陳 満咲杜の「為替の真実」

陳満咲杜のFXブログです。ブログ引っ越ししました。新ブログはhttp://chinfx.blog136.fc2.com/

MONEY NEVER SLEEPS

2010年11月26日 19時22分04秒 | 相場の真実


映画『ウォール街』が公開された1987年当時は私はまだ中国にいたが、同映画の噂を聞い
ていた。そしてやがて海賊版のビデオを手に入れたのは来日直前の1991年頃だったと思う。
マイケル・ダグラス演じる投資銀行家のゴードン・ゲッコーは悪役であったにも関らず格
好が良すぎて、若い頃の自分がすっかり魅了されたことを今でも鮮明に覚えている。

そのような思い出もあって、続編「ウォール街Ⅱ、MONEY NEVER SLEEPS」が出たと聞き、
一日も早く見たかった。先日海外からDVDがやっと届いて、一気に見終わったが、ちょっと
がっかりしている気分だ。

なにしろ、リーマンマンショックによる混乱を映画の背景として撮影されているが、おそら
く脚本も監督も金融危機の本質を完全に理解し切れておらず、全般的には力不足というか、
歯がゆいというか、何らかの物足りなさを強く感じる。前作の背景となるインサイダー取引
は比較的に単純な物語であったのに比べ、続編の背景となる金融危機は複雑だから、映画の
限界がどうしても出てくるだろう。そのせいか、復活したゴードン・ゲッコー氏の存在感も
やや薄かったし、主役のジェイコブ・ムーアは印象さえ残っていない。

ところで、続編のタイトルとなる「MONEY NEVER SLEEPS」は実に気に入っている。そのシン
プルかつ強烈な言葉は金融マーケットの本質をすばり射止めている。人間の欲望が無限であ
る以上、ホットマネーは決して休むことはなく、常にリターンを追求しつつあるから、その
動きも常にオーバーとなり、常にバブルとその崩壊をもたらしてきた。皮肉にもIT技術の発
展はこういったホットマネーの動きを加速させる引き金となり、かつてないほどの規模とス
ピードで金融危機のタネをワールドワイドに撒き散らし、またその影響力を増してきた。

だから、危機は去りぬ、また次なる危機が発生すれば、その源は間違いなく米国の量的緩和
策であろう。なにしろ、すでに溢れ出しているマネーの奔流に米FRBはさらに暴雨を降らせ
ているから、寝るばかりが、これからはホットマネーが暴れ出してくるだろう。

「ウォール街Ⅲ」があれば、その副題は「 Noah's Ark」となってほしい。


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相場の宿命 2012年まで株を買ってはいけない!
陳 満咲杜
扶桑社

 

相場の宿命

2010年09月16日 10時43分19秒 | 相場の真実


東洋哲学には「運命」という言葉は特別な意味を持つ。そして、「運」と「命」は別々の概念でありながら、お互いに交錯しながら人々の人生を左右し、またその結果をもって将来へ導く。

相場も一緒である。それ以上に、運命よりも宿命のほうがもっと正確な表現だと思う。太陽の黒点活動から金利のサイクルを最初に把握したのがあのロスチャイルド家と言われるように、
相場の宿命の形式的な表れはサイクルであり、またそのサイクルが示す価格循環である。

しかし、より重要なのは、形式だけでは宿命的な相場の値動きを説明しきれないということ。私は1971年に出版されたある本のタイトルから相場の宿命を閃いた。
その本のタイトルとは『CYCLES:The Mysterious Forces That Trigger Events』である。

直訳すれば、その本のタイトルは「サイクル:諸事件を引き起こす神秘な源」だ。世界の支配者とされるロスチャイルド家がその宿命的な地位を手に入れたのであれば、他ならぬ、
その神秘な源から誰よりも早くパワーをもらったに違いない。

言ってみれば、リーマンショックにしても、ギリシャ危機にしても、一見突発性を持って起こされた事件であるが、実はすべて必然性をもって景気サイクルの内部構造を証左するものである。
その上、金融相場の変動はこういった外部要素によって引き起こされるという世間の常識は完全な間違いだ。事実は寧ろその逆である。つまり、金融相場の変動の必然性によって
外部要素のあり方と発生、変化のタイミングを決めてしまうものだ

