山口敬之(のりゆき-慶應義塾大学経済学部卒53歳)のレイプ事件の最近までの経緯についてよく纏まっているから、「Wikipedia」の記事を借りて紹介する。昔風に言うと、"毒牙(邪悪な企み)にかかった"相手の女性は実名で紹介されていて、その名前は既に広く知られているが、彼女の勇気に敬意を評して、「女性」という一般名詞に置き換えた。ネット上には31歳と出ている。
〈2015年4月3日、女性が自身の就職やアメリカの就労ビザについての相談のため、東京都内で当時TBSの政治部記者でワシントン支局長であった山口敬之と会食。同日深夜から4日早朝にかけて飲酒後に記憶をなくし、ホテルで乱暴されたとして準強姦容疑で警視庁に被害届を提出。
東京地裁が2016年7月に嫌疑不十分で不起訴としたため、伊藤は2017年5月、検察審査会に審査を申し立てた。東京第6検察審査会は2017年9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして「不起訴相当」と議決した。
民事訴訟
2017年9月28日、「望まない性行為で精神的苦痛を受けた」として、女性が山口を相手に1100万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こした。その直後の10月18日、女性が自らの訴えを綴った手記「Black Box」を出版し、24日には日本外国特派員協会で会見を行った。一方で山口は同月26日発売の月刊『Hanada』に、「私を訴えた女性へ」と題する手記を掲載し、女性の主張を全面的に否定した。
2019年2月、山口が「女性の記者会見での発言などで社会的信用を奪われた」として女性を相手に慰謝料1億3000万円と謝罪広告の掲載を求めて反訴した。裁判は山口、女性の双方の訴えを同時に審理し、12月18日、女性側の請求を認め、330万円を支払うよう山口側に命じた。山口の反訴は棄却。〉――
山口敬之は民事で敗訴した翌日の2019年12月19日に都内の日本外国特派員協会で自らの正当性を訴える、いわば不同意の上の性行為ではなく、合意の上の性行為であるとする会見(Yahoo!ニュース/2019/12/19(木) 17:06)を開いた。
最初に山口敬之の代理人弁護士である北口雅章が発言、民事での女性の証言と女性の著作『Black Box』の内容との食い違い等を引き合いに出して、さも女性がウソつきであるかのような物言いをしたあと、英語で話す司会に対して通訳が簡単に日本語訳をし、記者が同じ英語で話して、通訳が日本語訳する遣り取りが少し続いてから、山口敬之が英語で話した。記事は英会話のところはすべて割愛している。
山口敬之と記者との英語での質疑応答が5問ほど続いてから、通訳が次のように訳す。
通訳「簡単に言いますと、逮捕状が出たのを聞いていません。逮捕状が出てるのは知りませんでした。なので、警察がいつどこで私を取り調べてるかっていうのを私は知りませんでした。本当は裏で総理大臣などの力を借りてるんじゃないですかっていうことで、いいえ、私、一切そんなことやってません」
通訳の日本語訳を補足する形で山口敬之が日本語で発言。
山口敬之「ちょっと訳、日本の方に言わせていただくと、私は6月8日に成田に着いて、そこで逮捕状が執行されなかったという報道が出ていることについての質問だと思うんですが、私のところに警視庁の方が任意の聴取にいらっしゃったのは6月中旬で、それまで私は捜査対象であるってことを一切知らないんですね。当然、警察の方が私を逮捕しようと思ってるのであれば、私にそれ、事前に伝えるはずがないですよね。ですから、出てるかどうか知らない逮捕状のことを、私は誰にも頼むことができないっていうことを申し上げた。ちょっと訳を補足させていただきました」
山口敬之は英語で「逮捕状が出たのを聞いていません。逮捕状が出てるのは知りませんでした」といった趣旨の発言をしたことになる。但しその通訳内容に対して「2015年6月中旬に警視庁の任意聴取を受けるまで捜査対象であるってことを一切知らなかった」こと、知らなかった理由は「警察の方が私を逮捕しようと思ってるのであれば、私にそれ、事前に伝えるはずがないから」であり、「出てるかどうか知らない逮捕状のことを、私は誰にも頼むことができない」との物言いで、検察の取り調べて不起訴処分となったのは「裏で総理大臣などの力を借りてるんじゃないですか」との記者の問いに対してなのか、安倍晋三への依頼の疑いに関わる身の潔白を強く主張した。
このような疑いが出てくるのは逮捕直前の逮捕状執行停止の経緯と山口敬之が安倍晋三に近いジャーナリストとして2016年6月9日に『総理』なる題名の著作を出版していることなどによるらしい。
山口敬之が安倍晋三に対して逮捕逃れの依頼、あるいは不起訴処分扱いへの依頼をしていなければ、逮捕状が出ているのを知らなくて当然である。レイプ事件から警視庁が山口敬之を事件に関わる任意聴取をするまでをネットから拾った時系列で見てみる。
2015年4月3日 女性が山口敬之が食事と飲酒を共にしたあと高輪にあるホテルに連れ込まれる。
2015年4月9日 女性が原宿署へ相談。
2015年4月15日 女性、高輪署の捜査員とホテルの監視カメラ映像を確認。
