旅人は、大きく深い穴のドロ沼の中にいました。どんなにがんばっても、この穴から出られませんでした。だれも、自分をこの穴から救い出すことはできませんでした。深い絶望が旅人を襲いました。自分はこのドロ沼の中にいるしかないのだろうか、そんな思いになってきたとき、
穴の上で、声がしました。
「あぁ、ここにいたのか。やっとみつけた。安心しろ、もう大丈夫だ。助けてやるからな。」
旅人は言いました。
「この穴から助けて出してくださるんですか。ご親切に。ありがとう。でも、ご覧のとおり、ドロだらけです。」
その人は、穴の中を覗き込み、
ドロの中に浸かっている旅人を見ました。
そして、言いました。
「う~ん。ほんとに、頭の先から足の先までドロドロだな。そこにいたら、いつまでたっても、ドロだらけのままだ。まずは、そこから出てこないとな。」
旅人は、言いました。
「でも、僕は、自分ではこの穴から出る力がないんです。とても高くて、飛び上がれません。それに、穴の中には、僕を押し上げることのできる人は誰もいないのです。」
(つづく)
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穴の上で、声がしました。
「あぁ、ここにいたのか。やっとみつけた。安心しろ、もう大丈夫だ。助けてやるからな。」
旅人は言いました。
「この穴から助けて出してくださるんですか。ご親切に。ありがとう。でも、ご覧のとおり、ドロだらけです。」
その人は、穴の中を覗き込み、
ドロの中に浸かっている旅人を見ました。
そして、言いました。
「う~ん。ほんとに、頭の先から足の先までドロドロだな。そこにいたら、いつまでたっても、ドロだらけのままだ。まずは、そこから出てこないとな。」
旅人は、言いました。
「でも、僕は、自分ではこの穴から出る力がないんです。とても高くて、飛び上がれません。それに、穴の中には、僕を押し上げることのできる人は誰もいないのです。」
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