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『名も無く豊かに元気で面白く』

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習近平が3年前に貶めた男――胡春華がむくむくと復権中!

2025-07-11 05:09:33 | 日記
習近平「異例の4期目」は微妙
2022年10月の第20回共産党大会前の「北戴河会議」でも、習近平総書記が前例に倣って、2期10年を終える20回大会で引退するか、それとも「異例の3期目」に入るかで揉めた。長老たちの「総意」は引退だったが、習総書記は「我不退!」(私は辞めない)と突っぱね、そのまま押し切った。
というわけで、次の第21回共産党大会は2027年秋なので、それより2年以上も前の今年の「北戴河会議」は、本来なら「強風」は吹き荒れないはずである。ところが、そうでもないようなのだ。
なぜなら、2年後の21回大会の最大のポイントは、習近平総書記が「異例の4期目」に突入するかどうかである。おそらく本人は、敬愛する毛沢東元主席や、「盟友」のウラジーミル・プーチン大統領のように、「生涯現役」を貫きたいと考えているだろう。
だが、長老たちの「総意」は、明らかに引退である。その意向は、3年前よりもさらに強まっているものと思われる。最大の理由は、中国経済の悪化に歯止めがかからないからだ。
だが、もしも習近平総書記が2年後に引退するのだとしたら、「ポスト習近平」をあらかじめ決めておかねばならない。2012年の18回大会で総書記に就いた習近平は、その5年前の2007年の17回大会で、すでに「序列6位の常務委員」に選出され、「ポスト胡錦濤」の内定を得ていた。
今年の秋には、「4中全会」(中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議)が開かれる予定だ。2年後の「習近平引退」を前提に考えるなら、「4中全会」で「ポスト習近平」を定めておく必要がある。壮絶な権力闘争が、2年前倒しして、今年8月上旬に行われる可能性があるのだ。
排斥された「ポスト習近平」胡春華
習近平総書記は20回大会で「異例の3期目」を勝ち取ったが、そのために用意周到な準備を怠らなかった。一例を挙げれば、その2年前の2020年9月30日に、全8章35条からなる「中国共産党中央委員会工作条例」を定めたことだ。
これはひと言で言えば、約1億人の中国共産党員の上に立つ約400人の中央委員会委員・候補委員は、頂点に立つ習近平総書記の指導を、一糸乱れず受けねばならないという内容だ。つまり共産党内の「完全一強体制」を、「党内ルール」として明文化したのである。
特に、第10条でこう定めた。
<中央委員会総書記は必ず、中央政治局常務委員会委員の中から出さねばならない>
この一文こそは、習近平総書記がどうしても入れたかったものだった。なぜなら、当時の長老たちの多くが「ポスト習近平」に推していたのは、中央委員会政治局委員の胡春華副首相だったからだ。
習近平総書記よりも10歳若い胡春華は当時、常務委員(トップ7)の下の中央政治局委員(トップ25)だった。そのため習近平総書記としては、「中国共産党中央委員会工作条例」を定めたことで、胡春華を常務委員に引き上げない限り、自分に取って代わるリスクはなくなったのだ。
そのため、2022年の20回大会の焦点は、習近平総書記が「異例の3期目」を続けるのかということと同時に、胡春華が常務委員に昇格するのかということだった。胡春華を推す代表格は、胡錦濤前総書記である。
そこで習近平総書記は、20回大会で「勝負」に出た。胡春華を昇格させないばかりか、中央政治局委員から、その下の中央委員(トップ205)へと蹴落としてしまったのである。
胡錦濤前総書記のバックアップ
ここで、胡春華の経歴を見ておこう。胡春華は、1963年4月に湖北省・五峰の農家に生まれた。「湖北の神童」と謳われ、16歳で中国最難関の北京大学中国文学学部に合格。首席で卒業した。
卒業後は、自ら志願して、「最果ての地」チベット自治区のラサに14年間勤務。そこで、チベット自治区党委書記(自治区トップ)を務めていた21歳年上の胡錦濤(後の)国家主席・共産党総書記)に見出された。
1997年から4年間、共産党の下部組織の共青団(中国共産主義青年団)本部(北京)勤務。続いて、2001年から2006年まで、再びチベットに勤務した。その後、2006年に上京し、共青団トップの中央書記処第一書記に就任した。かつて胡錦濤も共青団第一書記に就いており、すべては2002年に共産党総書記に上り詰めた胡錦濤のバックアップだった。
なぜ胡錦濤総書記は、これだけ長期間にわたって、富士山の山頂とほぼ等しい標高3600mのラサに、可愛い胡春華を「氷漬け」にしたのか。ある中国の関係者は、次のように教えてくれた。
「『革命第4世代』の代表である胡錦濤前総書記は、自分の権力基盤が固まり、『革命第6世代』の中心に据えようとする胡春華が、『革命第3世代』の代表である江沢民元総書記の一派に蹴落とされることがないと見極めるまで、胡春華を北京に戻さなかったのだ。胡春華がチベットにいる限り、江沢民は手を出してこないからだ」
この言葉を聞いて、私は「中南海」の権力闘争のすさまじさの一端に触れた気がしたものだ。
だが、胡錦濤政権が北京オリンピックを成功させた2008年、胡春華は名前の通り「春の華(はな)」を開かせた。河北省党委副書記を命じられ、翌2009年には、エネルギーのバブル経済に沸く内モンゴル自治区党委書記となった。