2015年4月18日 山口敬之が女性に「合意の上だった」との文面でメールを送信。
2015年4月30日 高輪署に被害届を提出。準強姦容疑(当時)で女性の告訴状受理。
2016年6月8日 高輪署の逮捕状請求に対して東京地裁が逮捕状を発行。
同日 逮捕状を取った高輪署員が成田空港で帰国の山口敬之氏を待ち構えて、逮捕状執行を図る。直前、逮捕状執行停止。担当警察官「警視庁幹部
の指示で逮捕を取りやめた」
2015年6月中旬 警視庁、任意聴取。
何度でも断るが、安倍晋三に対して逮捕逃れの依頼、あるいは不起訴処分扱いへの依頼をしていなければの条件下で山口敬之が逮捕状が出ていることを知るのは成田空港で山口敬之に対して逮捕状が執行される瞬間である。だが、逮捕状は執行されずに逮捕取調ではなく、任意聴取に変わった。
逮捕状を検察に請求して降りれば、即逮捕に向かうのは刑事物のテレビドラマで常識となっている。世間的にも即逮捕が常識であろう。逮捕に足る最有力の容疑者ということになれば、逃亡や証拠隠滅阻止のためにも逮捕は緊急性を要することになる。
だが、2016年6月8日に東京地裁が逮捕状を発行し、即逮捕に向かったものの、執行停止の指示が警視庁幹部から降りた。
いわば逮捕状は反故にされた。高輪署の任意聴取の際も、逮捕状執行停止が警視庁幹部の指示と言うことなら、取調担当官は逮捕状執行停止のイキサツどころか、逮捕状の「タ」の字も口にすることはできなかったろう。下手に口にしたら、山口敬之から警視庁幹部にどう伝わるか分かったものではないからだ。
当然、逮捕状に関しては、あくまでも安倍晋三に対しても誰に対しても逮捕逃れの依頼と不起訴処分扱いへの依頼をしていなければの話だが、出ていることは知らなくても当然である。その代わり、逮捕状が出ていることを知らなかったからと言って、安倍晋三に対しても誰に対しても逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていない証明とはならない。例えば山口敬之自身がその当時置かれていた状況から逮捕の可能性を予測していた場合は、「もし逮捕状が発行されるようなら、執行を止めることはできないだろうか。検察の取調に進んだとしても、不起訴処分に持っていけないだろうか」と依頼することはできる。
山口敬之の代理人弁護士である北口雅章が外国特派員協会での記者会見で山口敬之に先立って行った発言の中に女性がレイプに関わるイキサツを書いた『Black Box』の内容を引用した次のような下りがある。
北口雅章「伊藤さんは事件の当日、避妊のためピルを飲んでいます。彼女はピルを飲んだ5日後に月経があったと医師に申告しています。そのため医師は、伊藤さんは妊娠の可能性がないと、殆どなくなったと診察しています。それにも関わらず、伊藤さんはそのあと山口さんに何度もメールをして、妊娠の不安を訴えています。性犯罪の被害者は正直に話すのが普通ではないでしょうか。カルテとの矛盾はほかにもいっぱいありますけれど、この辺にとどめます」
要するに女性の訴えの信用のなさを主張している。但し女性と山口敬之との間にメールの遣り取りがあったことが明らかになる。女性がホテル所在地の高輪署の捜査員とホテルの監視カメラ映像を確認した2015年4月15日と高輪署に被害届を提出した2015年4月30日の間の2015年4月18日に山口敬之が女性に「合意の上だった」との文面でメールを送っている。
このような文面となっているのは女性側からの「不同意」の訴えに対する山口敬之側からの「同意」の主張であって、女性側の「不同意」の言い分に対して山口敬之側が「同意」の言い分を戦わせていたからであろう。
戦わせていなければ、山口敬之は「合意の上だった」などといった文面のメールを送る必要性は生じない。生理があって、もはや妊娠の心配がなくなったのに山口敬之に妊娠の不安を訴えるメールを送っていたのは、事実との違いは歓迎できないが、「不同意」(望んだ性交ではなかったこと)を相手に証明させる窮余の策だったと見ることもできる。
「不同意」か「合意」かのメールの遣り取りがあった以上、女性が山口敬之にホテルに連れ込まれたあと、原宿署に相談したり、高輪署の捜査員とホテルの監視カメラ映像を確認していることは、「不同意」の強い後ろ盾とするためにも女性から知らされていただろうし、山口敬之は少なくとも2015年4月18日の時点までには女性が強姦罪か、準強姦罪で警察に相談、その相談に対して警察が取調に動いていることを知っていたことになる。
当然、「捕状が出てるのは知らなかった」とすることはできるが、山口敬之が2015年4月18日に女性に「合意の上だった」との文面でメールを送った際には既に警察が動いていることからも、女性側の「不同意」に対する山口敬之側の「同意」の立証の困難性を、「同意」に対する「不同意」の立証の困難性も相互対応することになるが、ジャーナリストとして承知していたはずで、立証の困難性に伴って職業的立場や職業的立場に応じた世間体に与える知名度への悪影響(社会的地位上のダメージ、イメージダウン等々)が小さくないことが予想されるという点から、自分が厄介な難しい場所に立たされている、あるいは立たされかねないことは認識したはずである。
