安倍晋三の撤回国会答弁は厚労省の間違いデータ提出によって裁量労働制の意図的な有利性の誘導の証明となる

2018-02-26 12:05:42 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 安倍晋三が今国会で成立を図っている「働き方改革関連法案」は企画・立案・調査及び分析を業務としている社員に対する「企画業務型裁量労働制見直し」を柱の一つとしている。

 裁量労働制とはネットでの紹介を纏めてみると、使用者と被雇用者が1日の労働時間と賃金を契約、実際に働いた時間とは関係なく契約した一定時間を働いたものと見なすことを「裁量労働見なし労働時間制」(略して「裁量労働制」)と言い、契約通りの賃金を支払うシムテムと言うことになる。

 例えば8時間を労働の見なし時間として契約した場合、その日10時間働いたとしても、2時間の残業代は支給されないが、6時間や7時間で仕事をこなした場合は8時間で契約したとおりの賃金が支払われることになり、余った時間は自由に使うことができる。

 このような点に基づいて安倍首相は国会答弁で「働き方改革関連法案」について「多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を追求する」、あるいは「労働の質を高めていく」として裁量労働制の適用範囲の拡大を策し、その拡大を通して裁量労働制の一般化を図っている。

 例えば2018年1月29日衆院予算委員会。

 安倍晋三「多様で柔軟な働き方を可能とする働き方改革を進め、そして子育てや介護と仕事が両立しやすい環境をつくり上げてまいります」

 裁量労働制ともう一つの柱である残業時間規制改革の導入で可能になるとしている「多様で柔軟な働き方」が「子育てや介護と仕事が両立しやすい環境」に繋がると謳っている。

 但し自身の1日の労働時間を契約で決めて、その時間内に自身の労働量を収めるという徹底した成果主義は常に時間内の成果を背負うことなって、そのプレッシャー(精神的圧迫)は決して少なくないはずである。

 残業時間規制改革案については2017年3月17日付「毎日新聞」( 20時27分)が具体的な内容について次のように解説している。
  
 (1)残業時間は「月45時間、年間360時間以下」を原則とする(休日労働を含まない上限設定)
 (2)繁忙期であっても「月100時間未満」「2~6カ月の月平均がいずれも80時間以下」とする(休日労働を含んだ上限設定)
 (3)月45時間を超えるのは年6回まで(休日労働を含まない上限設定)
 (4)繁忙期を含めても「年720時間」を上回らない(休日労働を含まない上限設定)

 (2)以外の(1)と(3)と(4)が休日労働は別計算となっている。要するに各規制を守りながら、休日労働という形を取って規制外の残業を課すことが可能となる。

 当然、(2)以外は有名無実の規制改革案と言わざるを得ない。

 休日労働を含んだ上限設定である(2)の〈繁忙期であっても「月100時間未満」「2~6カ月の月平均がいずれも80時間以下」〉を見てみる。

 後段の「2~6カ月の月平均がいずれも80時間以下」の年5カ月間「80時間以下」は月20日制で1日4時間の残業が可能という計算になるが、人間の身体で消化できる時間を超えているから、消化できる範囲として平日2時間の残業で月40時間。残りの40時間は月8日の休日の内、5日間は休日出勤を可能とする計算となる。

 いわば1年の内5カ月間は平日毎日2時間残業して8日の休日の5日間は休日出勤という労働時間制を取って残業時間月平均80時間という計算ができる。

 これが繁忙期に例外的に月100時間の残業が許されるとなると、80時間を超える20時間は平日毎日3時間の残業か、毎日の2時間の残業はぞのままに月8日のうちの休日出勤5日間の残り3日間の休日から更に2日間=16時間削って残業時間をプラスして7日間の休日出勤という月を何カ月か設けなければ、100時間という残業時間はつくることはできない。

 だから、休日労働を含んだ上限設定としたのだろうが、いくらそうしたとしても、(2)の条件では年のうちの何カ月間は人間らしさを基本とした生活を送ることが果たしてできるだろうか。果たして安倍晋三が保証するように「労働の質」を高めることができるだろうか。 

 (2)だけではない。休日労働を含まない(4)の〈繁忙期を含めても「年720時間」を上回らない〉にしても年間労働日数の240日で割ると、1日3時間の残業が1年間続くことになるだけではなく、そこに休日労働が例え1日でも割って入るとなると、人間らしさは削がれて、知らぬ間に働く動物にされかねない。