拙作『相場の宿命~2012年まで株を買ってはいけない!』の上梓は危機感と使命感をもってこういった相場の真実を伝える目的であった。なぜなら、我々は今世紀最大の危機に
これから直面しようとしているからだ。

本著において特筆すべきは、その「危」をいかにして「機」と捉えるかという術を余すことなく盛り込ませて頂いた。賢明な読者の皆さまにおかれましては、それらを具に吸収して頂ける事
を願ってやまない。また理解の一助として、アマゾン購入者限定キャンペーンを同時に開催し、特別レポートを提供させて頂く。今月24日までの期間限定キャンペーンにつき、読者の皆さま
には早めに手に取って頂きたいと思う。




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[指標次第」は本当か

2008年04月04日 15時18分32秒 | 相場の真実
後解釈だけ上手い「穴」リストらが大好きな言葉は「指標次第」及び「イベント待ち」である。要するに経済指標の好し悪しによって相場のトレンドが決るとのことだ。

これは本当でしょうか。結論から申し上げると、相場が指標の好悪に追随し、素直に反応する場合もあれば、そうでない場合もある。当方の経験から言うと、「素直ではない」場合が多い。理屈は簡単だ、「噂で買い、事実で売り」は相場の常であり、発表後は本物トレーダーらが利喰いに走るからだ。

いずれにせよ、素直に反応するかどうかはあくまで短期的な値動きで、相場の方向は経済指標によって決定されるのではなく、内部構造に導かれるものだから、「指標次第」は言いわけである。

今晩の米雇用統計はいい教材となるでしょう。当方は数字の好し悪しによって短期の波乱があるものの、ドル高の傾向が増強されると見る。ちなみに、予想数字と近い内容であれば、大した波乱がないとも読む。

もちろん、この考え方自身は予想だから、間違いも十分あり得る。正誤に関わらず来週検証の記事を書こう。もっとも、間違いであれば、「言い訳」の文書となるから、あまりよろしいものではないが、それでも「穴」リストらよりはマシであろう。
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為替はテクニカルなり(二)

2008年02月27日 18時16分24秒 | 相場の真実
ユーロは史上最高値を更新、当方が昨年12月既存ストラテジーを継続にて出した1.5200とのターゲットに近づいている。

実際、2月に入ってから、ユーロトップアウト、ドル底入りといった論説が絶えなかった。主にファンダメンタルズ的な説明であったが、市場の注意点はユーロ圏利下げへの懸念に集中していた。

2月5日、6日および7日あたりでは、「米ドル人気回復、経済指標がユーロを打撃」という報道が各サイドにあふれていた。世界トップ銀行のアナリストらは揃ってドルの底打ちを予想した。理由は主にユーロ圏1月サービス業PMIが4年半以来の安値を更新したことを挙げられ、昨年12月のリテールセールスデータの低下も相俟って、ユーロ圏利下げの懸念でユーロ下落との結論が出されたようだ。

その後、ECB総裁の記者会見もあり、多くの評論家は彼の発言に関して、「明らかにユーロ売りのサインを出した」と読み取り、ECBが鷹派スタンスが崩れたとの解釈に市場が傾いた。ユーロも7日において1.4439まで売られた。

この様なコメントを出した銀行にはCommerz Bank 、Bank of New York Mellon、Deutsche Bank 、Citigroup、BNP Paribas,Calyon、UBS、Bank of America、Royal Bnak of Scotland などトップクラスのバンクが名を並べていた。

が、上のチャートが示したように、ユーロは下落ではなく上昇した。誰が何と言おうと関係なく、相場は相場に聞くべきで、少しテクニカルの知識があれば、当方が見通しを修正しなかった理由には納得するはずであった。

つまり、世界トップクラスの銀行の高名なアナリストらが揃ってユーロ安に傾いたにも関わらず、ユーロは1月22日安値の1.4364を下回れなかったことを重視すれば、明らかに昨年高値から形成された「アセンディンパターン」の最終完成に繋がっているもの。相場の過去を振り返れば、歴史的なトップ形成はほとんど「V字型」か「ダブル・トップ」型のパターンが多く、「アセンディンパターン」はどちらかというとトレンドの途中でよく見られるフォーメーションである。よって、ユーロは高値更新の蓋然性が高く、ユーロ買いスタンスを堅持したわけだ。