その認識は警察で取調を受ける万が一の危惧、逮捕状が出るかもしれない万が一の危惧、裁判で被告席に立たされる万が一の危惧を伴うことになる。伴わなかったしたら、社会的地位を築いたジャーナリストとは言えない。万が一の危惧どころか、実現可能性の確率が高い危惧として目の前に迫ったいたということもあり得る。
このような認識が安倍晋三にか、厄介事の処理を依頼する根拠となり得るはずだが、誰に対しても逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていなければ当然とすることができる「逮捕状が出てるのは知らなかった」という事実のみを何事も依頼しなかったことの証明とするのは事件の経緯や事件の性質と矛盾するだけではなく、この種の犯罪の立証の困難性に対してジャーナリストとして弁えていなければならないする認識とも明らかに矛盾する。
だが、山口敬之は、その実質性に於いて果たしてジャーナリストなのか、他の事情は一切排除して、「逮捕状が出てるのは知らなかった」という事実一つのみを以って安倍晋三に対しても、誰に対しても逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていないことの証明としている。
この手の証明は自分の立場を良くする情報操作なくして成り立たない。「逮捕状が出てるのは知らなかった」こと以外の事実は一切排除する、あるいは見えなくするという情報操作である。当然、安倍晋三か、誰かに対して逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていなかったなら、「逮捕状が出てるのは知らなかった」は当然とすることができる事実なだから、そのことの利用は必要としない情報操作となる。
この情報操作は次の遣り取りからも窺うことができる。
神保哲生「すみません、前からで。重要なポイントなので。山口さん、じゃあ、すみません。こちらから質問させていただきます。ビデオニュースの神保です。山口さんご自身は、政治家にも官僚にも誰にもこの事件で頼んだことはないと、きのうもおっしゃって、今日もおっしゃっていますけど、政治家や官僚には頼んでないけれども、そのとき、もしくは事後に、どなたかが山口さんのことで官邸なり、あるいは菅さんなり、あるいは中村さんなり、北村さんなりに働き掛けをしたということはまったく、山口さんはお聞きにもなっていないのか。
それはTBSの方でも結構ですし、どなたか、山口さんの知っている方で、そのような働き掛けがあったということを事後にもお聞きになっていないのか。山口さんがまったくうかがい知らないところで、そういうことがもしあったとすればあったということなのか、それをもし、今この時点でご存じのことがあれば教えてください」
通訳が英語の質問に変えたあとに山口敬之が日本語で答弁。
山口敬之「先ず私がはっきりと申し上げられるのは、このケースのこと、この事件、事案について、私はどの政治家にも、警察の方にも、官僚の方にも、要するに誰にも、何もお願いしていない。それ以上のことは、私は何も聞いていませんので、何か、私の知らないところで何かが起きていたかという質問は、私がお答えするのは適切ではないです。それで、それについて何かが動いたというような話を間接的にも聞いたことは一切ありません」
神保哲生「ではあれだけ、あのようなことが動いたというような報道があっても、その真偽のほどを、しかも、ご自分のことであるにもかかわらず、それは、じゃあ確認もされていないということなんですね」
山口敬之「先ず私は自分で犯罪を犯していません。ですから、捜査が行われているということを知る由もないから、誰にも頼めなかったという物理的なことをご理解いただいた上で、そのあと、この報道が出たあとは、特に、私が例えば誰かに電話をかけたり、それからメールを送ったりすること自体が誤解を招くということで、一切の連絡は断ちました、私は。ですから、私が通常の連絡すらしておりませんので、このケースをどの政治家にも、どの官僚にも一切頼んでいない。私からはっきり申し上げられるのはそれだけです」
山口敬之は、「私は自分で犯罪を犯していません」と、自己の正当性、正義は自己にありを言い切っているが、女性と山口敬之との間で「不同意」か「合意」かで争う、自身の評判を落としかねない厄介事となる性行為を犯していて、その件で警察が動いていることを両者のメールの遣り取りで気づいているはずで、「不同意」か「合意」かの決着は最終的には裁判に委ねられる可能性が色濃くなっていたのだから、自己の正当性、正義は自己にありを言い切ること自体が情報操作に当たる。
当然、「捜査が行われているということを知る由もない」も情報操作でなければ、文脈上の整合性を図ることができないし、「知る由もない」の情報操作は、「誰にも頼めなかったという物理的なことをご理解」の発言も、情報操作を自ずと引き継ぐことになる。
要するに山口敬之のこの記者会見の以下の発言の中で自己の正当性を訴えるどのような発言も、情報操作に基づいていなければならない。他から与えられた自己正当性は検察の取り調べで2016年7月に嫌疑不十分で不起訴となったこと、女性がこの不起訴処分を不服として審査を申し立てた検察審査会が2017年9月に不起訴を覆すだけの理由がないとして「不起訴相当」を議決したことぐらいだろう。
