2025年度予算は3月31日の衆院本会議で成立した。
政府与党
が目指す年度内成立は実現したが、今回の予算審議の過程をどう見るか。
筆者は財務官僚として長年予算審議を見てきたが、今年ほど異例なものは見たことも聞いたこともない。
まず衆院は少数与党であるので、どこかの政党と組んで25年度予算を衆院で成立させる必要がある。
結果として日本維新の会を巻き込んで衆院で予算を修正し、3月4日に成立させた。
もっとも、こうした衆院での予算修正はこれまでも前例がある。
しかし、驚いたのは衆院での成立直後、石破茂首相が高額療養費の引き上げを凍結したことだ。
凍結自体は悪くないが、衆院予算委員会では徹底的に否定し、修正に含めなかったのにもかかわらず、修正案が衆院で可決され、議論が参院に移る時にひょう変した。
これには驚いた。
衆院での修正時に、引き上げの凍結もやっておくべきだった。
そうした誰でも分かる話をしなかったので、参院で予算修正が必要になった。これは聞いたこともない失態だ。
参院でも予算修正となると、再び衆院で審議する必要が出て普通に考えると、25年度予算の年度内成立はかなり苦しくなるはずだった。
となると、新人議員への商品券配布問題も相まって石破政権の重大な責任問題になる。
ところが、ここで立憲民主党が衆院での徹底審議をやらずに、政府与党にすり寄り、年度内成立に協力的になったのだ。
もちろん、
立民としてはここで石破政権に降りられるより、延命させて夏の参院選まで石破政権のままの方が戦いやすいというもくろみだ。
自民党内も25年度予算が年度内成立すれば、そのミスをとがめがたく、しかもポスト石破でまとまっていないので、「石破降ろし」もできない状況だ。
この騒動は端から見ていても不思議であるが、年度内成立が決まった最後の最後にも波乱があった。
石破首相が3月25日「予算が成立したら、強力な物価高対策を検討する」と言ったのだ。
こんな発言をすれば、参院で審議中の25年度予算の再々修正が必要で、今度こそ衆院での再々修正で年度内成立は不可能となる。
石破首相は予算の手続きについて何も分かっていない人ということが完全にあらわになった。不適切な政権運営、失言や場当たり対応で首相失格にもかかわらず、今でも首相を続けているのが不思議なくらいだ。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)