ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

ドロ沼からの脱出(3)

2007-10-17 | 放蕩息子Part2
旅人が困っていると、穴の近くを、人が通っていることに気がつきました。旅人は、穴の下から、上にいる人に聞こえるように、大きな声で言いました。

「どうやったら、この穴から出られるでしょうか?」

その人は、ビックリして、答えました。
「おい、なんてこった。この深い穴の中に落ち込んだのか。それは大変だな。でも、大丈夫。出る方法を教えてやろう。」

旅人は聞きました。
「この穴から出る方法があるんですか。ぜひ、教えてください。」

その人は、かばんから一冊の本を取り出して、言いました。
「この本に出る方法が書いてある。この通りやれば出られるからな。がんばれよ。」
そう言うと、その人は、その本を穴の中に投げ入れて、しばらく旅人が本を読むのを眺めていましたが、そのうちどこかへ行ってしまいました。


その本にはいろいろなことが書いてありました。

(その壱)穴に落ちた原因:それがあなたの運命です。運命に逆らってはいけません。

(その弐)穴の中の状態:穴は大きく、また深く、さらに中はドロ沼になっています。他の人と協力してもけっして出ることはできません。

(その参)穴の中の過ごし方:ドロの流れに逆らわず、身を任せましょう。気の会う友だちを見つけ、ドロの中にいることは忘れて、楽しくやりましょう。

(その四)穴から出る方法:たった3つのことをするだけで、穴から出られます。

〓-瞑想して、穴の外にいる自分を思い続ける。やがて精神は、穴の外に出られるようになる。

〓-努力して潜在能力を呼び覚まし、高める。やがてカエルのようにジャンプできるようになり、体も穴の外に出られる。解説DVDを見て、毎日一時間トレーニングすること。(注意:やりすぎると、死ぬ危険があります)

〓-救いの壷、幸福の宝石を持つ。たくさん持てば持つほど、穴から出ることが容易になる。


本の後半は、カラーで印刷されたきれいなページになっていました。

ちょっと見ると、こんな感じでした。
  ・愛読者特別ご優待! 今、「救いの壷」を1つご購入いただくと、もれなく、もう1つ差し上げます。この機会をお見逃しなく。
  ・選ばれたあなたにだけ、特別プレゼント! 今、「幸福の宝石」を全種類12個をまとめて注文されると、ステキな特製ケースをプレゼントします。このケースに「幸福の宝石」を収めれば、パワー倍増間違いなし。

旅人は思いました。

「違う。まったく違う。僕は、本当に、この穴から出たいんだ。」



(つづく)


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