ヴィチェンツァの郊外にある アンドレア・パッラーディオのもう一つの傑作建築を見に出かけた
バスで約15分 目的の「ラ・ロトンダ」は1567年に完成した別荘だ
施主の名前を取って ヴィラ・アルメリコ・カプラとも呼ばれる
ロトンダとは円形のことを指す言葉なので 丸い建物かと思っていたが
見ると形は四角形 ただ上方のドームの円さが目についた
四辺はいずれも大階段に囲まれ 6本のイオニア式列柱が並ぶ
装飾は少ないが統一性と調和という点では 他のパッラーディオ建築と共通する感じだ
日差しの強い外から 少し薄暗い内部空間に身を置くとすぐ あれ!と驚くことがあった
奥の部屋からドアを開いて おしゃれな服を着た少女が顔を出し
「こんにちは」と 挨拶している 目まいのような一瞬だった
もう一度見直すと その少女は壁に描かれた だまし絵だった
少女だけではない 半分開かれたドアそのものも壁画の一部
あの部分全体が 全く通行することの出来ない壁だったのだ
多分この絵は18世紀のヴェネツィアで大活躍した ティエポロの作品だと思う
彼は聖堂の天井画に仰視法を用いて 平面に大きな奥行きを感じさせる作品をよく残しているが
このドアの少女も 彼独特の手法をいかんなく発揮して仕組んだだまし絵に違いない
だまされたら 悔しいとかこの野郎とかといった感想を持つのだろうが
この少女の絵は「だまされてうれしい」と思わせる心躍るものだった