但し安倍晋三なりに依頼して獲ち取った自己正当性に過ぎない。
2016年6月8日に山口敬之に対する逮捕状執行の停止を逮捕した「警視庁幹部」とは2017年5月31日付「ディリー新潮」(2017年5月25日号)には当時の警視庁刑事部長だった中村格(いたる)として紹介されている。
〈中村氏が「(逮捕は必要ないと)私が判断した」と本誌(「週刊新潮」の取材に答えたものだから、新聞・テレビの記者はその真偽のほどを本誌発売後、探りに行っている。そのあらましについて、事情を知る記者に語ってもらうと、
「“記事の件は、あまりまともだと思わない方がいい。なんで2年前の話が今ごろ出てくるのか、不自然でしょ。女も就職の世話をしてほしいという思惑があったから飲みに行ったのであって所詮男女の揉め事。彼女は2軒目にも同行しているんだしさ。その就職の話が結局うまくいかなかったこととか、最近、山口さんがテレビによく出ているからという、そういうことも(告白の)背景にあるんじゃないの”と、中村さんはこんな感じの話しぶりだったそうです」・・・・
ネットで調べたところ、中村格が取材に答えた「週刊新潮」は、2017年5月18日発売で、《官邸お抱え記者「山口敬之」、直前で“準強姦”逮捕取りやめに 警視庁刑事部長が指示》と題してネット上に紹介されている。
要するに中村格は「週刊新潮」の取材に対して「なんで2年前の話が今ごろ出てくるのか、不自然でしょ」、「女も就職の世話をしてほしいという思惑があったから飲みに行ったのであって所詮男女の揉め事」といったことを伝えた。
週刊誌は発売日よりも1週間程度か、前に発売される。2017年5月10日見当までの事件の経緯を改めて振り返ってみる。
女性が望まない不同意の性行為を力づくで受けたのが2015年4月3日。原宿署への相談等を経て、高輪署が女性の準強姦容疑での告訴状を受理し、逮捕取調の予定が逮捕状執行停止を中村格から指示されて、任意聴取に切り替えたのが2015年6月中旬。そして東京地検が嫌疑不十分で不起訴決定を下したのは2016年7月22日で、中村格の逮捕状執行停止指示を伝えた「週刊新潮」の取材の時点頃までに1年と約4ヶ月も過ぎている。
そして女性が東京地検の不起訴決定に対する不服申立を検察審査会に行ったのは2017年5月29日、検察審査会が「不起訴を覆すだけの理由がない」として「不起訴相当」と議決したのは2017年9月22日と続くのだが、中村格が「なんで2年前の話」がと言った「2年」は自己の立場を正当化するために少々色を付けた「2年」だとしても、女性からしたら1年と約4ヶ月はいつ決着がつくかも分からない、精神的に宙ぶらりんの状態をいたずらに招くだけの途中経過に過ぎず、このことを含めて、女性からしたら自身の人格とその尊厳に深く関わる忌まわしい出来事の一つの決着を図っている真摯な事実に対して警察にしても真摯に向き合わなければならないところを、「なんで2年前の話が今ごろ出てくるのか、不自然でしょ」と言い、「所詮男女の揉め事」と断罪することで女性の人格とその尊厳を貶めている自身の酷薄な感性に気づかない。
中村格の経歴をネットで調べてみた。東京大学法学、1986年警察庁入庁、2012年12月に内閣官房長官菅義偉の秘書官。2015年3月から2016年8月まで警視庁刑事部長、2018年9月14日より警察庁長官官房長を歴任している。年齢は出ていないが、東大卒の年から計算して、55歳見当か。
これだけの学歴と経歴を以ってして、この酷薄な感性である。
中村格は内閣官房長官菅義偉の秘書官として2012年12月から2015年3月頃まで首相官邸に出入りしていた。一方の山口敬之は安倍晋三対する積み重ねた取材と出版に当たって新しく取材した情報も付け加えているかもしれないが、それを纏めた本を『総理』と題して2016年6月9日に出版した。
その前日の2016年6月8日、山口敬之に対する準強姦罪の容疑で取った逮捕状を高輪署の捜査員が携えて、帰国してくる成田空港に出向いたが、逮捕直前に当時警視庁刑事部長だった中村格が所轄署である高輪署の権限を超えて逮捕状執行停止を指示した。
中村格は菅義偉の秘書官をしていた。山口敬之は安倍晋三と親しい関係にあった。しかも安倍晋三という政治家を題材とした出版を間近に控えていた。山口敬之を不起訴処分にする人材は揃っていた。不起訴処分にしなければならないお膳立ても揃っていた。山口敬之がレイプジャーナリストといった不名誉なキャッチフレーズで呼ばれることと、そのようなレイプジャーナリストがモノにした『総理』なる著作物といった不名誉なキャッチフレーズがつくことは安倍晋三にとっても不名誉なことで、それを回避するためのお膳立てであり、持てる人材を駆使した。
だが、民事裁判に於ける地裁の一審判決が断罪を下すことになった。山口敬之は控訴した。一審判決を覆すにはさらに強力な安倍晋三等の裁判介入が必要となるはずだ。
(加筆 2020年1月13日11:58)
もし山口敬之が言っている「合意」が事実なら、冷静な状況下の性行為ということになって、大人の態度として「妊娠は大丈夫か」ぐらいは聞いたはずだ。「大丈夫」と答えれば、膣内射精で行くし、「大丈夫ではない。何の用意もしていない」と答えたなら、膣外射精で行っただろうし、その際の遣り取りが「合意」の有力な証拠となり得る。
