有機化学にっき

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Organometallics ASAP

2005-05-08 12:24:58 | 新着論文
Stereo- and Regioselective Pt(DVDS)/P(i-BuNCH2CH2)3N-Catalyzed Hydrosilylation of Terminal Alkynes

ホスファトランを用いたアルキンの位置選択的ヒドロシリル化。
アイオワのVerkadeのホスファトランです。近年になって嵩高い電子リッチなホスフィンの発展に伴い、ホスファトランを同様に応用しています。昨年はAldrichimica Actaにレビューが載っていて、ホスファトランの電子的、立体的なチューニングを精力的な研究の流れがわかります。ホスファトランが研究対象ということもあり、アプリケーションにおいては多用されるホスフィンの後追いという感があり、ホスファトランならではという反応がまだ見つかっておらず、P(tBu)3の代用という使い方に見えるのが残念です。
今回もPt触媒とホスファトラン配位子を組み合わせ非常に高い(E)選択性でビニルシランを与えていますが、既知の反応の配位子を変えただけに見えます。
このグループは文章が非常に巧いです。研究背景のイントロダクション、またこれまでの研究例に対して、余地や問題があるといちゃもんのつけ方が巧く、じゃあホスファトランで解決したのかな?と追っかけていくと、クロスカップリングの触媒に用いた場合では、この複素環での報告は初めてだとか、条件がこの面で勝っているという風に利点をアピールしつつ、うやむやになって終わります。今回もPt系では室温、短時間で反応が完結する利点を述べていますが、Rh, Ruに比べてどのようなメリットがあるのかは不明です。
ホスファトランの設計からブレークスルーがおきてアトランならではの面白い性質が見つかることを楽しみにしています。

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2 コメント

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はじめまして (のほほん研究者)
2005-05-09 22:58:43
有機化学でblog検索して渡り歩いてきたものです。まさかこんなところに同業者がいるとは世界も狭いものですね。僕はマスター卒で大学(院)時代天然物の全合成の一部をやっていました。今就職して幸運なことに医薬中間体の合成研究にとりくんでいます。大学の先生にはドクターに行くよう薦められたのですがその当時なかなかその一歩が踏み出せませんでした。今考えるとそういう選択肢もよかったのではないかと思っています。

 読みやすい文章だなあと思いました。これからもちょくちょく拝見しますのでよろしくおねがいします。
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コメントありがとうございます (fuzi0)
2005-05-10 21:38:28
のほほん研究者さん、コメントありがとうございました。

製薬会社は私の先輩も何人か勤めております。就職活動を、自分で行い、また後輩を見ていますが、大学で学んだことを活かせる職に就ける人は少ないなぁと思います。仰られる様に活かせる合成研究に従事できていることは幸運だと思います。

読みやすい文章とのこと、ありがとうございます。現状では、このblogを自分の考え、方向性をまとめるために使っています。そのため、どのような人を対象にした内容にするかが定まっていないこと、時間的な問題の二点があるため、スキームを使ったり、予備知識を前提としないで作っているところが問題と捉えています。コメントを頂けると、アウトプットの方向性が定まりますので、こちらこそ宜しくお願いいたします。
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