消費税15%・軽減税率0%→低所得者の可処分所得を増やし、軽減税率高所得者有利性をクリアする案

2016-01-13 09:39:45 | 政治


 2017年4月1日に消費税を8%から10%へ増税する際、酒類と外食を除く食品全般その他に税率を8%に据え置く2%分の軽減税率を掛けることを自公与党が決めたことに関して1月4日から開催された190回国会で野党が軽減税率は高所得者程有利になると反対している。

 民主党幹事長枝野幸男も1月8日の衆院予算委員会でこの問題を取り上げていた。

 枝野幸男「財務省に試算させたら、年収200万未満の世帯がこれ(軽減税率)によって受ける恩恵は(年間)8000円余りです。ところが年収1500万円を超える世帯では、恩恵は(年間)1万9千円になります。

 つまり高額所得者程恩恵をたくさん受ける。当たり前ですね、沢山買い物をしますから。しかもですね、1兆円の財源のうちですね、年収300万未満の世帯の使われる1兆円の中の財源は11%程度です。

 年収500万未満に迄広げても、全体の43%。つまり(財源の)5千億円は年収500万円以上の方なんです。これがなんで低所得者対策なのか」

 安倍晋三は勿論答弁を用意している。「NHK NEWS WEB」記事を利用する。 

 安倍晋三「制度上、高所得者のみを除外するのは困難だが、所得の低い方ほど収入に占める消費税負担の割合が高いという消費税の逆進性を緩和することができ、日々の生活のなかで、買い物のつど、痛税感の緩和を実感していただける。

 2人以上世帯の1人当たりの負担軽減額は年収200万円未満の世帯は年間3600円程度。1500万円以上の世帯は、1人当たり5100円程度と見込まれる。消費税の負担軽減額を見れば高所得者が大きいが、消費税負担の絶対額ではなくて、収入に占める消費税負担の割合で計るべきだ」

 枝野が挙げた軽減税率を設けた場合の年収毎の税負担額を取り出してみる。

 年収200万未満世帯――年間8000円の負担軽減
 年収1500万円超世帯――年間1万9千円の負担軽減 

 安倍晋三が挙げた年収毎の税負担額。
 
 年収200万円未満2人以上世帯世帯――1人当たり年間3600円程度の負担軽減
 年収1500万円超世帯2人以上世帯世帯――1人当たり年間5100円程度の負担軽減

 安倍晋三の情報提示は間違っているわけではないが、1人当りで計算して、少ない金額に見せた。夫婦共に高額所得者で、それぞれの収入でそれぞれの生活費を賄っているといった世帯なら、それぞれの支出額は1人当たりの金銭感覚で片付けることができるが、特にギリギリの生活を余儀なくされている低所得者の場合は常に問題となるのは全体の支出額であって、1人当たりの金銭感覚で片付けることができないにも関わらず国家の税負担を少なく感じさせるための策を用いたということなのだろう。

 なかなか巧妙である。

 野党、特に民主党は今後も軽減税率が低所得者よりも高額所得者により多くの恩恵、利益を与えるバラマキだと批判し、安倍晋三は同じ趣旨の答弁を繰返してバラマキを否定することになるはずだ。

 民主党は消費税の低所得者対策として基礎的生活費の消費税率部分を所得税額から控除し、控除しきれない部分については現金を給付する「給付付き税額控除」を掲げている。

 例えば、収入が給与のみの単身世帯の場合、収入が年間100万円を超えると住民税、103万円を超えると所得税がかかるが、所得税を支払っていない103万円以下の単身世帯の場合は支払った消費税分から2%引いた分、現金で補填されることになる。

 年間所得103万円以上で支払った消費税分は所得税額から控除するが、支払った消費税額>所得税額の場合は、その差額が現金給付される。

 但し支払った消費税額をどう把握するかである。年収分布帯に応じた統計上の基礎的生活費から算出するのか、レシートを保存させておいて、そこから消費税額を算出するかで正確さに違いが出てくる。

 少なくとも低所得者にとっての軽減税率はその対象品目に関しては支払った消費税額と軽減された金額が正確に計算されることになって、それなりに安心感が与えられることになる。

 だが、たったの2%分の軽減である。年収200万未満世帯の可処分所得増加は年間8000円程度に過ぎない。1カ月に直して666円に過ぎない。低額の高齢年金生活者にとっては低所得になる程にいくらギリギリの生活を心掛けたとしても家計に占める食品購入額の割合が大きくなるのだから、残る8%の消費税分の支払いはやはり重くのしかかることになるだろう。

 尤も枝野幸男が言っているように軽減税率導入によって2%免除に必要な1兆円の財源のうち半分の5千億円が年収500万円以上の世帯に消費税の負担を軽くする形で国が負担するというのも見過ごすことのできない大きな問題だろう。

 そのことに目をつぶって、低所得者の負担軽減のみを考えるべきか、難しい選択となる。

 この二つの問題をクリアして、なおかつ軽減税率を0%に持っていき、低所得者の可処分所得を大幅に増やす方法がある。

 2015年11月12日付のNHK NEWS WEB記事に消費税率を10%に引き上げると、税収は5%のときと比べて14兆円増えると見込まれるとの記述がある。つまり5%増で14兆円増えるということは1%で2.8兆円の税収があることになる。

 しかしネット上には1%=2兆円の税収という記述が大勢を占めている。少なく見積もって2兆円で計算すると、2.8兆円で計算して多額の税収と比較するよりも、より可能性が確実になるから、前者で計算することにする。

 自公が掲げた対象品目の全ての軽減税率を0%にしてみる。

 10%を8%に据え置いた場合の軽減税率は税収1兆円の負担ということは2%で1兆円の税収減といいうことになる。いわば1%で5千億円の税収減。

 この消費税10%を15%に増税して、軽減税率を年収別なく0%にしたらどうだろう。

 15兆円✕2兆円(1%)=30兆円の税収。

 軽減税率0%の場合は15%✕5千億円(1%)=7.5兆円

 30兆円-7.5兆円=22.5兆円

 10%で軽減税率導入なしの場合の税収20兆円よりも2.5兆円の増収が見込むことができる。

 低所得者程家計に占める食品購入額の割合が大きくなる分、中・低所得層にとって軽減税率0%はかなりの可処分所得の増加となって返ってくる。

 勿論、軽減税率対象品目のみに限ったとしても中低所得者よりも購入額が多いはずの中以上の高額所得者の税負担をより軽くし、可処分所得の増加という点で中低所得者よりもより有利となるが、対象品目外の高額商品の購入額の割合も大きいはずだから、軽減税率0%にすることに税負担の7.5兆円の半分以上が高額所得者の利益にまわったとしても、それらの品目に15%の消費税がかかることになり、10%時よりも負担を大きくすることである程度のプラス・マイナスが可能となるはずだ。

 また、低所得者程家計に占める食品購入額の割合が大きいということは軽減税率の対象品目以外の購入の機会は少ないことになって、例え対象品目以外15%でも、それ程の影響は受けないことになる。

 2.5兆円の増収は他の品目を軽減税率対象品目に加えるのもよし、社会保障費にまわすのもよし。

 果たして低所得者の可処分所得を大幅に増やして、軽減税率に於ける高所得者の有利性をクリアするこの案はどうだろうか。


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