陳 満咲杜の「為替の真実」

陳満咲杜のFXブログです。ブログ引っ越ししました。新ブログはhttp://chinfx.blog136.fc2.com/

そんなのカンケーねぇ?(二)

2008年01月30日 02時03分14秒 | 市況の真実
事例としては28日、英ポンドに関する要人発言とその後の市場反応を挙げてみたい。

英ガーディアン紙が28日付けで、BOE(英中銀)の政策委員が「今後数カ月でBOEが大幅利下げを実施しなければ、英経済は減速するおそれがある」、「市場の先回りをする必要がある」などの発言を報道した。その影響で英ポンド/米ドルは1.9866から1.9730まで下げ、英ポンド/円は213.70から209後半まで急落した。上のチャートは英ポンド/米ドルの60分足図で、aの表示部分はこのユースが伝えられた後の下落幅を指している。

確かに政策委員は要人だし、発言自身がもっとも敏感な材料となる金利動向を暗示するもので、短期的における英ポンドの下落も納得できる。が、メイントレンドに焦点を凝らせば、「でもそんなのカンケーねぇ」と、経験豊富なトレーダーなら、すぐ直感できるだろう。なぜなら、図示のように、b(1.9644)とc(1.9792)を超えた英ポンドがすでにブル基調に転じており、少なくともスウィング・トレーディングの視点から英ポンドが上昇トレンドにいる、との判断を下せる。

この判断が正しければ、相場は証明してくれるだけではなく、トレーダーに仕掛けのタイミングも教えてくれるはずだ。図示のように、100時間線やEラインのサポートを確認できた上、変動率の視点からも130pipsを以って調整の完了(材料の出尽くし)の可能性が大きい、よって、ロングの好機と見なされるべきであった。その後、英ポンドが見事に反転し、1.9929の高値をつけていた。(執筆時点まで)

このように、ニュースなど材料を追って売買するよりも、冷静にトレンドを見極め、一時の値動きの「逆行」を利用すれば、リスクが限定される上、比較的に高いリターンを手に入れる。肝心なのは、ニュースなど材料の中身よりも、相場の反応を照らしながら、値動きのパターンを検証することにある。相場における値動きがすべての情報を織り込む形で形成されていくので、材料自身が「ノイズ」かどうかをすぐ判別できるのである。

相場は相場に聞け。真剣に耳を傾ければ、一日中、何回も「そんなのカンケーねぇ」という相場の呟きが聞こえるかもしれない。この「呟き」が多ければ多いほど、相場の方向はより鮮明になってくる。


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そんなのカンケーねぇ?(一)

2008年01月29日 18時17分26秒 | 市況の真実
相場の本質を見極め、メイントレンドを見つけ出せるかどうかはトレーダーにとって死活問題となる。が、現実では、為替ほどいろんなニュース(経済指標を含め)、うわさ及び要人発言に影響されやすいマーケットはないから、トレーダーも往々にして迷いがちで、悩みの種になっている。

この故か、一部個人投資者はファンダメンタルズを必至に勉強し、血眼となってニュースを収集、分析しようとする。努力自身は素晴らしいものだが、個人投資者ほど、「勉強すればするほど本質から遠ざかっていく」といったリスクに注意しなければいけない。なぜなら、森羅万象のファンダメンタルズに没頭すればするほど、情報量の多さと比率して、総合的な判断力を失われていく羽目になりやすいからだ。

そもそも、相場動向の決定要素は値動き自身の内部構造に依存している側面が大きく、ファンダメンタルズ分析のみでは、必ずしも相場の方向を見つけ出すとは限らない。このため、金融機関のエコノミストと大学の教授らはファンダメンタルズの分析をうまくできたとしても、相場で成功した話はあまり聞こえない。

当方の経験では、相場のトレンドをチェンジさせるほど重要性を持つニュースは少ない。言い換えれば、殆どの材料は短期的なインパクトしかなく、相場はいくべき方向にいく習性があるから、これらの材料の影響力も総じて短命的で、「ノイズ」になる可能性が高い。賢いトレーダーはこのような「ノイズ」を利用し、有利な取引チャンスを見出すことが多い。