そういった遣り取りがなかったなら、逆に「不同意」の強力な状況証拠となる。
〈2015年4月3日、女性が自身の就職やアメリカの就労ビザについての相談のため、東京都内で当時TBSの政治部記者でワシントン支局長であった山口敬之と会食。同日深夜から4日早朝にかけて飲酒後に記憶をなくし、ホテルで乱暴されたとして準強姦容疑で警視庁に被害届を提出。
東京地裁が2016年7月に嫌疑不十分で不起訴としたため、伊藤は2017年5月、検察審査会に審査を申し立てた。東京第6検察審査会は2017年9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして「不起訴相当」と議決した。
民事訴訟
2017年9月28日、「望まない性行為で精神的苦痛を受けた」として、女性が山口を相手に1100万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こした。その直後の10月18日、女性が自らの訴えを綴った手記「Black Box」を出版し、24日には日本外国特派員協会で会見を行った。一方で山口は同月26日発売の月刊『Hanada』に、「私を訴えた女性へ」と題する手記を掲載し、女性の主張を全面的に否定した。
2019年2月、山口が「女性の記者会見での発言などで社会的信用を奪われた」として女性を相手に慰謝料1億3000万円と謝罪広告の掲載を求めて反訴した。裁判は山口、女性の双方の訴えを同時に審理し、12月18日、女性側の請求を認め、330万円を支払うよう山口側に命じた。山口の反訴は棄却。〉――
山口敬之は民事で敗訴した翌日の2019年12月19日に都内の日本外国特派員協会で自らの正当性を訴える、いわば不同意の上の性行為ではなく、合意の上の性行為であるとする会見(Yahoo!ニュース/2019/12/19(木) 17:06)を開いた。
最初に山口敬之の代理人弁護士である北口雅章が発言、民事での女性の証言と女性の著作『Black Box』の内容との食い違い等を引き合いに出して、さも女性がウソつきであるかのような物言いをしたあと、英語で話す司会に対して通訳が簡単に日本語訳をし、記者が同じ英語で話して、通訳が日本語訳する遣り取りが少し続いてから、山口敬之が英語で話した。記事は英会話のところはすべて割愛している。
山口敬之と記者との英語での質疑応答が5問ほど続いてから、通訳が次のように訳す。
通訳「簡単に言いますと、逮捕状が出たのを聞いていません。逮捕状が出てるのは知りませんでした。なので、警察がいつどこで私を取り調べてるかっていうのを私は知りませんでした。本当は裏で総理大臣などの力を借りてるんじゃないですかっていうことで、いいえ、私、一切そんなことやってません」
通訳の日本語訳を補足する形で山口敬之が日本語で発言。
山口敬之「ちょっと訳、日本の方に言わせていただくと、私は6月8日に成田に着いて、そこで逮捕状が執行されなかったという報道が出ていることについての質問だと思うんですが、私のところに警視庁の方が任意の聴取にいらっしゃったのは6月中旬で、それまで私は捜査対象であるってことを一切知らないんですね。当然、警察の方が私を逮捕しようと思ってるのであれば、私にそれ、事前に伝えるはずがないですよね。ですから、出てるかどうか知らない逮捕状のことを、私は誰にも頼むことができないっていうことを申し上げた。ちょっと訳を補足させていただきました」
山口敬之は英語で「逮捕状が出たのを聞いていません。逮捕状が出てるのは知りませんでした」といった趣旨の発言をしたことになる。但しその通訳内容に対して「2015年6月中旬に警視庁の任意聴取を受けるまで捜査対象であるってことを一切知らなかった」こと、知らなかった理由は「警察の方が私を逮捕しようと思ってるのであれば、私にそれ、事前に伝えるはずがないから」であり、「出てるかどうか知らない逮捕状のことを、私は誰にも頼むことができない」との物言いで、検察の取り調べて不起訴処分となったのは「裏で総理大臣などの力を借りてるんじゃないですか」との記者の問いに対してなのか、安倍晋三への依頼の疑いに関わる身の潔白を強く主張した。
このような疑いが出てくるのは逮捕直前の逮捕状執行停止の経緯と山口敬之が安倍晋三に近いジャーナリストとして2016年6月9日に『総理』なる題名の著作を出版していることなどによるらしい。
山口敬之が安倍晋三に対して逮捕逃れの依頼、あるいは不起訴処分扱いへの依頼をしていなければ、逮捕状が出ているのを知らなくて当然である。レイプ事件から警視庁が山口敬之を事件に関わる任意聴取をするまでをネットから拾った時系列で見てみる。
2015年4月3日 女性が山口敬之が食事と飲酒を共にしたあと高輪にあるホテルに連れ込まれる。
2015年4月9日 女性が原宿署へ相談。
2015年4月15日 女性、高輪署の捜査員とホテルの監視カメラ映像を確認。
2015年4月18日 山口敬之が女性に「合意の上だった」との文面でメールを送信。
2015年4月30日 高輪署に被害届を提出。準強姦容疑(当時)で女性の告訴状受理。
