有機化学にっき

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JACS ASAP

2006-07-25 22:22:53 | 新着論文
Highly Efficient Alkylation to Ketones and Aldimines with Grignard Reagents Catalyzed by Zinc(II) Chloride

Grignard試薬に触媒量の塩化亜鉛(コマーシャリーなれベルで精製が不要とのこと)を加えることで、系中でトリアルキル亜鉛アート錯体を発生させ、ケトンを効率的に(還元やエノール化を抑制し)三級アルコールへ。アルドイミンへの付加も報告。

名大石原先生のグループ。亜鉛アート錯体の低い塩基性に着目して選択的にケトンとアルドイミンへの付加を報告。100mmolスケールでも適用ができて、塩化亜鉛は精製の必要がないというインパクトある仕事です。1,4付加には銅を触媒量入れる手法がありますが、不飽和でない選択性を気にしない、1,2付加で触媒量のadditiveを加えること=今回の仕事がやられていないことにも驚きました。どこかで誰かがやっていてもよい気がしますが。

機構が面白く、亜鉛トリフラートでは効果が無いとのこと。機構は推定で、Mgがケトンを活性化しつつ、亜鉛上のアルキルが六員環遷移状態で付加する機構を提出しています。スペクトルや計算で検討していくのも面白そうな機構です。

理研の内山先生がアート錯体を用いたピナコールカップリングや触媒的還元を報告していたのを思い出しました。配位子の違いで反応性がころころ変わったり、塩基性が非常に弱いなどアート錯体面白いですね。
遷移状態が推定のように固定されているなら、(内山先生が、オレフィンかアルキンのシリル化で、BINOL使っていた系を報告していた気がするので)亜鉛上の配位子を選んで不斉付加ができると面白そうですね。


ケトンへのGrignard付加、還元体が得られることは知識として知っていたのですが、実際に行ったことはなく、ベンゾフェノン-エチルGrignardで70%近くも還元体が生じるのは驚きでした。