2012年の第18回共産党大会で、「革命第5世代」の習近平に総書記をバトンタッチした時、胡錦濤は胡春華を、党中央政治局委員(トップ25)に引き上げると同時に、広東省党委書記(省トップ)に据えた。広東省は、中国最大の経済力を誇る省であり、かつ省都の広州は、北京から2200kmも離れている。
それは、胡春華を広州に置けば、習近平新総書記に失脚させられるリスクも減らせるという「親心」からだった。実際、同じく「団派」(共青団出身者)の兄貴分(第一書記経験者)である李克強首相が、北京から胡春華広東省党委書記をフォローした。
胡春華に対する「見せしめ人事」
それから5年後の2017年秋に、第19回共産党大会を迎えた時、胡春華が常務委員(トップ7)に上がれるかどうかが焦点となった。上がれば、次の2022年の第20回共産党大会で、習近平総書記に代わって総書記(党トップ)に就く「内定」を得たに等しい。
この時は、胡春華を常務委員に引き上げたくない習近平総書記の方が、先に「勝負」に出た。19回党大会の3ヵ月前の2017年7月、胡春華と並んで「革命第6世代」のホープと言われていた孫政才中央政治局委員兼重慶市党委書記に、「腐敗分子」のレッテルを貼って失脚させたのである。別な見方をすれば、胡春華に対する「見せしめ人事」とも言えた。
これに震え上がった胡春華は、すぐに手を打った。前出の関係者は、こう述べた。
「19回大会の2ヵ月前の2017年8月、胡春華は習近平総書記に手紙を書いた。それは、『自分はまだ未熟者だから、常務委員になる資格はなく、引き続き地方や農村の仕事に邁進したい』という内容だった。
ただ、一つだけ要請した。それは、『(共産党中央委員会機関紙の)「人民日報」に、この4年数ヵ月の広東省の経済の発展ぶりについて、署名で寄稿文を書かせてほしい』というものだった。習近平総書記はこれを承諾した」
こうして『人民日報』(同年8月30日付)に、広東省の経済成長ぶりを綴(つづ)った胡春華広東省党委書記の署名記事が掲載された。そして19回大会は、胡春華の「不戦敗」となった。