2016年6月8日 高輪署の逮捕状請求に対して東京地裁が逮捕状を発行。
同日 逮捕状を取った高輪署員が成田空港で帰国の山口敬之氏を待ち構えて、逮捕状執行を図る。直前、逮捕状執行停止。担当警察官「警視庁幹部
の指示で逮捕を取りやめた」
2015年6月中旬 警視庁、任意聴取。
何度でも断るが、安倍晋三に対して逮捕逃れの依頼、あるいは不起訴処分扱いへの依頼をしていなければの条件下で山口敬之が逮捕状が出ていることを知るのは成田空港で山口敬之に対して逮捕状が執行される瞬間である。だが、逮捕状は執行されずに逮捕取調ではなく、任意聴取に変わった。
逮捕状を検察に請求して降りれば、即逮捕に向かうのは刑事物のテレビドラマで常識となっている。世間的にも即逮捕が常識であろう。逮捕に足る最有力の容疑者ということになれば、逃亡や証拠隠滅阻止のためにも逮捕は緊急性を要することになる。
だが、2016年6月8日に東京地裁が逮捕状を発行し、即逮捕に向かったものの、執行停止の指示が警視庁幹部から降りた。
いわば逮捕状は反故にされた。高輪署の任意聴取の際も、逮捕状執行停止が警視庁幹部の指示と言うことなら、取調担当官は逮捕状執行停止のイキサツどころか、逮捕状の「タ」の字も口にすることはできなかったろう。下手に口にしたら、山口敬之から警視庁幹部にどう伝わるか分かったものではないからだ。
当然、逮捕状に関しては、あくまでも安倍晋三に対しても誰に対しても逮捕逃れの依頼と不起訴処分扱いへの依頼をしていなければの話だが、出ていることは知らなくても当然である。その代わり、逮捕状が出ていることを知らなかったからと言って、安倍晋三に対しても誰に対しても逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていない証明とはならない。例えば山口敬之自身がその当時置かれていた状況から逮捕の可能性を予測していた場合は、「もし逮捕状が発行されるようなら、執行を止めることはできないだろうか。検察の取調に進んだとしても、不起訴処分に持っていけないだろうか」と依頼することはできる。
山口敬之の代理人弁護士である北口雅章が外国特派員協会での記者会見で山口敬之に先立って行った発言の中に女性がレイプに関わるイキサツを書いた『Black Box』の内容を引用した次のような下りがある。
北口雅章「伊藤さんは事件の当日、避妊のためピルを飲んでいます。彼女はピルを飲んだ5日後に月経があったと医師に申告しています。そのため医師は、伊藤さんは妊娠の可能性がないと、殆どなくなったと診察しています。それにも関わらず、伊藤さんはそのあと山口さんに何度もメールをして、妊娠の不安を訴えています。性犯罪の被害者は正直に話すのが普通ではないでしょうか。カルテとの矛盾はほかにもいっぱいありますけれど、この辺にとどめます」
要するに女性の訴えの信用のなさを主張している。但し女性と山口敬之との間にメールの遣り取りがあったことが明らかになる。女性がホテル所在地の高輪署の捜査員とホテルの監視カメラ映像を確認した2015年4月15日と高輪署に被害届を提出した2015年4月30日の間の2015年4月18日に山口敬之が女性に「合意の上だった」との文面でメールを送っている。
このような文面となっているのは女性側からの「不同意」の訴えに対する山口敬之側からの「同意」の主張であって、女性側の「不同意」の言い分に対して山口敬之側が「同意」の言い分を戦わせていたからであろう。
戦わせていなければ、山口敬之は「合意の上だった」などといった文面のメールを送る必要性は生じない。生理があって、もはや妊娠の心配がなくなったのに山口敬之に妊娠の不安を訴えるメールを送っていたのは、事実との違いは歓迎できないが、「不同意」(望んだ性交ではなかったこと)を相手に証明させる窮余の策だったと見ることもできる。
「不同意」か「合意」かのメールの遣り取りがあった以上、女性が山口敬之にホテルに連れ込まれたあと、原宿署に相談したり、高輪署の捜査員とホテルの監視カメラ映像を確認していることは、「不同意」の強い後ろ盾とするためにも女性から知らされていただろうし、山口敬之は少なくとも2015年4月18日の時点までには女性が強姦罪か、準強姦罪で警察に相談、その相談に対して警察が取調に動いていることを知っていたことになる。
当然、「捕状が出てるのは知らなかった」とすることはできるが、山口敬之が2015年4月18日に女性に「合意の上だった」との文面でメールを送った際には既に警察が動いていることからも、女性側の「不同意」に対する山口敬之側の「同意」の立証の困難性を、「同意」に対する「不同意」の立証の困難性も相互対応することになるが、ジャーナリストとして承知していたはずで、立証の困難性に伴って職業的立場や職業的立場に応じた世間体に与える知名度への悪影響(社会的地位上のダメージ、イメージダウン等々)が小さくないことが予想されるという点から、自分が厄介な難しい場所に立たされている、あるいは立たされかねないことは認識したはずである。
その認識は警察で取調を受ける万が一の危惧、逮捕状が出るかもしれない万が一の危惧、裁判で被告席に立たされる万が一の危惧を伴うことになる。伴わなかったしたら、社会的地位を築いたジャーナリストとは言えない。万が一の危惧どころか、実現可能性の確率が高い危惧として目の前に迫ったいたということもあり得る。
