少数派シリーズ/社会問題
晴れ着業者逃亡から見えてくる成人式の在り方と18歳成人式では大学受験直前
ブログを移転したため、投稿日と記事の日時・状況と整合性がありません。
■実質の被害者は7~8割に達する既に先払いした来年・再来年予定成人

2018年1月、横浜市を中心に、晴れ着(振り袖)販売・レンタル・着付け業者の「はれのひ」(篠崎社長)が、突如、雲隠れしてしまいました。成人式当日に晴れ着を着られない、あるいは同業者やボランティアの協力で、辛うじて難を逃れた方もいました。こうした不運な女性が、300人以上もいたのは報道の通りです。倒産するなら、せめて成人式が終わってからにできなかったものでしょうか? 悪質な旅行会社「てるみくらぶ」と同じ体質で、商売対象(飯の糧)にしてきたお客への配慮・責任の欠片も見られません。深刻なのは、被害は着られなかった今年の方だけに限らず、全体の7~8割を占める既に先払いした来年・再来年予定の成人なのです。被害の大きさに消費者庁や横浜市などの地方自治体も乗り出し、相談窓口や対策を講じています。金融専門家は、クレジット支払いの場合はカード会社に申請すれば、以後の支払いはストップできるとしています。しかし当日着られなかっただけでなく、振り袖を購入した女性には現品が届かず、母の形見や母が着た振り袖を娘が受け継ぐ形で預けた大事な着物も所在不明のままです。

被害は大きくても、着付け会場になった横浜のホテル・呉服店の機転がなければさらに拡大するところでした。ホテルには「はれのひ」から会場使用料の支払いがなされていないことから、成人式前夜、最悪を考慮し同じ会場を使用する晴れ着業者に協力を求め、同業者を通じ契約の呉服店に支援拡大を依頼していたそうです。意気に感じた呉服店も、晴れ着用意・着付けを無料奉仕にして急遽協力体制を取りました。ところで同業者は、数年前から「はれのひ」に異変を感じていたようです。会社設立当初は、はれのひ社長がマンションを購入したりベンツを乗り回していたのに、3年前から赤字が続き、直近半年は従業員への給料が未払いでした。さらには複数の呉服店への着物代の未払いも数千万円あり、2年前の時点で6億円以上の負債があることが判明しました。また来年・再来年予定者にも、早い入金を迫っていたようです。かなり前から既に破綻しているにも関わらず、偽装経営したことは悪質な「詐欺行為」です。金融専門家は、全て前金システムなのに莫大な負債があるのは、何か不正があったのではと推察しています。
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追記/投稿日夕刻・以降】分かっているだけで、被害総額は3億円弱。大学卒業時の袴レンタル無料などの特典を付けて、前払い(前金)を促進させていた。
■“晴れ着を着るのが夢” (晴れ着ありき)の現在の成人式に苦言

もちろん被害に遭われた方には、気の毒に感じます。誤解なきよう最初に申し上げますが、一般論としてこの事件から見えてきた成人式の在り方と、18歳成人になった際の懸念を指摘します。例年は酒による大暴れ、世の中を舐めたバカ成人・たむろする不良ガキの報道ばかりされ、成人式のTVニュースが不愉快で嫌でした。もちろん大多数の成人が、真面目に式に参加しているのは言うまでもありません。被害が拡大している折り、かつ遠い昔に成人式を終えた投稿者は、時代感覚がヅレて顰蹙を買うかもしれませんが、現在の在り様に次項以降いくつか苦言を申し上げます。

被害に遭われた女性は、振り袖購入あるいはレンタル、着付け代その他諸々で、30万円から100万円にも及んでいました。気に入った晴れ着が着たい、式直前の時間に着付け・化粧したいことから今や1年前からの予約はザラ、2年前からする方も多いそうです。また最近の結婚式と同様に、半年から数か月前に「前撮り」(記念撮影)します。それが現在の常識でも、何だか、段々と着飾る風習、華美・大袈裟になってきたように感じます。今や成人式出席の趣旨は放り出し、ただ「晴れ着を着るのが夢」(出席目的が晴れ着ありき)の女性が多いと聞きます。人生1度限り・乙女心は分かりますが、何かおかしい気がします。例えば100万円は本人の積み立て、あるいは親御さんが払うのか分かりませんが、これから長く続く人生上で使った方が価値があると感じます。次項で説明しますが、晴れ着も「拡大する格差」の象徴になってきたようです。
■晴れ着を着ないと出席しにくい雰囲気を自治体自ら戒めろ!

言いたかった2つめは、世の中には貧しくて晴れ着が着られない女性も存在します。地方自治体は普段から格差解消と言いながら自前の会場では、積極的に「普段着で参加を」とは呼び掛けしません。投稿者が出席した昔は、オメカシしない洋装の女性も結構いました。自治体によっては、普段着で出るよう促した時代もありました。ますます貧困格差が生じる中、晴れ着を着られないばかりに、成人本人を始め親御さんを泣かせることがあってはなりません。仲間に加われず、友人関係がギクシャクするのは気の毒です。せっかくの1度だけの成人式なのですから、華美にならず誰でも引け目を感じず気軽に出られるよう、自治体自ら真剣に考え戒めるべきです。それが本当の成人式と考えます。
■ 「18歳成人」 になったら成人式は大学受験直前 参加者激減が予想される

3つめは、慣れない晴れ着を着てただでさえ足元がおぼつかないのに、なぜわざわざ雪や天候の悪いこの時期に成人式を行うのでしょうか。全国、いくらでも良い季節があります。投稿者は先回りして考えるのが癖で、4つめ・懸念することは「18歳成人」が成立した場合です。18歳選挙権は既に施行されていますが、今のところ「18歳成人」は民法を改正するなどして早くて2022年からだそうです。そうなると、大学受験を目の前に成人式をしなくてはなりません。1分でも時間が欲しいこの時期、さらには雪や天候が荒れて風邪を引いたらと思うと、成人式に出る方が激減すると考えます。翻って見れば、果たして成人式を行う意味・出席する価値はどうなのか考えさせられます。戦後始まった当初の目的・趣旨から遠ざかり、個人的には価値はないように思えます。ただ晴れ着を着ることだけが目的では、寂し過ぎます。極論すれば、もう現在の形式・時期の成人式はやめるべきです。あるいは若い方誰もが・自由に・お金も掛からず・楽しめるイベントを、天候の良い時期に行えばと考えます。
次号/晴れ着騒動には未婚女性の商品化や既婚差別・ジェンダー問題が潜んでいる