ちなみに、その後のユーロ圏から弱い経済指標が続出したが、ユーロ高に打撃を与えなかった。また、ECBのスタンスに関する解釈もごろごろ変わり、足元では「依然鷹派か」との観測が強い。もちろん、米国の問題が深刻化を増していることも一因だが、基本的には、米利下げ継続に関する懸念が根深いことを示している。

このように、ファンダメンタルズが相場へ与える影響及びレートの決定メカニズムは複雑で、これらに関する解釈やセンチメントもごろごろ変るもの。評論家ではなく、トレーダーなら、決してファンダメンタルズの理由のみでポジションを建てるべきではない。大事なのは、ファンダメンタルズや市場の解釈、及び市場心理に照らし、テクニカルのルールに沿って対応することである。

実際、テクニカルの基準と市場心理及び市場のファンダメンタルズに対する解釈が相違すればするほど大きな取引チャンスとなる。なぜなら、自分が少数派に属しており、多数派の敗北によって莫大な利益を手に入れるからだ。

余談となるが、前記大手銀行の多くは本日ユーロ高に傾くレポートを多数だしている。

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天井知らず

2008年02月20日 16時45分45秒 | 相場の真実
昨日NY原油先物相場(期近、三月物)は再び1バレル100ドル台に乗せた。まさに天井知らずの展開。

上のチャートは同原油先物の日足である。このチャートを眺めて、ある通貨ペアの値動きに似ていると思わないか。

ほんの少し前、フォーメーション上の「ダブルトップ」を理由に、原油のトップアウト論を展開したテクニカルアナリストが多かっただけに、ショートポジションを手掛けるトレーダーも多かったようだ。本質的には、原油の高値更新は新規買いオーダーによるものではなく、ショート筋の買い戻しが齎した結果と推測される。

もちろん、所謂ファンダメンタルズ的な解釈は通じない。景気後退局面におり、かつ供給量も十分の目下では、原油高は理にかなわない現象だ。後解釈として、マスコミと一部評論家の決まり文句は「投機資金の流入による波乱」である。

だが、事実としては為替相場も含め、ゼロサムゲームに参加しているのはいつも投機筋であり、このような解釈は笑止千万だ。

前の記事で「天井と底はその時が過ぎてから初めて分かるもの」と強調していたが、この意味でもまさに「天井知らず」である。

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「波乱の時代」こそジンクス重視?

2008年01月24日 18時09分57秒 | 相場の真実
前米FRB議長のグリーンスパン氏の自伝は『波乱の時代』とのタイトルで、目下の金融市場の状況を如実に表している。

このような「波乱」の市況においては、取引の判断を容易に下せない。例えプロのトレーダーであったとしても。この故か、ウォール街には、いろんなジンクスが存在しているそうだ。

当方として印象深いのは、以下のジンクスである。即ち、サプライズが発生した際、市場の最初の反応がその後の方向性を導いてくれるとのこと。波乱な市況であればあるほど、このジンクスが通用されるそうだ。

この通りであれば、一昨日米の大幅緊急利下げが発表された際の、為替市場の反応が大事であろう。よって、今後ドル/円を除き、メジャー通貨に対するドルの下落が続き、クロス円相場はやや上昇といった相場感が得られるかもしれない。

ちなみに、テロといった明らかに「売り」材料となるサプライズでは、このジンクスが通じない。好材料か、悪材料か、見方が分かれる時に真価を発揮するようである。

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ツー・ビッグ・ツー・レイト?

2008年01月23日 14時21分52秒 | 相場の真実
ドルインデックス 日足

昨日米FRBが0.75%の緊急利下げを実施、対円を除き、ドル全体が売られた。その分クロス円全体が上昇したが、皮肉にも一部の「スワップ派」投資者がやっとの思いで損切り、あるいはドテンして円買いした後のことだった。相場の神様は誠に意地悪である。

さて、FRBの決断に株式市場の評判が芳しくない。NYダウは一時460ドルの暴落となり、その後反発したものの、なおマイナス128ドル超の下げ幅を演じていた。

先週ブッシュ大統領の景気刺激法案に対する失望感から米株式が急落したが、その時の評判は「ツー・リトル・ツー・レイト」だった。つまり「小さすぎ、遅すぎ」である。同じ言い方とすれば、今回FRBの決定に対し、「ツー・ビッグ・ツー・レイト」との見方がマーケット関係者らが共有しているかもしれない。