つまり、経験豊富なトレーダーなら、ニュースなど材料及び短期的な市場反応を「本物」か、「ノイズ」かを見極める能力を有し、「ノイズ」であれば、いくら持て囃されても、「そんなのカンケーねぇ」と割り切れる上、逆に「ノイズ」によって形成された値動きを利用し、極めて有利な取引チャンスを手に入れる。次回は実例を挙げて説明したい。

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生き残りの真実(ニ)

2008年01月28日 18時01分48秒 | ポジションの真実
ゼロサム・ゲームにおける勝者になりたければ、一回の取引で元本に対する損失率をしっかり管理しなければならない。多くのスペシャリストは毎回容認できる損失額が元本の2%或いはそれ以下と主張している。まさに「生き残り」を優先させるロジックで、彼らはプロとして成り立った根本的な基礎である。

この原則に照らせば、一部投資者の「脇の甘さ」が浮き彫りになる。仮に100万円の元本を以って、1万単位のドル/円ポジションを建てた場合、2円の変動があれば、ほぼ2万円になるわけで、そのまま損失額であれば、即損切りし、取引を中止すべきであるが、現実では、20万、30万そこそこの証拠金で相場を張り、含み損が5、6万に達してもでも平気でいられる「アクティブ」な投資者が多くいらっしゃる。彼らは早晩相場から消える運命になろう。なぜなら、ただ一回の取引で元本の30%も損失させれば、次は43%のパフォーマンスを計上しなければ元本回復に繋がらないので、再起不可能といったリスクを確実に増大させることに。もっとも、損失を取り戻そうとした売買がさらに損を招くケースが多く観察されている。

一方、所謂「スワップ派」投資者らも基本的には同じ過ちを犯すことが多い。毎日確実にスワップ金利を貰えるものの、元本に対する含み損が30%以上といったケースがよく聞かれる。その上、含み損が膨らむ傾向にあれば、コツコツ貯めていたスワップ金利が到底損失額に追いつかないので、放置すれば、取り返しのつかない状況に陥るリスクが大きい。

このように、マネー・マネジメントの基本は元本に対する損率を常に一定の比率以下に抑えることにある。このため、元本に対するポジション・サイズの倍率(レバレッジ)が高ければ高いほど許容できるレートの変動率が低下していくので、トレーダーが取引を成功させる確率も次第に小さくなるのは自明の理である。

注意すべきなのは、100万円の元本に対する2%の損切りルールを守れば、損失金額は最初2万円の損失額に対し、2回目は1万9千6百円になるという計算だ。このように、元本の低減につれ、トレーダーのリスク許容度がさらに低下していくことになる。連続数回損を重ねれば、ウォーレン・バフェット氏の「損をしないこと」という言葉の重みも自然に分かってくる。

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「波乱の時代」こそジンクス重視?

2008年01月24日 18時09分57秒 | 相場の真実
前米FRB議長のグリーンスパン氏の自伝は『波乱の時代』とのタイトルで、目下の金融市場の状況を如実に表している。

このような「波乱」の市況においては、取引の判断を容易に下せない。例えプロのトレーダーであったとしても。この故か、ウォール街には、いろんなジンクスが存在しているそうだ。

当方として印象深いのは、以下のジンクスである。即ち、サプライズが発生した際、市場の最初の反応がその後の方向性を導いてくれるとのこと。波乱な市況であればあるほど、このジンクスが通用されるそうだ。

この通りであれば、一昨日米の大幅緊急利下げが発表された際の、為替市場の反応が大事であろう。よって、今後ドル/円を除き、メジャー通貨に対するドルの下落が続き、クロス円相場はやや上昇といった相場感が得られるかもしれない。

ちなみに、テロといった明らかに「売り」材料となるサプライズでは、このジンクスが通じない。好材料か、悪材料か、見方が分かれる時に真価を発揮するようである。

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ツー・ビッグ・ツー・レイト?

