ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

ドロ沼からの脱出(2)

2007-10-16 | 放蕩息子Part2
旅人が困っていると、同じ穴の中に、他に人がいることに気がつきました。旅人は、その人に声をかけました。

「どうやったら、この穴から出られるでしょうか?」

その人は、ビックリして、答えました。
「やあ、新しい仲間だな。いいことを教えてやろう。どんなにがんばってもこの穴からは出られないよ。でも、俺たちが協力すれば、なんとかなるぞ。どうだい、兄弟、いっちょやるか。」

旅人は聞きました。
「協力って、どうしますか?」

「そうだな。どちらかが、どちらかの上に乗って、思いっきり飛び上がれば、たぶん、穴の淵に手が掛かる。で、ひとりが這い上る。今度は、下の人を上から引き上げる。なっ、いい考えだろう。」

まず、旅人が下になることになりました。旅人の上に、その人が乗ります。すると、その人の重みで、旅人は、どんどんドロの中に沈み込んでしまいました。穴の淵に手が掛かるどころか、かえって、もっと深くドロの中に沈み込んだのです。

その人は言いました。
「これはうまくいかなかったな。でもこれで、俺たちの協力が終わったわけじゃない。だろ、兄弟。よし、上に乗るのがダメなら、下から押し上げるっているのをやってみよう。」

旅人は言いました。
「たぶん、それって、さっきと同じだと思います。穴の中で、お互いがどんなに協力しても、出られないんですよ。でも、僕は、どうしてもここから出たいんです。」

旅人がそういうと、その人は、ぶつぶつ言いながら、ドロに身を浮かべて、プカプカと、どこかへ流れて行ってしまいました。

(つづく)


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