要するに、緊急利下げがもっと早めに行われるべきだとの認識が一般的であるものの、利下げ幅にはショックを隠せない投資者が実に多い。想定を越えた利下げ幅の裏返しとして、危機の深刻さを物語っているだけに、背筋が凍る思いをした市場関係者も多いであろう。いまさらではないが、バーナンキ議長の手腕には疑問符が付く。

ある意味でバーナンキ議長は「貧乏くじ」を引いた人物だ、これからイバラの道を歩むことに。が、FRBへの信頼がなくなる、という事態に陥れば、それこそもっと深刻で、恐ろしい危機である。だから、当方が繰り返し指摘してきたように、危機とは人為的に避けられない経済現象で、その場の解決策で問題を先送りしただけでは、いずれより大きな危機と直面しなければならない。

ちなみに、今の状況を作り出した張本人のグリーンスバン氏はなんとサブプライム関連の金融商品の空売りで大儲けしたヘッジファンドの顧問に着任し、まるで全く責任のないような振舞いを続いている。氏に対する評判はこれから変わっていくであろう、今回の危機の進行度合とともに。因みに、氏は米金利が少なくとも3%まで下げると見ているそうだ。


ドルインデックスの日足を見ると、ドルの頭が低下傾向を続く100線に再び抑えられ、リバウンドがすでに終了し、今後安値を再更新していく、といったシナリオを浮上させた。この見方が正しければ、今年前半において、ユーロは1.5200あるいは1.5500、豪ドルは0.9400あるいは0.9900、円は101あるいは97のレベルへ打診する値動きもあり得る。

桜の満開とともに、円もわが春を謳歌するか。

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間違いだらけの「為替の常識」

2008年01月08日 23時15分13秒 | 相場の真実
日本人ほど為替動向に関心を持つ国民はいないだろう、少なくとも先進国の中では突出している。半面、比例しているように、為替に関する所謂常識、或いは通説も日本ほど間違いだらけの国はないと言えよう。

昨年11月のセミナーでは、当方は為替相場における「通説」の殆どが信憑性に欠けていると指摘し、いくつの項目を代表例として挙げた。以下はそのレジュメである。

1. 為替レートは一国の価値を表すもの。
2. 高金利通貨が常に買われ、低金利通貨は売られる運命にある。
3. 株式市場と為替相場の相関性が高い。
4. 日本の財政赤字は円安の要因である。
5. 中央銀行の介入で相場の流れを転換させる。
6. ヘッジファンドが円キャリートレードを進んで行った。
7. 円高傾向で日本企業は困る。

完全に間違っているとは言い切れなくても、以上のような偏った「常識」が常に日本の投資家の行動を歪めてきた。既成概念や先入感としてあるだけに、なかなか修正されにくい。まして市販のFX入門書にはこのようなロジックで展開されたものが多いことも、「常識」を疑う余地を一層縮めた。

日本経済新聞は「YEN漂流」のコラムを連載している。4日のコラムでは、東京証券取引所社長の斉藤さんへのインタビューを載せていた。当方は以下の問答に特に興味を持った。

問:株式市場には「円高=売り」という「円高恐怖症」が浸透しているようです。

答:円安で潤う輸出企業は稼いだ金を外貨で運用している。トヨタ自動車が外貨建て売り上げを円に替えたら1ドル=50円くらいに円高が進むだろう。海外生産する企業の増加で為替が企業業績に及ぼす実際の影響は中立に近い。

日本全体で見れば、円高の方が購買力が上がって望ましいのではないか。08年は大豆価格急騰が懸念されているが、これだけ値上げが続くと賃金が上昇しない限り購買力は落ちる。1995年と比べると実質5割程度落ちているのではないか。

このような論述を読むと、前記7番の「常識」への疑問も自然に湧いてくる。実際、企業は銀行との為替予約で殆どの為替リスクをヘッジできるし、市況が乱高下でない限り、円高で競争力を落とすことがあれば、そもそも他のところに問題があると見るべきだ。

東京の高級ホテルはもっぱら外国人をお相手にする、といった事例を紹介しながら、「国際競争力の低下と円安で相対的に貧しくなった日本」と嘆ぐ同コラム。今こそ速水前日銀総裁の「強い円強い経済」をもう一度読むべき時期であろう。

「強い円」の出番に喝采!