このような認識が安倍晋三にか、厄介事の処理を依頼する根拠となり得るはずだが、誰に対しても逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていなければ当然とすることができる「逮捕状が出てるのは知らなかった」という事実のみを何事も依頼しなかったことの証明とするのは事件の経緯や事件の性質と矛盾するだけではなく、この種の犯罪の立証の困難性に対してジャーナリストとして弁えていなければならないする認識とも明らかに矛盾する。
だが、山口敬之は、その実質性に於いて果たしてジャーナリストなのか、他の事情は一切排除して、「逮捕状が出てるのは知らなかった」という事実一つのみを以って安倍晋三に対しても、誰に対しても逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていないことの証明としている。
この手の証明は自分の立場を良くする情報操作なくして成り立たない。「逮捕状が出てるのは知らなかった」こと以外の事実は一切排除する、あるいは見えなくするという情報操作である。当然、安倍晋三か、誰かに対して逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていなかったなら、「逮捕状が出てるのは知らなかった」は当然とすることができる事実なだから、そのことの利用は必要としない情報操作となる。
この情報操作は次の遣り取りからも窺うことができる。
神保哲生「すみません、前からで。重要なポイントなので。山口さん、じゃあ、すみません。こちらから質問させていただきます。ビデオニュースの神保です。山口さんご自身は、政治家にも官僚にも誰にもこの事件で頼んだことはないと、きのうもおっしゃって、今日もおっしゃっていますけど、政治家や官僚には頼んでないけれども、そのとき、もしくは事後に、どなたかが山口さんのことで官邸なり、あるいは菅さんなり、あるいは中村さんなり、北村さんなりに働き掛けをしたということはまったく、山口さんはお聞きにもなっていないのか。
それはTBSの方でも結構ですし、どなたか、山口さんの知っている方で、そのような働き掛けがあったということを事後にもお聞きになっていないのか。山口さんがまったくうかがい知らないところで、そういうことがもしあったとすればあったということなのか、それをもし、今この時点でご存じのことがあれば教えてください」
通訳が英語の質問に変えたあとに山口敬之が日本語で答弁。
山口敬之「先ず私がはっきりと申し上げられるのは、このケースのこと、この事件、事案について、私はどの政治家にも、警察の方にも、官僚の方にも、要するに誰にも、何もお願いしていない。それ以上のことは、私は何も聞いていませんので、何か、私の知らないところで何かが起きていたかという質問は、私がお答えするのは適切ではないです。それで、それについて何かが動いたというような話を間接的にも聞いたことは一切ありません」
神保哲生「ではあれだけ、あのようなことが動いたというような報道があっても、その真偽のほどを、しかも、ご自分のことであるにもかかわらず、それは、じゃあ確認もされていないということなんですね」
山口敬之「先ず私は自分で犯罪を犯していません。ですから、捜査が行われているということを知る由もないから、誰にも頼めなかったという物理的なことをご理解いただいた上で、そのあと、この報道が出たあとは、特に、私が例えば誰かに電話をかけたり、それからメールを送ったりすること自体が誤解を招くということで、一切の連絡は断ちました、私は。ですから、私が通常の連絡すらしておりませんので、このケースをどの政治家にも、どの官僚にも一切頼んでいない。私からはっきり申し上げられるのはそれだけです」
山口敬之は、「私は自分で犯罪を犯していません」と、自己の正当性、正義は自己にありを言い切っているが、女性と山口敬之との間で「不同意」か「合意」かで争う、自身の評判を落としかねない厄介事となる性行為を犯していて、その件で警察が動いていることを両者のメールの遣り取りで気づいているはずで、「不同意」か「合意」かの決着は最終的には裁判に委ねられる可能性が色濃くなっていたのだから、自己の正当性、正義は自己にありを言い切ること自体が情報操作に当たる。
当然、「捜査が行われているということを知る由もない」も情報操作でなければ、文脈上の整合性を図ることができないし、「知る由もない」の情報操作は、「誰にも頼めなかったという物理的なことをご理解」の発言も、情報操作を自ずと引き継ぐことになる。
要するに山口敬之のこの記者会見の以下の発言の中で自己の正当性を訴えるどのような発言も、情報操作に基づいていなければならない。他から与えられた自己正当性は検察の取り調べで2016年7月に嫌疑不十分で不起訴となったこと、女性がこの不起訴処分を不服として審査を申し立てた検察審査会が2017年9月に不起訴を覆すだけの理由がないとして「不起訴相当」を議決したことぐらいだろう。
但し安倍晋三なりに依頼して獲ち取った自己正当性に過ぎない。
