ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

スイート・ホーム・シカゴ(4)

2008-12-11 | ガラスの器/ スイート・ホーム・シカゴ
私は顔は動かさないようにしながら、目だけを彼に向けた。すっかり立派な青年になっていて、体格も顔つきも変わっているが、少年だった頃の面影が、目のあたりに残っている。それに、とつとつとした、はにかんだ、この話し方。間違いない、彼だ。

「君と離れてからも、君のことを忘れたことは、一日もない」

何年ぶりだろう。ハイ・スクールに上がるときに離ればなれになって以来だから、7、8年会っていなかったことになる。

「最後の最後になってしまったけれど・・こうして、僕の気持ちを伝えられてよかった」

カレッジの友だちの中には、同じジュニア・ハイだった人が何人かいたので、きっと彼らから、私の帰国のことを聞いたに違いない。

「君が、まったくいなくなってしまうなんて、僕には想像できない」

私が帰国することとなって、初めて、彼は、彼にとっての私の存在の意味に気づいたのだ。

「いつ、とまで約束して欲しいとは言わない。でも、必ず、僕のいる、この都市に帰ってくると・・・約束して欲しい」

彼は、いつまでも私のことを待ってくれるつもりなのだ。私の気持ちを、大切に思ってくれている。

「君が戸惑っているのはわかっている。でも、僕には、君の直接の言葉が必要なんだ・・君が行ってしまう前に」

(つづく)