石破首相は7日夜に行ったトランプ米大統領との電話会談で、米国の関税措置見直しに向けた交渉入りにこぎ着けたが、課題は山積している。米側が評価する交渉材料探しは難航が予想され、米国の交渉体制への不安も残る。協議に時間がかかれば、夏の参院選にも影響しそうだ。
専門家の一人は「会談の実施が遅かった。トランプ氏は(関税対応の交渉材料として)『農産物と自動車』とヒントを出している」と指摘。会談後もトランプ氏が日本の姿勢を非難しているとし、日本政府は早期に米国との交渉材料を提示すべきだと主張した。別の専門家は「トランプ政権は単なる(貿易)赤字減らしをやろうとしているわけではない」と分析。「米国が戦後の国際貿易体制を根本的に変えようとしていることを認識し、日本がどのように関わっていくか考える必要がある」と語った。
首相は8日、米関税への対応を協議する政府の総合対策本部で「トランプ氏と率直かつ建設的な協議を進めることを確認した」と述べ、電話会談の成果を強調した。しかし、交渉は前途多難だ。トランプ政権側が日本側と元々早期に交渉に入りたかった可能性もあり、出遅れ、無力感は否めない。政府は、日本企業による対米投資や日本の非関税障壁見直しなど米側の関心が見込まれる交渉材料を包括的に示したい考えだが、政府高官は「何がトランプ氏に響くかは、正直見通せない」と思考停止状態だ。
トランプ氏が主張するコメに対する日本の「700%」の関税など、実態と異なる批判も解消する必要がある。江藤農相は「論理的に計算してもそういう数字は出てこない」としているが、政府関係者は「電話会談でトランプ氏は、日本が不当な関税障壁を設けていると本気で思っているようだった」と振り返る。
ベッセント財務長官ら米側の交渉担当者の権限への懸念もある。政府内では「米政権内で強硬なトランプ氏にものを言える人がいなくなっている」との見方が広がっており、「交渉担当にどこまで裁量があるかは読み切れない」(自民の閣僚経験者)との指摘が出ている。
首相周辺は「夏の参院選までに見直しを勝ち取りたい」と期待を示すが、日米間の利害調整が難航すれば、当然無能内閣・与党への逆風となるだろう。
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