2008年01月23日 14時21分52秒 | 相場の真実
ドルインデックス 日足

昨日米FRBが0.75%の緊急利下げを実施、対円を除き、ドル全体が売られた。その分クロス円全体が上昇したが、皮肉にも一部の「スワップ派」投資者がやっとの思いで損切り、あるいはドテンして円買いした後のことだった。相場の神様は誠に意地悪である。

さて、FRBの決断に株式市場の評判が芳しくない。NYダウは一時460ドルの暴落となり、その後反発したものの、なおマイナス128ドル超の下げ幅を演じていた。

先週ブッシュ大統領の景気刺激法案に対する失望感から米株式が急落したが、その時の評判は「ツー・リトル・ツー・レイト」だった。つまり「小さすぎ、遅すぎ」である。同じ言い方とすれば、今回FRBの決定に対し、「ツー・ビッグ・ツー・レイト」との見方がマーケット関係者らが共有しているかもしれない。

要するに、緊急利下げがもっと早めに行われるべきだとの認識が一般的であるものの、利下げ幅にはショックを隠せない投資者が実に多い。想定を越えた利下げ幅の裏返しとして、危機の深刻さを物語っているだけに、背筋が凍る思いをした市場関係者も多いであろう。いまさらではないが、バーナンキ議長の手腕には疑問符が付く。

ある意味でバーナンキ議長は「貧乏くじ」を引いた人物だ、これからイバラの道を歩むことに。が、FRBへの信頼がなくなる、という事態に陥れば、それこそもっと深刻で、恐ろしい危機である。だから、当方が繰り返し指摘してきたように、危機とは人為的に避けられない経済現象で、その場の解決策で問題を先送りしただけでは、いずれより大きな危機と直面しなければならない。

ちなみに、今の状況を作り出した張本人のグリーンスバン氏はなんとサブプライム関連の金融商品の空売りで大儲けしたヘッジファンドの顧問に着任し、まるで全く責任のないような振舞いを続いている。氏に対する評判はこれから変わっていくであろう、今回の危機の進行度合とともに。因みに、氏は米金利が少なくとも3%まで下げると見ているそうだ。


ドルインデックスの日足を見ると、ドルの頭が低下傾向を続く100線に再び抑えられ、リバウンドがすでに終了し、今後安値を再更新していく、といったシナリオを浮上させた。この見方が正しければ、今年前半において、ユーロは1.5200あるいは1.5500、豪ドルは0.9400あるいは0.9900、円は101あるいは97のレベルへ打診する値動きもあり得る。

桜の満開とともに、円もわが春を謳歌するか。

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生き残りの真実(一)

2008年01月20日 12時30分14秒 | ポジションの真実
前の記事では、「生き残る」との言葉の意味合いがかなり重いと指摘したが、具体的にはどうなるかと聞かれると、あの株式投資の神様、ウォーレン・バフェット氏の言葉を思い出す。

氏に言わすと、投資に成功するために、もっとも重要な3つの原則を守らなければならない。即ち、第一、損をするな、第二、第一原則を忘れるな、第三、第二原則を忘れるな、である。

さすが投資の神様であるだけに、言葉が示唆に富むだけではなくユーモアもたっぷりである。リスクコントロールの重要性をいくら強調しても大げさではない、ということであろう。

儲かりたいから皆が相場に参入してくる。一方、皆が儲かるという相場は存在しない。特にゼロサムゲームの代表格としての為替相場では、損得において常に全体的均衡を保っているから、必然的に「少数派の勝利」となりやすい。だからこそ、如何に儲かるかを考えるよりも、如何に損をしないかを考え、行動したほうがよほど大事である。というのは、ゼロサムゲームでは、敗者でなければ、必然的に勝者となるから、常に相場に生き残ることが前提であれば、損失回避、即ち元本保全のほうがトレーダーの主要任務となる。