必死のアピールも虚しく降格
胡春華は翌2018年3月、中央政治局委員のまめ、農村担当の副首相に就いた。4人いる副首相の3番手だった。
そこからまた4年以上、雌伏(しふく)の時を経て、2022年7月27日、今度は胡春華が「勝負」に出た。『人民日報』の6面に、紙面の5分の3も使った署名記事を寄稿したのだ。
自分が担当する「三農」(農業・農村・農民)問題に関する内容だったが、そこには「習近平」が登場すること51回! 「習近平総書記の『奥深い知恵と切々たる愛情』に基づいて……」などと述べ、習近平総書記を、まるで神のように崇め奉ったのだ。
私はこの記事を精読して、胡春華副首相の意図を理解した。「習近平総書記に絶対忠誠を誓いますので、李克強首相の後任に自分を選んで下さい」とアピールしたのだ。首相は共産党の序列ナンバー2だが、ナンバー2でなくとも、少なくとも常務委員に昇格させてほしいということだ。
だが、習近平総書記が取った態度は前述の通り、冷酷なものだった。胡春華は、205人の中央委員の一人に降格となった。正当な理由もなく、中央政治局委員から中央委員に降格となるなど、過去に前例がなかった。
党以外の公職としては、2023年3月に、政府への諮問機関である中国人民政治協商会議(政協)の副主席となった。政協自体が「お飾り機関」で、その副主席と言っても、23人もいて、その2番目だった。
そのため「中南海」では、「胡春華は終わった」と囁かれた。しかもバックに就いていた二人の大物――胡錦濤前総書記は体調悪化が取り沙汰され、李克強前首相は2023年10月に上海で急死した。
胡春華の「復権」が始まった
そんな胡春華が、今春からにわかに「復権」を果たしている。4月17日、新華社通信は、こんな記事を配信した。
<4月8日から17日まで、全国政協副主席の胡春華が代表団を率いて、ナイジェリア、コートジボアール、セネガルを訪問。ナイジェリアのアクパビオ上院議長、タジュディン下院議長、トゥカール外相、コートジボアールのモンベイ首相、ビクトガ国会議長、カファナ大統領ハイレベル代表、セネガルのファナール大統領、ウェンディヤナ国会議長と会見した。
胡春華は述べた。習近平主席は、中国アフリカ協力フォーラム北京サミットで、中国とアフリカで手を携えて、現代化の6大主張と「10大パートナー行動」を提唱。新時代の全天候型の中国アフリカ運命共同体を構築する新たなページを切り拓いた。中国は、習近平主席が3国のリーダーとともに達成した重要な認識と、フォーラム北京サミットの成果をしっかり推進し、中国アフリカの各分野での互利協力を深化させ、さらにうまく双方の国民に福を与えていく。中国人民政治協商会議は、そうしたことに貢献していくつもりだ>

いくら「習近平主席の功績」を前面に出しているとはいえ、いまの胡春華の立場で、国を代表して3ヵ国を訪問し、このような発言をすることは異例である。
ところが、翌月にも異例の行動が続いた。5月25日に新華社通信は、こう報じた。
<全国政協副主席の胡春華は、25日午後、中国にあるベトナム大使館を訪問。中国を代表して、ベトナムの前国家主席である陳徳良(チャン・ドゥック・ルオン)の逝去に、お悔やみを述べた>
こちらも、社会主義の友好国ベトナムの国家主席の死去なら、同じ国家主席の習近平が行って然るべきである。相手が現役でないとしても、韓正国家副主席や王毅外相など、国家を代表してお悔やみを述べる幹部は何人もいる。少なくとも、胡春華の立場で国家を代表することはありえない。
さらに6月にも、15日から18日まで、遼寧省を視察したことが19日に伝えられた。そして23日に、新華社通信がこう報じた。
<政協の第14期全国委員会常務委員会第12回会議が、23日午前に北京で開幕。「経済体制改革をさらに一歩深化させ、中国式現代化を推進する」ことを巡って、討論が行われた。中国共産党政治局常務委員で、全国政協主席の王滬寧が開幕式に出席した。(中略)
全国政協副主席の胡春華が開会式の進行役を務めた。胡春華は述べた。全国政協常務委員会のメンバーは、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想の指導を堅持し、第20回中国共産党大会と2中全会、3中全会の精神をふかくしっかりと貫徹していく必要がある。
この時の胡春華の「雄姿」は、CCTV(中国中央広播電視総台)のニュースでも放映された。中国では数少ない「白髪を気にしない政治家」なので、映像では目立つ。まさに、「胡春華復活」を印象づけるニュースだった。
次の注目点は、8月の「北戴河会議」で「胡春華待望論」が巻き起こって、秋の「4中全会」で「空席1名」の中央政治局委員に復帰を果たすか、もしくは常務委員に2段飛びするかだ。少なくとも、そうした方向へ向かう「流れ」は感じるのである。
中国政治は十年一日のようだが、内部のマグマは決して冷めていない。

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