2016年6月8日に山口敬之に対する逮捕状執行の停止を逮捕した「警視庁幹部」とは2017年5月31日付「ディリー新潮」(2017年5月25日号)には当時の警視庁刑事部長だった中村格(いたる)として紹介されている。
〈中村氏が「(逮捕は必要ないと)私が判断した」と本誌(「週刊新潮」の取材に答えたものだから、新聞・テレビの記者はその真偽のほどを本誌発売後、探りに行っている。そのあらましについて、事情を知る記者に語ってもらうと、
「“記事の件は、あまりまともだと思わない方がいい。なんで2年前の話が今ごろ出てくるのか、不自然でしょ。女も就職の世話をしてほしいという思惑があったから飲みに行ったのであって所詮男女の揉め事。彼女は2軒目にも同行しているんだしさ。その就職の話が結局うまくいかなかったこととか、最近、山口さんがテレビによく出ているからという、そういうことも(告白の)背景にあるんじゃないの”と、中村さんはこんな感じの話しぶりだったそうです」・・・・
ネットで調べたところ、中村格が取材に答えた「週刊新潮」は、2017年5月18日発売で、《官邸お抱え記者「山口敬之」、直前で“準強姦”逮捕取りやめに 警視庁刑事部長が指示》と題してネット上に紹介されている。
要するに中村格は「週刊新潮」の取材に対して「なんで2年前の話が今ごろ出てくるのか、不自然でしょ」、「女も就職の世話をしてほしいという思惑があったから飲みに行ったのであって所詮男女の揉め事」といったことを伝えた。
週刊誌は発売日よりも1週間程度か、前に発売される。2017年5月10日見当までの事件の経緯を改めて振り返ってみる。
女性が望まない不同意の性行為を力づくで受けたのが2015年4月3日。原宿署への相談等を経て、高輪署が女性の準強姦容疑での告訴状を受理し、逮捕取調の予定が逮捕状執行停止を中村格から指示されて、任意聴取に切り替えたのが2015年6月中旬。そして東京地検が嫌疑不十分で不起訴決定を下したのは2016年7月22日で、中村格の逮捕状執行停止指示を伝えた「週刊新潮」の取材の時点頃までに1年と約4ヶ月も過ぎている。
そして女性が東京地検の不起訴決定に対する不服申立を検察審査会に行ったのは2017年5月29日、検察審査会が「不起訴を覆すだけの理由がない」として「不起訴相当」と議決したのは2017年9月22日と続くのだが、中村格が「なんで2年前の話」がと言った「2年」は自己の立場を正当化するために少々色を付けた「2年」だとしても、女性からしたら1年と約4ヶ月はいつ決着がつくかも分からない、精神的に宙ぶらりんの状態をいたずらに招くだけの途中経過に過ぎず、このことを含めて、女性からしたら自身の人格とその尊厳に深く関わる忌まわしい出来事の一つの決着を図っている真摯な事実に対して警察にしても真摯に向き合わなければならないところを、「なんで2年前の話が今ごろ出てくるのか、不自然でしょ」と言い、「所詮男女の揉め事」と断罪することで女性の人格とその尊厳を貶めている自身の酷薄な感性に気づかない。
中村格の経歴をネットで調べてみた。東京大学法学、1986年警察庁入庁、2012年12月に内閣官房長官菅義偉の秘書官。2015年3月から2016年8月まで警視庁刑事部長、2018年9月14日より警察庁長官官房長を歴任している。年齢は出ていないが、東大卒の年から計算して、55歳見当か。
これだけの学歴と経歴を以ってして、この酷薄な感性である。
中村格は内閣官房長官菅義偉の秘書官として2012年12月から2015年3月頃まで首相官邸に出入りしていた。一方の山口敬之は安倍晋三対する積み重ねた取材と出版に当たって新しく取材した情報も付け加えているかもしれないが、それを纏めた本を『総理』と題して2016年6月9日に出版した。
その前日の2016年6月8日、山口敬之に対する準強姦罪の容疑で取った逮捕状を高輪署の捜査員が携えて、帰国してくる成田空港に出向いたが、逮捕直前に当時警視庁刑事部長だった中村格が所轄署である高輪署の権限を超えて逮捕状執行停止を指示した。
中村格は菅義偉の秘書官をしていた。山口敬之は安倍晋三と親しい関係にあった。しかも安倍晋三という政治家を題材とした出版を間近に控えていた。山口敬之を不起訴処分にする人材は揃っていた。不起訴処分にしなければならないお膳立ても揃っていた。山口敬之がレイプジャーナリストといった不名誉なキャッチフレーズで呼ばれることと、そのようなレイプジャーナリストがモノにした『総理』なる著作物といった不名誉なキャッチフレーズがつくことは安倍晋三にとっても不名誉なことで、それを回避するためのお膳立てであり、持てる人材を駆使した。
だが、民事裁判に於ける地裁の一審判決が断罪を下すことになった。山口敬之は控訴した。一審判決を覆すにはさらに強力な安倍晋三等の裁判介入が必要となるはずだ。
(加筆 2020年1月13日11:58)
もし山口敬之が言っている「合意」が事実なら、冷静な状況下の性行為ということになって、大人の態度として「妊娠は大丈夫か」ぐらいは聞いたはずだ。「大丈夫」と答えれば、膣内射精で行くし、「大丈夫ではない。何の用意もしていない」と答えたなら、膣外射精で行っただろうし、その際の遣り取りが「合意」の有力な証拠となり得る。
そういった遣り取りがなかったなら、逆に「不同意」の強力な状況証拠となる。