誰でもできる簡単な計算をしてみよう。仮に100万円の元本を持ち、数回の取引をして50万円の損失を被った。このケースでは、損失率は50%に達している。そして残った50万円を使い、また相場を張り、100万円まで増やすには何と100%の勝率を要求される。史上最高額を稼いだ投機家と言われるジョージ・ソロス氏さえ、平均パフォーマンスが35%前後であることに鑑み、100%のパフォーマンスを達成するには如何に困難のことかをおわかりになるだろう。

従って、元本に対する損失を抑えないと、トレーダーが取引すればするほど負けていく。理屈は明白だ、市場より大きな元本を持つ個人或いは集団はいないからである。逆説であるか、投機とギャンブルの根本的な違いは、一回の取引(賭け)において、投機は途中でやめることができる(損切り)に対し、ギャンブルはできないことにある。

この意味では、所謂「スワップ派の取引」がなぜ宿命的に負け組になるかを説明できる。つまり、スワップを享受する代償として、元本に対する損失率のコントロールを放棄しがち、ということに尽きる。


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ディーラーの真実

2008年01月16日 18時14分04秒 | FXの真実
記憶が定かではないが、FXで稼ぐ人はなぜ「1勝9敗」でも勝つのか?というタイトルの本がある。作者自身がディーラー出身で、ある意味ではディーラーの真実を語っている。即ち、世間の一般的なイメージと違って、専業トレーダーらは市況を読めるというよりも、リスクコントロール及び売買手法に長けているから、最終的に儲かるのである。

だから、別にディーラーだから彼らの予測が正しいとは限らないし、ディーラーだからこそ予測をしない、相場への対応のみに集中していると言われている。もっとも、予測とはアナリストの仕事で、ディーラーが予測に精を出したら、儲からなくなるかもしれない。このためか、欧米を含め、大手投資銀行及び証券会社が出しているレポートを社内のトレーダーらはあまり読まないようである。

日本では、三井住友銀行さんが「フォレックス・ウィークリー」を出しており、その中に「ディーラーに聞きました」という面白いコラムがある。内容は同行のディーラーらの予測と実績の比較表で、実際、ディーラーらの予測がよく外れていた、ということを続けて読めばお分かりになる。

但し、ディーラーらは予測が外れても全然問題ないし、取引に勝てばよい。言い換えれば、勝つためにストラテジーなど戦略の構築よりも如何に柔軟に市況の変化に対応し、適切なリスク管理を行うことの方が遙かに重要である。また、予測などストラテジーを重視し過ぎると、かえって取引のリスクを増大させる場合もある。

さて、当方の12月シグナルのデータでは、一回の取引の最大損失が14万5千円で、最大収益は41万6千円だった。平均損失額は77964円に対し、平均利益額は179791円だった。このように、損失と利益額の比率を一定の比率に保てば、取引の回数を増やせば増やすほどトータル利益を拡大させていく仕組みとなる。これこそディーラーが取引を生業としてやっていける「掟」であり、彼らの真実である。

BULLBEAR FXシグナルの11月の成績と比べ、12月の成績は惨憺たるものだったが、それでもマイナスにならなかったのは、「ディーラーの掟」を守っただけであった。為替のみならず、投資、投機の世界に生き残りたいなら、この「掟」をきちんと守らなければならない。

ちなみに、「生き残る」との言葉は投資の世界ではかなり重い意味合いを持つ。次回はリスクコントロールとポジション操作の視点から詳しく説明したい。

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相場見通しの検証

2008年01月14日 17時53分24秒 | 市況の真実
本日12月シグナルの検証を行うべきだが、市況が動いているので、とりあえずこの前の見通しを検証することに。   

ご存じのように、当方は一貫して「ドル高限定論」を展開してきた。昨年12月13日 既存ストラテジーを継続 にてドル/円108台、ユーロ/ドル1.5200台との目標を掲げた。

