熱いエスプレッソを飲みながら、もう一度、チケットを確認した。何度見ても、シングルだ。もう2時間もしないうちに、飛行機は離陸する。そしたら、今度いつこの都市に戻ってくるのか、わからないのだ。
そう思うと、改めて、ナーバスになってきた。気持ちを落ち着かせようと、またコーヒーを口にした。
一人の若い男性が、コーナーの席に座った。彼は、少し落ち着かない様子だった。彼も、シングル・チケットを手に、飛び立とうとしているのだろうか。それとも、初めての飛行機の旅に緊張しているのだろうか。そんなことを勝手に想像した。
彼は、大きく息を一つすると、目はコーヒーを見つめたまま、思い余ったように、静かに、とうとつと話し出した。
「必ず・・、必ず、戻って来て欲しい・・」
彼の声は、店に流れているMTVの音にかき消されて、あまりよくは聞こえなかった。
「僕が君をこの都市で待っていることを・・覚えていて」
人の話を盗み聞きしようとしたわけではないが、今度は、はっきりと聞き取ることができた。
「帰って来ると・・・僕に、約束して欲しい」
彼の目は、あいかわらず、手に握られたコーヒーに注がれたままだった。独り言にしては、あまりにも真剣だ。
(つづく)
そう思うと、改めて、ナーバスになってきた。気持ちを落ち着かせようと、またコーヒーを口にした。
一人の若い男性が、コーナーの席に座った。彼は、少し落ち着かない様子だった。彼も、シングル・チケットを手に、飛び立とうとしているのだろうか。それとも、初めての飛行機の旅に緊張しているのだろうか。そんなことを勝手に想像した。
彼は、大きく息を一つすると、目はコーヒーを見つめたまま、思い余ったように、静かに、とうとつと話し出した。
「必ず・・、必ず、戻って来て欲しい・・」
彼の声は、店に流れているMTVの音にかき消されて、あまりよくは聞こえなかった。
「僕が君をこの都市で待っていることを・・覚えていて」
人の話を盗み聞きしようとしたわけではないが、今度は、はっきりと聞き取ることができた。
「帰って来ると・・・僕に、約束して欲しい」
彼の目は、あいかわらず、手に握られたコーヒーに注がれたままだった。独り言にしては、あまりにも真剣だ。
(つづく)