2019年2月12日衆院予算委:安倍晋三の自民党政権+安倍政権性善説に立った対岡田克也「悪夢のような民主党政権」論争

2019-02-14 11:36:58 | 政治
 


 安倍晋三: 2019年2月12日衆院予算委

 安倍晋三の質問者の質問に答えずに、ヤジに長々と答弁した前代未聞の

 世界に例を見ない滑稽な醜態 

 先進国最悪の借金捻出の主役が自民党政権であることの

 図星を衝かれて、表面冷静、内心慌てたか



 2019年2月12日衆院予算委 安倍晋三の「悪夢の民主党」発言を巡る対岡田克也との論争

 岡田達也「立憲民主党・無所属フォーラムの岡田克也です。今日は総理と北方領土問題を中心にしっかりと議諭したいと考えておりますが、その前に一つ先般の自民党大会で総理は、『あの悪夢のような民主党政権が誕生した』、いうふうに言われました。勿論、民主党政権時代の反省は我々にあります。しかし政党政治を置いて、頭から相手を否定して、議論が成り立つのか。

 私たちは政権時代にその前の自民党の歴代政権の重荷も背負いながら、政権運営をやってきました。そのことを考えたら、あんな発言は私は出てこないはすだと思います。撤回を求めます」

 安倍晋三「あのー。まさに政党間で議論する。私は別に議論を受入れていないわけではありません(軽く笑いながら、余裕を見せて)。先週もですね、7時間、ずっと議論させて頂きました。みなさんはですね、自分達の政権の正当性があれば、色んな場所で演説されたらいいんですよ。私は自民党総裁として、そう考えている、そう考えているということを述べる自由はまさに言論の自由なんですよ。(言論の自由は)あるわけでありまして、少なくともバラ色の民主党政権でなかったことは事実なんだろうなと言わさざるを得ないわけなんですが、そこで、そこでですね、そこで、私は何が一番言いたかったということはですね、やっぱりあのとき、若い皆さんの就職率低いじやないですか。

 そういう、岡田さんにはそういう反省、全然ないんですか。我々はですね、我々は政権を失ったわけです。まさに、なぜ政権を失ったかと言うと、なぜ政権を失ったか、我々は深刻に反省したんです。その中に於いて全国でずうっと、対話集会を開きながら、真摯に耳を傾け、我々は生まれ変わろうと決意をしたわけであります。

 皆さん、悪夢でなかった、それを否定しろと仰るんですが、では、なぜですね、民主党という名前を変えたんですか。

 私はそれが非常に不思議だ。自民党は自民党という名前を変えようと思わなかった。私達自身が反省して、生まれ変わらなければならないという大きな決意をしたんです。別に名前のせいで負けたたわけではないんですよ。みなさんはこの民主党っていうイメージが悪いから、恐らく名前を変えられたんだろうと推測する人はたくさんいますよ。

 そういう意味では皆さんもそう思っておられとるんじやないですか」

 岡田達也「驚きました。勿論、私達は政権運営に反省はあるというふうに申し上げました。しかしその前の自民党政権時代の反省はないのか、と私は申し上げているのです。その重荷を背負って私たちが運営した部分もある。あなたが本当に自民党政権時代を反省したと言うのであれば、あんな言葉は出てこないはすですよ。一方的に民主党政権、レッテル貼りしてますけども、あなたたちがやったことで、私達も苦しんだことがある。

 そういったことについて謙虚な気持ちで、総理でしたら、発言して貰いたいと思います。今の発言、全く了解できませんよ。取り消しなさい」

 安倍晋三「取り消しなさいと言われても、取り消しません。それを明快にさせて頂きたいと思います。そこでですね、ですが、『私は反省がないではない』と申し上げましたよね。でも、皆さんに重荷を背負わしたっていうのはこれは分からない。みなさん政権獲ったんですから、自分達の政策をすればいいじゃないですか。

 重荷と言うのはなんですか。(誰かがヤジで「財政赤字」と言ったのか)財政赤字、財政赤字(思わずのように苦笑を洩らして)。例えば財政赤字ということについてはですね、財政赤字ということについて言えば、勿論、我々もその財政赤字が溜まってきた。

 しかしですね、これはそれぞれ必要があって行ったことであって、漫然と行ってきたわけではない。それぞれですね、敢えてその赤字を覚悟しても、出さなければいけないというときもあるんですよ。ですから、例えばですね、先程申し上げましたように就職氷河期等をつくってはならない。その、みなさんはずっと苦労するんですよ。そういうときは財政財政政策をするわけであります。
 