同日終値ではドル/円が112.33、ユーロ/ドルが1.4626とのレベルを記録していたが、当方と同じ見方を示すアナリスト(別に日本に限定した話ではなく、欧米大手投資銀行、証券会社に属する方も多い)はまだ少なからずいたが、20日ユーロ/ドルの1.4309安値及び27日ドル/円の114.66高値に鑑み、見通しを急変させたアナリストも少なからずいた。印象として、日本のアナリストはドル/円を強気、ユーロ/ドルを弱気に転換した方が多かったに対し、欧米系では両方弱気に転換した方が多くいらっしゃった。

君子豹変、と言われたらそこまでだが、先週末では、また当方と同じ立場に再転換してきた方も実に多い。欧米投資銀行のレポートを見ると、ユーロ/ドルの見通しを、従来の1.4、1.35及び1.32までの下落といったものを1.5、1.52及び1.55まで上昇、といった転換のケースが目立つ。一方、風見鶏にならずに済んだ当方もつらい経験をしてきた、即ち英ポンドでの失点である。「上等な風見鶏」になるのは難しい、ということを痛感しているところである。

さて、市況の話に戻るが、1月4日にてドル/円が108円台割れとなり、予想を果たせたが、ユーロ/ドルに関しては懐疑的な見方を持つ読者が多かったのではないかと推測していた。が、目下の市況において、当方の見通しがすこし説得力を持つように見えるかもしれない。

ファンダメンタルズ的な解釈では、米大幅利下げの可能性を理由に、アナリストらのスタンス変更も正当化されるが、当方としてはテクニカル的な背景の方がよほど信用できると思う。(12月17日の ドルインデックス再考(日足) をご参照ください)

この意味では、為替マーケットの魅力の一つとして、所謂プロとアマチュアが実に同じスタートラインに立たされている、機関投資家といっても株式市場ほど優位性を発揮できない、といったところではないかと指摘したい。個人投資家らはもっと自信を以ってマーケットに臨むべきだ。

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「BULLBEAR FXシグナル」12月のパフォーマンス

2008年01月09日 15時42分24秒 | ポジションの真実
一昨日、すべてのポジション(12月中の建玉)が決済されたので、昨年12月の「BULLBEAR FX シグナル」のパフォーマンスを統計できた。結果は8勝16敗となり、92,550円のプラスだった。

12月にはかなり苦戦を強いられた。言い訳できないが、当方が得た教訓として以下の2点にある。まず、シグナルを点灯させるシステムに、所謂「相場感」のウエートを占め過ぎたこと。次に、点灯する頻度が高すぎたことである。言い換えれば、取引する際、所謂ストラテジー自身がマイナスに動くリスクをもっと想定すべきで、リスクを抑える意味でもシステムの「鈍感力」を高めるべきだった。

勝率で見ると、12月のパフォーマンスが恥ずかしい限りであったが、それでもマイナスになれなかったのは、「損失を抑える、利益を伸ばす」との原則を忠実に実践しただけであった。戒めの意味を込めて、明日12月のデータを以って検証を行いたい。


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間違いだらけの「為替の常識」

2008年01月08日 23時15分13秒 | 相場の真実
日本人ほど為替動向に関心を持つ国民はいないだろう、少なくとも先進国の中では突出している。半面、比例しているように、為替に関する所謂常識、或いは通説も日本ほど間違いだらけの国はないと言えよう。

昨年11月のセミナーでは、当方は為替相場における「通説」の殆どが信憑性に欠けていると指摘し、いくつの項目を代表例として挙げた。以下はそのレジュメである。

1. 為替レートは一国の価値を表すもの。
2. 高金利通貨が常に買われ、低金利通貨は売られる運命にある。
3. 株式市場と為替相場の相関性が高い。
4. 日本の財政赤字は円安の要因である。
5. 中央銀行の介入で相場の流れを転換させる。
6. ヘッジファンドが円キャリートレードを進んで行った。
7. 円高傾向で日本企業は困る。

