安倍晋三の国家的言論・思想統制欲求の反映か 前川喜平前文部事務次官中学校講演内容調査

2018-03-16 10:13:44 | 政治

安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定


「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 「NHK NEWS WEB」/2018年3月15日 19時15分)

 文部科学省の前川前事務次官が先月、愛知県の公立中学校(名古屋市立中学校だそうだ)から総合学習の時間の講師に招かれて、不登校や夜間中学校などをテーマに授業を行った。参加者は全校生徒のほかに地元の住民たち。

 今月(3月)1日、文部科学省の課長補佐からこの学校を所管する教育委員会(名古屋市教育委員会と言うことになる)宛てに前川氏が天下り問題で辞任したことや、出会い系バーの店を利用していたことを指摘、「道徳教育が行われる学校にこうした背景のある氏をどのような判断で授業を依頼したのか」等、15項目に亘って質問、文書で回答するよう求めるメールが届いたという。この15項目の中にはあればの話で録音の提供が含まれていたとのこと。

 このことだけで前川喜平氏に対する徹底的な検閲と監視の意思を窺うことができる。

 講演者に講演内容は全て任せるにしても、講演者はどのような内容なのか前以って学校側に話し、了承を得るのが常識的な手順であろう。学校側にしても、そこに希望する個別の内容が含まれていなければ、含めて欲しいといった要望を出すぐらいのことをするだろうし、話し合って決めることになるはずだ。

 記事が教育委員会は授業内容を事前に了承していたと伝えているから、中学校側が隠れてしたことではなく、あくまでもオープン姿勢で行った講演であることが分かる。

 そして講演の内容の良し悪し、ためになった、ならなかったは教師と生徒で話し合って考え、あるいは生徒同士で話し合って考え、あるいは親と生徒が話し合って考えたりして評価すべきことであって、この評価は国が決めることではなく、当然、国は講演の内容・評価から距離を置かなければならない。

 要するにそれぞれの責任で決めていくべきそれぞれの行為であるはずだが、個別の責任行為とすることができずに国が関与して責任行為の個別性を奪い、それを検閲と監視という手段でコントロールしようとする。

 そういった構造がここから窺うことができる。コントロールが過ぎると、戦前のように国家的統制の性格を帯びない保証はない。そのような危険性の萌芽を見る。

 中学校は文部省の要望を教育委員会から伝えられ、録音の提出については拒んだという。唯々諾々と従っていたなら、戦前の思想・言論の国家統制にほんの数センチ近づくことになる。

 最初はほんの数センチであろうと、それが責任行為の個別性を国が奪って自らの責任行為に取って代わろうとする端緒としない保証はなく、その数センチを許したがゆえに知らない間に国民は思想・言論の国家統制に雁字搦めとなった自らの姿に気づくことになりかねない。

 記事は、〈今の法律では、いじめによる自殺を防ぐなど、緊急の必要がある場合は文部科学大臣が教育委員会に是正の指示を出すことが認められているが、今回のように個別の学校の授業内容を調査することは原則、認められていない。〉、〈戦前の愛国主義的な教育の反省に立ち、国による学校教育への関与は法律で制限されている。教育基本法16条にも「教育は不当な支配に服することなく」と記されている。〉と文部省の調査を批判している。

 要するに国による言論・思想に対する検閲と監視の危険性の指摘となっている。

 記事は講演を聞いた主婦や男性、教育者、そして文部科学省の発言を伝えている。

 50代主婦「夜間中学校について、熱く語られたのが印象残っています。とても勉強になりました」

 男性「政治的な話は全くなく、和やかな雰囲気でした」

 文科省は「自ら考え、自ら決定する」教育を掲げながら、一方でその責任を蔑ろにする、あるいは奪おうとする。

 日本教育学会の会長で教育行政に詳しい日本大学広田照幸教授「国の地方の教育行政への関わりは、基本的に抑制的であまり口を出さないのが基本だ。学校の教育内容は教育委員会の管轄であり、何より個々の学校が責任を持って行うものだ。それに対し、明確な法律違反の疑いもないまま授業内容にここまで質問するのは明らかに行き過ぎだ。

 行政が必要以上に学校をコントロールすることになりかねず、現場は国からの指摘を怖れて萎縮し、窮屈になってしまうのではないか。国があら探しするような調査をかけることは教育の不当な支配に当たると解釈されてもおかしくない」

