ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

ガラスの器(5)

2008-03-21 | ガラスの器/ スイート・ホーム・シカゴ
その男は、香水を売る商人でした。彼は、買ってきたばかりのその蓋付きの瓶に、自分が扱っている香水の中で、最高級のものを入れました。

それは、新しくブレンドされたばかりの最新作でした。


彼は、その香水を入れて、その蓋付きの瓶を店頭に置きました。そこには、とてつもない高額な値段がついていました。


一人の紳士が店にやってきました。そして、その瓶を手にしました。

「これは上等の香水ですね。これまでに、こんな上品な香りに出会ったことがない。」

「ありがとうございます。私の扱っているもの中で最高級のものです。」

「ぜひ、これをいただくとしよう。箱に入れて、きれいな包装紙をかけてもらえますか。」

「できますとも。お好きな色のリボンもおかけしましょう。」


その紳士は、その香水を奥さんの誕生日にプレゼントしました。

 奥さんは、その香水を大変喜び、とても大切に使いました。

  それでも、次第しだいに、瓶のなかの香水は、減っていき、

   やがて、瓶は、からっぽになりました。


けれども、奥さんは、その瓶を捨てたりしませんでした。奥さんは、その瓶がとても気に入っていましたし、それに、もう香水が一滴も入っていないのに、瓶は、その香りを持っていたのです。

奥さんは、ずうっとずうっと、その瓶を大事に大事にしました。

(週末は、このストーリーから、人生の知恵をまじめにウンチクります。)