 (「そんなこと聞いていない」と岡田克也が自席から抗議したのか)また、皆さんの誰かそうおっしゃったから、答えさせて頂いたわけであります」

 岡田達也「私が聞いていないことに延々と時間を使わないで貰いたい。私は民主党政権時代の、まあ、最大の苦しみ、申し訳なかったと思うのは原発事故ですよ。あの福島の原発事故。もっとうまく対応できなかったか。私達反省ありますよ。

 だけど同時にその前の自民党政権にも責任があるんじゃないですか。そこにあなたは責任認めないんですか。はっきり答えください」

 安倍晋三「原子力政策についてですね、ああした過酷な事故が起こってしまったということについては、それは歴代の政権として、第1次安倍政権を含めてですね、それは反省をしております。

 しかし総じて見ればですね、総じて見れば、この原発事故のことについて皆さんの対応をどうこう言うつもりはありません。そうではなくて、経済政策について、私はそのあとの文脈、私の演説の文脈を見てくださいよ。経済政策に於いて、経済政策に於いてこの間、まさに失業率が今よりもですね、有効求人倍率に於いては大分半分ぐらいですよね。その時点について見てみればですね、有効求人倍率については1倍を超える県、今47の全ての都道府県が倍を超えています。これは史上初めてのことですが、民主党政権時代には7県、8県であったのは事実じゃないですか。

 そういう時代、そういう時代を超えていかなければいけない。そういう時代を解消しなければいけないということで私も努力をして、こういう状況を作り出して来たわけであります、私はそういう批判をさせて頂きたい。批判をするなと言うこと自体がそれはおかしいわけであってですね。あの皆さんが自由民主党に対して批判をすれば、それに対して反論しますよ。
 
 批判自体をやめろとかですね、そういうこと言ったことは私は1回もないですよ」 

 岡田達也「批判するなと言ってるんじゃなくて、全否定するようなレッテル貼りはやめろと言ってるんです。それは私が申し上げた、じやあ、原発、原発事故について、原発事故についてですね、全会一致で設けた国会事故調、ここの報告書、何て言ってますか。総理、原発事故の根源的な原因は何だと国会事故調の報告書は結諭づけていますか。述べてください。

 安倍晋三「全否定するなとおっしゃいますがね、みなさん、採決のときにですね、『安倍政治は許さない』と全否定して、何かプラカードをみんなで持ったのはどこの党の皆さんですか。名前が変わったら、それがもうそれがなくなったということになるんですか。

 で、その、そこでですね、事故調の調査についてどういう見解を述べろということについては、それは質問通告して頂かないと、政府として、政府としてそういう見解を述べなければいけないわけでありますから、既に述べていると思います。ですから、それは個人の見解は述べることはできませんから、この場に於いては。政府を代表してここに立っているわけですから。

 それはちゃんと通告して頂かなければですね、これはあの答弁することはできません」

 岡田達也「総理の見解を述べろとは言ってるんじゃないんです。国会事故調の報告書にどう書いてあるのかということを聞いてるわけです。私は驚きました。そんなことも総理は知らないんですか。

 国会事故調の報告書にはこう書いてありますよ。原発事故の根源的な原因ですよ、私が聞いたのは。『根源的な原因は平成23年3月11日以前に求められる』

 これが結論じゃないですか。その反省もできていないんですか、その報告書、覚えてもいないんですか。つまり3月11日以降の対応については私たちは反省しなきやいけないし、その前も、勿論、私たちも責任を負いますよ。だけど、あなたたちが3月11日以前に歴代自民党政権が一体何をしてきたのか、この国会事故調の中にはっきり書いてあるじやないですか。

 規制と推進を同じ役所の中に、経済産業省の中に置いたこと。そして様々な提言を先送りした結果としてあの事故に至った。これは事故調の結論じゃないですか。このことの反省があなたにはないんですかということを聞いているんですよ」

 安倍晋三「事故調に何が書いてあるか、それを述べろと言われたらですね、私は事故調の文章をちゃんと見て述べなければいけない立場なんです。大体覚えてることを述べる立場には、内閣総理大臣なんですから、ないわけですよ。そこでまた一語一句ですね、私がこの記憶の中で答えたら、そこは違う(吹き出し笑いをしながら)、こう言われるわけですから。これは岡田さんの、(大臣席を手で示して)こちら側に立った立場はあるんですからね。その質問がどういう質問であったかということは。それは考えて頂かないといけないと思いますよ。