 こういった点を捉えてなのだろう、主だった野党は裁量労働制の適用範囲の安易な拡大や残業時間規制改革は長時間労働化の危険性、ひいては過労死の増加の危険性の観点から働き方改革に反対している。

 この過程で安倍晋三が間違ったデーターに基づいて裁量労働制の正当性を訴える国会答弁し、その答弁を撤回し謝罪するという重大事態が発生した。

 野党はこの撤回を厚労省が「働き方改革法案」の成立を有利に持っていくためにデータを捏造したのではないのか、首相が指示して出させたデーターではないのかと問題視した。


 疑惑が事実だとすると、安倍晋三は厚労省にデータを捏造させて、捏造されたデータに基づき、国会答弁を用いて裁量労働制の意図的な有利性の誘導を謀った疑いが出てくる。

 どういった経緯で厚労省が不適切なデータを安倍晋三の国会答弁用に出したのか、マスコミ記事から時系列的に纏めてみる。文飾は当方。

 ①2013年10月、厚労省は自身が作成した「労働時間等総合実態調査」を労政審に提出。

 ②2013年11月中旬~12月中旬の期間で厚労省はその一方で独立行政法人労働政策研究・研修機構に対して「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査 労働者調査」を要請。

 ③2014年6月30日、労働政策研究・研修機構は調査結果をマスコミに対して報道発表している。

 いわば2014年6月30日以前に厚労省に調査結果は提出された。

 ④2017年9月15日、厚生労働相の諮問機関である労政審(労働政策審議会)に対して諮問された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」を厚労相の加藤勝信に答申。

 ③2018年1月29日衆院予算委員会。
 
 立憲民主長妻昭「是非、総理、(労働法制を「働き方改革」によって)岩盤規制、ドリルで穴をあけるというこの考え方は是非改めていただきたいと思うんですが、如何ですか」

 安倍晋三「その岩盤規制に穴をあけるには、やはり内閣総理大臣が先頭に立たなければ穴は開かないわけでありますから、その考え方を変えるつもりはありません。

 それと、厚生労働省の調査によれば裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあるということは御紹介させて頂きたいと思います

 裁量労働制適用労働者の労働時間が一般労働者よりも短いデータがあり、裁量労働制の適用業種の範囲拡大が必ずしも長時間労働に繋がるわけではないと「裁量労働制の見直し」の正当性を主張した。

 ④2018年2月14日衆院予算委。

 安倍晋三「引き続き精査が必要と厚労省から報告があったためですね、精査が必要なデータに基づいて行った答弁については撤回をして、そしてお詫びをさせて頂いたところでございます」

 ⑤2018年2月19日、「労働時間等総合実態調査」の調査に当たった厚生労働省労働基準監督官が衆議院予算委員会の理事会に出席、野党に対して説明。

 厚労省が事業所の中から「平均的な人」を1人選んで労働時間等を聞き取って行ったものだと説明してきた1日当りの労働時間は――

 一般の労働者が9時間37分。
 企業の中枢部門で経営に関わる企画などにあたる「企画業務型」の裁量労働制従事者9時間間16分としていた。

 安倍晋三はこの調査に基づいて裁量労働制の見直しが必ずしも長時間労働に繋がらないとする趣旨の国会答弁を行ったことになる。

 但し実際の調査方法は違っていた。

 一般の労働者に関しては「平均的な人」1人について1カ月間で時間外労働の時間が最も長い日の労働時間を尋ね、裁量労働制適用労働者に関してはで1日の労働時間を聞く方法を採用したと言う。
 
 安倍晋三はこのような聞き取り方の異なる調査に基づいた労働時間の間違った比較を用いて裁量労働制の適用業種の範囲拡大の正当化を謀る答弁を試みたことになる。

 この比較を安倍晋三が気づいていたかどうかだが、このような調査方法を単に不適切な調査と切って捨てることはできない。質問内容を変えている以上、意図的に誘導した裁量労働制の有利性と見なければならない。

 この裁量労働制の意図的な有利性の誘導は労政審(労働政策審議会)に対する諮問にも見て取ることができる。厚労省は労働政策研究・研修機構にわざわざ調査を依頼した「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査 労働者調査」を労政審に諮問の叩き台として提出はせず、自らが調査した「労働時間等総合実態調査」のみを叩き台とさせるべき提出していたことである。

