではなく、法人税減税をエサに経済団体にお願いをする他力本願の賃上げの実現によって経済の好循環を生み出そうと意思している手前、真剣に賃金を上げてくれとお願いしたなら、ねだっているようにも見えて、自身の力の無さを曝け出すことにもなりかねず、さもしげに把えられかねないからだろう。

 つまり冗談めかした言葉と笑い顔の裏にさもしげになりかねないな様子を隠していたことになる。

 他力本願である以上、賃上げ要請時に於けるこのような態度は初めてということはないだろうから、前々からの演出であるはずだ。 

 資産家の親父のカネで会社経営を始めた息子がうまくいかず、再び親父に最大限のお世辞を使ってカネをねだり、そのカネで会社経営を軌道に乗せようとするのに似て、いわば禁じ手に頼っているようなものである。

 安倍晋三の賃上げのおねだりは一昨年から始まり、経済界は昨年の春闘でそれに応えた。そして昨年の夏と冬のボーナスにも賃上げ要請を反映させた。

 ここに経済界に対する賃上げ要請の一つの成果を示す記事がある。《冬のボーナス、2年連続増 主要企業、90年以来の伸び》47NEWS/2015/01/16 17:20 【共同通信】)  

 厚労省が1月16日に発表した「毎月勤労統計調査(確報、従業員5人以上)」集計結果で、主要民間企業昨年末ボーナス平均妥結額が前年比5・16%増の80万638円(平均年齢38・9歳)で、2年連続の増加だという。

 この数値は6・2%増だった1990年以来の高い伸び率だという。

 但しこの昨年末ボーナス平均妥結額の80万638円を236社の労組平均要求額3万1906円増の84万4371円に対する回答と見ると、4万円も低い妥結額ということになって、企業側が決して気前よく出した金額ではないことが分かる。

 厚労省「景気回復の影響でプラスになった企業が引っ張った結果だ。(但し)消費税増税や円安の影響で、産業によってばらつきも出ている」

 発言の前段が中心的な趣旨となるから、産業によるばらつきは部分的な範囲内に収まっていて、全体に悪影響を及ぼす全体的現象ではないことになる。逆であるなら、前段の成果は出てこない。

 つまり冬のボーナス2年連続増は一部にばらつきはあるものの、全体的な傾向として景気回復の成果が現れていることになる。

 だが、この、集計対象は資本金10億円以上で従業員千人以上の労働組合がある企業のうちの339社に過ぎない。

 一見すると、安倍晋三の賃上げ要請が功を奏して景気回復が全体的傾向となりつつあり、経済の好循環が軌道に乗り始めるようにも見えるが、果して実際にそういった姿を取り始めているのだろうか。

 問題は資本金10億円以上の企業はどのくらいの数があり、全企業数の何%に当たるかである。

 そこでネット上を調べてみた。

 《平成23年度分「会社標本調査」 調査結果について》国税庁企画課/平成25年3月)に「資本金階級別法人数」が記載されている。   

 平成23年(2011年)資本金階級別法人数

 平成23年度分法人数257万8,593社

 資本金1,000万円以下――2,182,799社(全体の84.7%)

 1,000万円超1億円以下――370,158社(全体の14.4%)

 1億円超10億円以下――19,244社(全体の0.75%)

 10億円超――6,392社(全体の0.5%)

 資本金1,000万円以下の企業と資本金1,000万円超1億円以下の企業が全体の99.1%を占めていて、10億円超の企業は全体の 0.5%しか存在しない。

 尤も0.5%の存在であったとしても、被雇用者が全体の80%も90%も占めているなら問題はない。占めていないことは誰もが知っていることであろう。

 《2014年版中小企業白書について》中小企業庁/2014年7月)に従業員数が載っている。
 
 大企業11万社           従業員1,397万人
 中小企業3,853万社     従業員数3,853万人
 (内小規模企業3,343万社  従業員数1,192万人)

 全従業員数は5,250万人。中小企業の従業員は全従業員数の73%も占める。大企業従業員は約27%。

 中小企業は製造業の3億円以下を最も高い資本金比率としている。いわば大企業であっても、10億円以下から3億円以上の間の企業も存在するから、資本金10億円以上の昨年末ボーナス2年連続増の状況から落ちこぼれている従業員も相当数存在することになる。

 上記統計には次のような記述もある。〈特に、人口規模が1万人未満の市区町村においては、中小企業が企業数の99.9%、従業者数の約9割、製造業付加価値額の約7割を占め、その存在感が増すことが見て取れる。〉

 この存在感が果して報酬の面での存在感となっているということができるのだろうか。もしイコールであったなら、都市と地方の格差は幻想となる。大都市一極集中も架空の物語となる。

 厚労省は冬のボーナス2年連続増を「景気回復の影響でプラスになった企業が引っ張った結果だ」と言っているが、その実態は上にだけ十分に厚く、下に限りなく薄い配分だということである。

 このような格差の構図を取っているゆえに、同じく厚生労働省1月16日発表の「11月毎月勤労統計調査」(確報、従業員5人以上)が従業員1人当たり平均現金給与総額の前年同月比0.1%増・9カ月連続増加の27万7152円と伝えていながら、同じく昨年11月の実質賃金は17カ月連続マイナスの前年同月比2.7%減という逆の結果を生み出しているである。

 いわば従業員1人当たり平均現金給与総額の前年同月比0.1%増はその殆どを大企業の従業員が担っているが、大企業以下の中小企業従業員の絶対数が多いために平均値が下がって0.1%という僅かな数字となったということであるはずだ。

 当然、実質賃金に関しても中小企業従業員のその目減りはマイナス2.7%という数字以上に大きなものとなっていることになる。

 安倍晋三が一昨年からお願いしている他力本願の賃上げ要請の成果は、それが自分の政策で実体経済を底上げした自力本願からの成果でないゆえに全企業のうち、大企業というほんの一部の企業しか応えることができなかった、至って偏ったものでしかなかった。

 これが一歩間違えるとさもしげなおねだりになりかねなかった安倍晋三のアベノミクス賃上げ要請の成果の正体である。

 実体経済が回復していない以上、今年の春闘での賃上げも、上にだけ十分に厚く、下に限りなく薄い配分という格差の構図を引き継がない保証はない。


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