 お互いそういう質問し合うというのは非生産的の最たるものなんだろうと、私はそう言わざるを得ないと、こう思っています。で、そこでですね、反省はないかと言われますが、先程からその点については我々も反省していると、こう述べて、一番最初に述べたじやないですか。

 その上で申し上げている訳でありますが、政党同士ですからね、これ、色々とお互いに戦い合っていくわけであります。その中で相手の政策、間違っていたということで申し上げている訳であります。

 私も党大会のときですね、この演説というのは、いわば経済政策に於いてこれは批判を、批判をさせて頂いているわけでございます。原発の政策についてそこで述べて、私はいないわけでありますから。他にもありますよ、外交についてとか、言いたいことはたくさんありますよ。全部言う時間はありませんでしたから、経清について述べさせて頂いた、つまり(民主党政権時代は)仕事がなかった、連鎖倒産が続いていた、ということを述べたわけであります。マクロ政策に於いても皆さんのときのマクロ政策は私は閲逗っていたと思いますよ。明確に。

 ですから、私達は3本の矢という新たな政策を打ち出したわけであります。という中で、もはやデフレではないとい状況はかなり早い段階で作り出すことができた。で、雇用状況が改善しているのは事実です。昨年の12月の1日の時点でですね、大卒者の就職内定率は過去最高となっているわけであります。やっぱり若い皆さがんですね、働きたいと思う人がやっと仕事が、やっぱり仕事があるという状況を築くことが政治の大きな責任だと思っている。申し訳ないんですが、皆さん、残念ながらそれを果たすことができなかったのは事実ですから。

 この事実を受け止めないんであればですね、全く反省してないと言わざるを得ないんじゃないですか」

 岡田達也「私が聞いてもいないことを長々と答弁されるわけですけれども、あの原発の事故のときに本当に残念だったことは津波が来て、そして水に浸かった、予備電源が失われた、そして電源が失われたことによって水素爆発が、あるいはメルトダウンが生じてしまった。

 勿論、我々の対応にも問題あったと私は思うけど、なぜ予備電源が地下にあったのか、なぜ津波の水が超えてきたときに水没してしまうようなところに予備電源を置いておいたのか。これは本当に馬鹿気た失敗。これはやっぱり自民党政権の時代の話なんですよ。

 このことが分かっていたなら、今のような答弁にならないですよ。私は3月11日以前にあったというこの事故調の報告書についてもう一度、総理がしっかりと読み直して頂きたい、そういうふうに思っています。

 民主主義というのはお互いに相手を全否定したら成り立たないんです。だから私は議論、これからもします。だけど、総理の党大会に於ける言い方はほぼ全否定に近いじゃないか。それでは私は議論は深まらないし、民主主義はどんどんおかしくなってしまう。そのことを先ず申し上げておきたいと思います」

 (北方領土問題に移る)

 岡田克也は民主党政権にも反省点はあるが、自民党政権にも反省点はあるはずとの論理で以って、「あの悪夢のような民主党政権が誕生した」なる発言の妥当性を問い質した。

 妥当性を問われた以上、民主党政権に対して「あの悪夢のような」なる最悪の形容詞をつけた手前、安倍晋三は民主党政権の全ての政策とそれぞれの実施状況を民主党が反省の対象としなければならないことを証明し、併せて自民党政策の全ての政策とそれぞれの実施状況に関して何ら反省点がないことを証明しなければならない。

 いわが民主党政権3年3カ月間の全ての政策を俎上に載せて、欠点のみしかないことを証明、自民党政権の全政策をバラ色に染めることができる説明を展開しなければならない。証明しないままに「あの悪夢のような民主党政権が誕生した」と、民主党政権の全てをひっくるめて否定するような発言――全否定発言を口にする資格はない。

 いわば「あの悪夢のような民主党政権が誕生した」と全否定することは、翻って、自民党政権を全肯定していることによって可能となる。全肯定とは自己絶対性の確立に他ならない。自己絶対性は自民党政権+安倍晋三政権性善説を意味することになる。一点の反省点もない、一点の非もないことになる。これ程の思い上がり、これ程の独善性は安倍晋三の持ち味なのだろう。

