中国では銀行融資だけではなく銀行を通さない「シャドーバンキング」なる企業融資が増え、土地の価格は値上がりを続けていました。しかし、企業融資が滞り、新型コロナウイルスの陰に隠れて忘れかけている理財商品・シャドーバンキング問題が浮上しそうです。仮に中国国内で新型コロナウイルス第1波の感染が収まり、経済活動を再開しても、パンデミックが収束しなければ、モノを外国へ輸出できず、外貨を獲得できないのです。この影響は甚大で世界の航空業界等、日本の主力輸出産業も当然、つるべ落としのように巻き込まれることになります。世界的カオス状態には事態が収束するまで余りポジティブに考えず、新型コロナウイルス第2波の世界動向を注視する必要があります。いずれにしても、ワクチンが承認・供給され自国民の安全が確保される迄は主要各国の入国は制限されたままとなるはずです。経済の本格再開までは1年以上かかると覚悟する必要があります。
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中国では、3月末には感染者の増加に歯止めがかかってきたと発表がありました。予断は許しませんが、収束のメドが見えてくるかもしれないとのことです。
しかし、新型コロナウイルスの感染が収まったとしても、次なる恐怖が待ち構えています。経済の落ち込みです。封鎖された武漢は交通の要所で、多くの生産拠点が集まっています。
それ以外の地域でも春節休暇の延長や出勤の自粛などで経済活動が停滞しています。この影響がどれほどのものになるか、統計数値に表れてくるのはまだ先のことです。
しかも、中国の統計データは「実態を正確に反映していない」との疑念があり、発表されたとしても実態の把握が難しいのが実情です。ただでさえ不安な中国経済の先行きですが、実はもう1つ、大きな問題を抱えているのです。
中国はかなりのバブル状態
中国の株式市場は、2007年から2008年にかけて、そして2015年に大きなバブルとバブルの崩壊を経験しました。その後、株式市場では低迷が続いていましたので、バブルが起きているという印象は、あまり感じられません。
しかし、企業融資が増え、土地の価格は値上がりを続けており、近年でも株式以外はバブルの状況になっていたとの指摘があります。
2009年の世界金融危機に際し、中国では大胆な金融緩和と公共事業の拡大で乗り切りました。それに伴って国営企業や民間企業への銀行融資が拡大しましたが、それがあまりに大きくなると、政府によって規制がなされました。
すると今度は銀行を通さない「シャドーバンキング」と呼ばれる融資が拡大しました。「理財商品」という高利回りの金融商品を使うのですが、短期の借り換えを繰り返すもので、いつ資金ショートが起きてもおかしくない不安定な融資です。
企業の債務は、かつてバブルがはじけた頃の日本と同じぐらいの水準まで増加しています。
すでに2年ぐらい前からバブルの崩壊を不安視する指摘はありましたが、それでも今までのところは大きな金融不安は起きていません。今回の新型コロナウイルスでの生産活動の停滞で、一挙に金融不安とバブル崩壊が起きるのではないかと、筆者は心配しています。
世界全体もバブル気味
最近は程度の差こそあれ、世界的にバブル気味な状況だとも言えます。
世界金融恐慌とヨーロッパのソブリン危機以降、世界中の国々で金融緩和が実施されており、それが今でも続いているからです。低金利で資金を調達できるようになり、企業は安易に資金調達ができます。事業への投資だけでなく、株式や不動産への投資も増えています。
新型コロナの影響で株価が乱高下しているアメリカ・ニューヨーク市場は、この3年間株価の上昇が続いていました。金余りによるバブルだとの見方もあります。もし、実体経済以上に投資が拡大しているとしたら、何かの拍子にバブルがはじける可能性があります。
中国でバブル崩壊が起きれば、それが引き金になり、世界全体で金融不安が起きることも考えられます。世界のGDPに占める中国のシェアは15~16%。中国経済が不振に陥れば、その影響は小さくありません。
新型コロナウイルスが、隣国の韓国・日本だけでなく、ヨーロッパやアメリカ、中東にまで広がったように、中国発のバブル崩壊が世界経済に広がる可能性は低くないでしょう。
村井英一氏 国際公認投資アナリスト