 労働政策研究・研修機構の「報告」には、前にブログに一度使ったが、裁量労働制と通常労働制に於ける労働時間の比較に関して、〈1ヵ月の実労働時間をみると、「専門業務型」は、「企画業務型」「通常の労働時間制」に比べて「150 時間以上200 時間未満」の割合が低く、「200 時間以上250 時間未満」「250 時間以上」といった長い労働時間の割合が高い。「企画業務型」も「通常の労働時間制」と比較すれば労働時間が200 時間以上の割合が高い(図表2)。〉となっていて、厚労省の「労働時間等総合実態調査」に基づいた安倍晋三の2018年1月29日衆院予算委員会での国会答弁「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」とした記述は見当たらない。

 もし両調査共に諮問の参考資料として提出していたなら、どちらが正しいか比較されて、厚労省が調査で用いた質問の間違いが明らかになったはずである。

 だが、働き方改革を有利とすることができる間違った資料だけを渡した。それだけではなく、労働政策研究・研修機構に対して自らが依頼した調査を自らムダにした。

 なぜそうしなければならなかったのか、厚労省の必要性を考えた場合、犯罪事件で言う動機を考えた場合、裁量労働制の意図的な有利性の誘導以外に思い当たることができるだろうか。

 2018年2月19日の衆議院予算委員会の理事会に出席して野党に対して行った厚労省労働基準監督官の説明では誤った記入や入力ミスと見られる例が少なくとも87の事業所で117件確認されたとしている。

 となると、一般労働者と比較した裁量労働制適用労働者の労働時間は「短いというデータもある」とした安倍晋三の国会答弁の基となったデータは多くの過ちの中の一つであって、国会答弁は安倍晋三が厚労省、そして厚労相の加藤勝信とグルになって演出した裁量労働制の意図的な有利性の誘導ではないとすることができる。

 逆に安倍晋三が答弁に用いた過ったデータを多くの過ちの中にその一つとして紛れ込ませるために用意した117件ものデータミス、あるいは調査ミスではない、今後精査した場合、もっと出てくる可能性のある過ちの一片に過ぎないとの証明となる。

  だが、2018年2月24日付「ロイター」が伝えている調査に当たった労働基準監督官(男)が共同通信の取材に対して行った「結果的に調査が杜撰になってしまった」とする発言の内容は安倍晋三の国会答弁にしても、現時点での117件ものデータミス、あるいは調査ミスにしても、裁量労働制の意図的な有利性の誘導を目的としたミスのデッチ上げと解釈することが可能で、安倍晋三が答弁に用いた過ったデータを多くの過ちの中にその一つとして紛れ込ませることは到底できない。

 発言の内容を伝えている画像を載せておく。

 これらの理由で調査時間を十分に取れなかったからと言って、労政審(労働政策審議会)の諮問に影響を与えて一つの法律を正当づけるキッカケにもなっているのだから、杜撰な調査をしていい理由とは決してならない。

 「企業が必要な資料を準備しておらず、正確な労働時間分布を調べられなかった」と言っているが、厚労省が「労働時間等総合実態調査」を労政審に提出したのは2013年10月。調査はそれ以前に行ったはずで、労政審が諮問に対する答申を行ったのは約4年後の2017年9月15日。

 企業に対して必要な資料を準備させる時間的余裕は十分にあったはずである。にも関わらず、なかったかのような説明となっている。

 厚労省の内規で「1社当たりの調査時間を約1時間半」のうち、「移動や報告書作成の時間も含まれるために調査は数十分」だった、「1日5社も回らけなければならず、まともに調べられなかった」などとグダグダと言っているが、一つの法律の成立に影響を与える調査である以上、正確を期すだけの人数を投入すれば、グダグダ言っていることの解決はつくはずであるし、立場上、そうしなければならなかったはずだが、そうはしなかった。

 移動の時間が含まれると言っているが、企業に準備させた資料をメールで遣り取りしても調査はできるはずである。

 労働基準監督官はデーターミスを止むを得なかった事態だったと理由にならない理由で正当づけることで、安倍晋三が答弁に使ったデータをも全てのデータミスの中のその一つとして紛れ込ませる意図を働かせたものの、逆に語るに落ちる形で調査のミスも安倍晋三の国会答弁も裁量労働制の意図的な有利性の誘導を目的とした調査ミス――捏造であって、その線に添った安倍晋三の国会答弁だったと自供してしまったも同然である。


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