完全に間違っているとは言い切れなくても、以上のような偏った「常識」が常に日本の投資家の行動を歪めてきた。既成概念や先入感としてあるだけに、なかなか修正されにくい。まして市販のFX入門書にはこのようなロジックで展開されたものが多いことも、「常識」を疑う余地を一層縮めた。

日本経済新聞は「YEN漂流」のコラムを連載している。4日のコラムでは、東京証券取引所社長の斉藤さんへのインタビューを載せていた。当方は以下の問答に特に興味を持った。

問:株式市場には「円高=売り」という「円高恐怖症」が浸透しているようです。

答:円安で潤う輸出企業は稼いだ金を外貨で運用している。トヨタ自動車が外貨建て売り上げを円に替えたら1ドル=50円くらいに円高が進むだろう。海外生産する企業の増加で為替が企業業績に及ぼす実際の影響は中立に近い。

日本全体で見れば、円高の方が購買力が上がって望ましいのではないか。08年は大豆価格急騰が懸念されているが、これだけ値上げが続くと賃金が上昇しない限り購買力は落ちる。1995年と比べると実質5割程度落ちているのではないか。

このような論述を読むと、前記7番の「常識」への疑問も自然に湧いてくる。実際、企業は銀行との為替予約で殆どの為替リスクをヘッジできるし、市況が乱高下でない限り、円高で競争力を落とすことがあれば、そもそも他のところに問題があると見るべきだ。

東京の高級ホテルはもっぱら外国人をお相手にする、といった事例を紹介しながら、「国際競争力の低下と円安で相対的に貧しくなった日本」と嘆ぐ同コラム。今こそ速水前日銀総裁の「強い円強い経済」をもう一度読むべき時期であろう。

「強い円」の出番に喝采!


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初取引日の示唆

2008年01月03日 13時14分11秒 | 市況の真実
昨日は為替マーケットの初取引日となり、昨年最後の取引日に続き、ボラティリティーの拡大を以って今年の波乱を暗示していた。

実際、家に籠っている間、欧米の大手投資銀行、証券会社をはじめ、数多くの名の通った機関に属するアナリストらのレポートを読み漁った。彼らの大半は今年におけるドルの反騰を予測し、英ポンドに対する見方が総じて悲観的だ。(多くの方はユーロが現在のレベルから1.4000~1.3500前後、英ポンドは1.9000以下に落ちると予測している)一方、円に対する見方はそれぞれだが、クロス円に関してはやはり円の反転を見ている。

だが、昨日の相場はクロス円の下落を証左していたものの、ユーロ/ドル、英ポンド/ドルの下落ではなく、ドル/円の大幅下落を以って形成させたことを見逃せない。言い換えれば、クロス円相場の下落はユーロ、英ポンドなど外貨の下落よりも円の反騰に依存する側面が強く、ドル全体の下落リスクはなお大きいということになる。

ご存じのように、当方は英ポンド/ドルに関してはあまり弱気ではなく、英ポンド/円に対してはかなり弱気の見方を一貫して堅持している。多くの方から「矛盾しているのでは」とのご指摘を頂いていたが、背景としては、やはり個人投資家らは円高に主導される相場を信じていないようである。日本株と円の行方(大げさに言えば日本の将来)に関しては日本人ほど悲観的、という調査結果が示しているように、寂しい限りであるが、逆に日本株と円の強気サインとなっている。

確かに多くの高名なアナリスト達の見方と相違しているが、当方は昨年12月13日の記事既存ストラテジーを継続での見通しを堅持する。相場が自分の見方を間違ったと証明しない限り、ぶれることはない。もっとも、仮にユーロをはじめ、外貨全体対ドルのベア相場がすでに始まったとしても、外貨主導であっただけに、クロス円相場全体の下落モメンタムを一層強まることに。この意味では、2008年相場のキーワードはやはり「クロス円における円高」である。

当方のロジックを理解するために、クロス円相場を読むシリーズと再考・「円安バブル」の異常さ及び ドルインデックスで測る先の「円安バブル」の異常さなど過去の記事のご一読をお勧めしたい。


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