 国による「教育の不当な支配」とは思想・言論の国家統制を意味する。その走りとなりかねない懸念を持たざるを得ないということなのだろう。

 文部科学省「前川氏が文部科学省の事務方トップだったことや、天下り問題で辞任したことを踏まえ、講師として公教育の場で発言した内容や経緯を確認する必要があると判断した。正確性を期すために文書での確認を行った。問題があるとは思っていない」

 「天下り問題で辞任」も、出会い系バーの利用も、それをどう判断するかは講演を依頼した中学校の責任行為であろう。中学生が判断する能力と責任に欠ける年齢だと言うなら、教師の主導で判断の手助けをし、生徒たちの考える力と責任能力を育むのも教育の一環である。

 当然、「講師として公教育の場で発言」する資格有無の判断も個別的責任行為の範疇に属する問題であって、国がその資格を判断して「内容や経緯を確認する」、結果として統制への指向性を備えかねない権利は有していない。

 「正確性を期すために文書での確認を行った」と言っているが、口頭ではなく、文書を用いたのは国としてより重大視していることの表現であるはずだ。

 重大視に対応して思想・言論の国家統制への指向性も強まる。

 「問題があるとは思っていない」は検閲と監視の意思、あるいは思想・言論の国家統制意思の隠蔽に過ぎない。

 問題は安倍晋三の意思が働いた文科省の検閲と監視の意思、あるいは思想・言論の国家統制意思であるかどうかである。加計学園獣医学部新設問題では前川喜平氏から「行政が歪められている」と批判され、歪めている張本人を安倍晋三と目された。

 その恨みだけではなく、安倍晋三は元々戦前日本国家を国家の理想像とする国家主義者であって、思想・言論の国家統制意思を自らの血とし肉としている。

 安倍晋三と中川昭一はかつて200年代に従軍慰安婦に対する日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷を取り上げて番組を制作したNHKに対して政治的圧力を掛け、番組の内容を一部改変させたと訴えられた。

 東京最高裁判決では安倍晋三と中川昭一の政治的圧力は取り上げられず、東京高裁判決を破棄し、原告の請求を退ける逆転判決を言い渡したが、高裁判決では、〈数十人の右翼団体が一審被告NHKの放送センターに押し掛け,本件番組の放送中止を求める抗議行動を行〉い、〈一審被告NHK総合企画室の担当者らは,古屋圭司,平沢勝栄,荒井広幸ら自民党の複数の国会議員と面談して, 本件番組について説明し,同月29日には野島(NHK総合企画室担当局長)も,中川昭一国会議員(に呼び出されて,本件番組内容を批判され〉、〈事前に面会を約束した安倍晋三官房副長官と首相官邸内にある官房副長官室で面会し〉、〈安倍官房副長官は,本件番組に関連していわゆる従軍慰安婦問題の難しさや外交について持論を展開した上で, 一審被告NHKに対して公正中立を求めた。安倍官房副長官が公平公正な番組にすべきであるとの意見をして干渉したことにより, 一審被告NHKは,その面談直後から,その意向に沿うように,松尾及び野島の主導により本件番組の改編を繰り返した。〉(文飾当方)と事件の経緯を述べている。

 安倍晋三は「公平公正」という口実のもと、2014年12月の総選挙でもテレビ局に対して報道の自由に干渉している。選挙の前の月にTBSの「NEWS23」に出演、番組が取り上げた街の声の殆どがアベノミクスに反対すると、「街の声ですから、皆さん選んでおられると思うんですよ」とさもテレビ局が情報操作してるかのように言い、そのたった2日後に安倍晋三の側近・太鼓持ちである「自由民主党 筆頭副幹事長 萩生田光一/報道局長 福井照」の差出し人名で在京テレビキー局の編成局長、報道局長宛てに番組報道の公平・公正・中立を求める文書を送りつけているのだから、安倍晋三の意思から発した報道の自由に対する干渉であることは否定できない。

 内容は出演者の発言回数や発言時間の平等性、ゲスト出演者の選定の平等性、特定の立場からの質問が集中することの禁止、街角インタビューや資料映像等使用に於ける一方的な意見の偏りの回避等、事細かに規制する内容となっていて、要するに安倍政権批判を抑える欲求を持たせたテレビ報道への介入であって、このような介入を以ってして公平・公正・中立だとしている。

 文科省の今回の前川喜平氏の講演に対する市教育委員会と中学校への検閲と監視の意思、あるいは思想・言論の国家統制意思を孕んだ干渉が安倍晋三のこれらの精神性の反映であるとしたら、空恐ろしいことが起こりつつあると見なければならない。

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