 例え部分的にでも否定しなければならない政策があることを認めて、その点を反省しているなら、自民党政権を全肯定することはできないし、翻って、民主党政権を全否定することも不可能となる。

 ところが安倍晋三は「あの悪夢のような民主党政権が誕生した」の発言の妥当性が問われていることに気づかずに、頭も異常、精神も異常に出来上がっているらしく、「言論の自由」の問題にすり替えている。発言の妥当性と言論の自由を峻別できないこの独善的な詭弁は安倍晋三が持って生まれた才能の為せる技なのだろう。

 そして安倍晋三はいつものように得意としている経済統計を持ち出す常套手段で安倍政権、あるいはアベノミクスの全肯定をひけらかす試みに入る。自身が自己性善説を打ち立て、自己絶対性を振り撒いていることには気づかない。こういったことをする性格傾向を自己愛性パーソナリティ障害(ありのままの自分を愛することができず、自分は優れていて素晴らしく特別で偉大な存在でなければならないと思い込むパーソナリティ障害の一類型「Wikipedia」)と名付けられている。

 「ありのままの自分を愛することができず」とは、ありのままの自分を受け入れることができないことを言う。

 アベノミクスの経済統計の殆どはアベノミクス政策からの由来ではなく、日銀の異次元の金融緩和由来である。円安と株高で大企業が大儲けした。そこへ持ってきて、自民党の少子化対策が満足に機能しなかったことからの労働力人口の減少で人手不足が発生、そのことを受けた有効求人倍率の全都道府県1倍超えであり、5年連続で今世紀最高水準の賃上げ、あるいは日本訪問外国人観光客6年連続過去最高更新等々のその他の統計値ではあるが、一面の事実であって、全面的な事実ではない。

 円安によって輸入生活物資の高騰、輸入エネルギー資源の高騰、これらの影響を受けた国内生活物資の高騰というマイナス面も抱えることになった。だから、5年連続で今世紀最高水準の賃上げが事実であったとしても、物価高騰が賃金上昇に追いつかずに個人消費の伸び悩みという状況が恒常的に生じることになって、アベノミクス景気が最長を記録したと言われていても、結果として実感なき景気を答とすることになっている。

 2014年12月14日投開票の総選挙を前にした2014年11月18日に安倍晋三はTBSの「NEWS23」に出演、番組が景気の実感を街行く人にインタビューした。4人の男性と2人の女性、合計6人共に景気の実感が持てないといった趣旨の発言をした。

 安倍晋三は例の如くに素直に認めることができずに事実を捻じ曲げて、実感ないと言わせるために選んだのではないかといったあらぬ疑いを掛けて、テレビ出演二日後の2014年11月20日に、「自由民主党 筆頭副幹事長 萩生田光一/報道局長 福井 照」の差出し人名で在京テレビキー局の編成局長、報道局長宛てに〈選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い〉なる文書を送りつけて報道介入を行った。

 NHKが2月9日から3日間行った世論調査で景気の実感を質問している。

 「景気回復を実感しているか」
 「実感している」8%
 「実感していない」66%
 「どちらともいえない」20%

 「実感している」8%は株で儲けているか大企業に務めているかのカネ持ち人種であり、「どちらともいえない」20%はそれなりに待遇のいい企業に務めているか、それなりに利益を上げることができている自営業の何れかであろう。

 要するに一般国民は当初から一貫してアベノミクス政策から景気の実感を感じることができないでいる。にも関わらず、安倍晋三は有効求人倍率はどうだこうだ、雇用は200万人増やしただ何だと、経済統計を滔々と述べ立てる。安倍晋三の景気の実態を素直に認めることができずに報道介入することも、経済統計でアベノミクス性善説を打ち立てようとすることも、自己絶対性に基づいた自民党政権+安倍晋三政権性善説から発した自己愛性パーソナリティ障害から始まっている。

 岡田達也が自民党政権時代から受け継ぐことになった重荷を背負って民主党政権を運営した部分があると言うと、いわば自民党政権にしても性善説だけで見ることはできない、反省点もあるはずだとの趣旨で発言すると、「皆さんに重荷を背負わしたっていうのはこれは分からない」とか、「重荷と言うのはなんですか」とノー天気なことを言っているが、これも自己性善説・自己絶対性の現れであって、自己愛性パーソナリティ障害の一つに当たる。

 誰かがヤジで自民党政権の重荷として「財政赤字」と指摘すると、ヤジに対して真面目に、顔には見せないが、ムキになって答弁している。しかも、「これはそれぞれ必要があって行ったことであって、漫然と行ってきたわけではない。それぞれですね、敢えてその赤字を覚悟しても、出さなければいけないというときもあるんですよ」と自己正当化の独善的な強弁を駆使している。バラ撒き財政、ムダな公共事業、地元利益誘導等々の言葉は全て自民党政権時代に生まれている。漫然と行なわければ、以上のことは成し得ない。自らの是非や正否を省みる自省心を持たないことも自己愛性パーソナリティ障害の一症例を示すことになる。

 痛いところを突かれたから、ヤジに答えざるを得なかった。

 民主党は自民党の地元利益導入の公共事業の反省に立って「コンクリートから人へ」のスローガンで、ムダな公共事業の抑制と人材への投資を打ち立て、ムダな予算を削る事業仕分けを導入した。決して、「悪夢」と言って全てを斥けることはできない。

 岡田達也が民主党政権としての福島の原発事故対応での反省点に言及すると、安倍晋三は「原子力政策についてですね、ああした過酷な事故が起こってしまったということについては、それは歴代の政権として、第1次安倍政権を含めてですね、それは反省をしております」と一応は反省しているが、「ああした過酷な事故が起こってしまった」と、さも偶発事故であるかのように述べている感覚は何の反省もなく、軽くて、安っぽい。

 なぜなら、岡田克也があとで発言しているように国会事故調の報告書を取り上げて、東日本大震災が発生して福島の原発事故を引き起こすに至った、その根源的な原因が2011年3月11日以前の歴代自民党政権時代の原発政策にあると指摘しているからに他ならない。

 岡田克也は原子力発電の規制と推進を同じ経済産業省の中に置いたこと、津波対策のための防潮堤の嵩上げ等の様々な提言を先送りしたこと、そして電源に対する対策が不備であったことを挙げている。

 内閣府設置の国家行政機関である原子力安全委員会は1990年8月30日に「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」を決定、その「指針27」には、「電源喪失に対する設計上の考慮」に関して、〈長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない。

 非常用交流電源設備の信頼度が、系統構成又は運用(常に稼働状態にしておくことなど)により、十分高い場合においては、設計上全交流動力電源喪失を想定しなくてもよ
。〉との文言で、電源喪失は考慮する必要もない、想定もしなくてもよいと指針を示している。だが、全電源喪失が起こって、放射能物質の飛散、水素爆発、放射能汚染、福島県民の避難等々の重大事故をもたらした。

 それを、「ああした過酷な事故が起こってしまった」と深刻さもなしに表現できる、この軽さ、安っぽさは2013年9月7日のアルゼンチンでのIOC総会に於けるオリンピック東京誘致の最終プレゼンで、安倍晋三が「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」、「統御されています」を英語で「アンダーコントロール」と表現した、東京だけの安全に言及した軽さ、安っぽさ(=安易さ)に似ている。

 この"統御"にしても、これ以上悪くはならない、改善に向かっていくだろうと予想される状況での"統御"であって、2013年は安心・安全を保証できる"統御"ではなかったし、現在でも安心・安全が完全に保証できる"統御"ではない地域も存在する。

 自民党政権時代に原発政策に誤ちがあった以上、「総じて見れば、この原発事故のことについて皆さんの対応をどうこう言うつもりはありません」と言う資格はないはずだが、言うことができるノー天気も、自己愛性パーソナリティ障害に侵されているからこそであろう。

 岡田克也が原発事故の根源的な原因が国会事故調の報告書にどう書いてあるのか尋ねた。つまり国会事故調の根源的な原因に関わる見解を尋ねたのに対して安倍晋三は質問通告がなかっただの、総理として個人の見解を述べることはできないだの、「福島県民の心に添う」と何回となく発言している以上、頭に入れて置かなければならないのだが、「大体覚えてることを述べる立場には、内閣総理大臣なんですから」と見苦しい逃げの手を打って、知らないでいたことの薄汚い自己正当化を企んでいる。

 自己絶対性からの自民党政権+安倍晋三政権性善説に立った、自己愛性パーソナリティ障害の首相には国民の痛みを真に知ることはできない。人間的に一国の首相としての資格も資質も、どこにもない。


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