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参考本の推薦

2007年12月16日 18時14分11秒 | 相場の真実
複数の方からテクニカル及び相場に関するお勉強にふさわしい本を推薦してほしい、という要望をいただいたので、厳選した上、とりあえず以下の四冊を推薦いたします。

まず、テクニカル分析に関しては、「ジャック・ジュワッガーのテクニカル分析」(作者 ジャック・ジュワッガー)と「先物市場のテクニカル分析」(作者 ジョンJ・マーフィー)はお勧め。両方とも「きんざい」社の出版作。

この二冊が共通しているのは、著者自身がトレーダーの経験と相場に関する深い造詣を有すること、その上、体系的かつ「正論的」にテクニカル・アナリシスの手法をセンスよく解釈しているで、実にいいと思う。

二冊の内容が似っているから、どちらの一冊を選べばいいと思う。個人的には「ジャック・ジュワッガーのテクニカル分析」をより好む。ただ、英語版と中国版の両方を持っているが、日本語版を持っていないので、英語版ほど全面的に訳されているかどうかは不明である。

ちなみに、ジャック・ジュワッガーさんは「マーケットの魔術師」と「新マーケットの魔術師」の著者でもあり、投資関連の作家として世界的に名を馳せる人物。

相場に関する読み物は「欲望と幻想の市場―伝説の投機王リバモア」(エドウイン・ルフェーブル著 東洋経済新報社出版)と「トゥモローズ・ゴールド」(マーク・ファーバー著 パンローリング株式会社出版)をお勧め。前書はトレーダーの必読書と言われるほどの名作で、小説としてお読みになっても結構面白い。後作は投資の歴史とサイクル論に基づく検証が綿密に行われ、投資の本質を鋭く迫った名作である。

「ジャック・ジュワッガーのテクニカル分析」と同じく、「欲望と幻想の市場―伝説の投機王リバモア」に関しては、私自身が日本語版を持っていないため、翻訳の質は不明だが、とりあえず入手できる範囲だから、ご参考ください。

上の写真は私の本棚の一角で、例示した本のいくつが入ってる。


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米サブプライムショックの必然性

2007年11月09日 17時06分30秒 | 相場の真実
8月米サブプライムショック以降、米サイドをはじめ、関連銀行、証券の巨額損失が連日新聞のトップ欄目を賑わせている。「底なし損失、断ち切れるか」(本日日経新聞夕刊・ウォール街ウランドアップコラムのタイトル)という疑心暗鬼が蔓延し、一部「プロ」達の予想と反し、収束の兆しは一向に見えずにいる。

もっとも、米サブプライム問題は昨年から指摘され続け、今年3月から為替マーケットに影を落とし始めていた。日本人アナリストの大半は「問題は一時的、米経済力強し」といったスタンスを取り、楽観論を繰り返してきたが、本日に至ってはほぼ悲観論一色に転換している。この事例からも、日本の個人投資家らは是非以下の教訓を心得していただきたい。

まず、機関投資家及び「プロ」と呼ばれている連中は我々が想像するほど賢くないし、リスク管理も彼らが宣伝しているほどしっかりしていない。これは世界共通で、金融工学が発達しているかどうかなどテクノロジーの問題とは無関係である。金融業界だけではなく、あらゆる業界また政府組織も同じである。日本の年金問題はその好例であろう。

次に、アナリストらには、風見鶏の気質から抜け出せず、後解釈が上手いだけでメシを食っている輩が実に多い。(私が聞いた話では、銀行系アナリストのレポートを行内のトレーダーは読まないし、同じ時期にブル・ベア派が常に存在するという。)もっとも、一個人の力は非常に限られ、「プロ」だからすべて把握できるというのは所詮無理な話だ。(この意味では、フジマキ・ジャパンの藤巻さんに敬意を払う。彼は如何なる局面でも、円安と一点張りしてきた。)

もっと重要なのは、「台所でゴキブリが発見されたら、絶対一匹だけで済まない」とウォーレン・バフェット氏が言うように、危機というものの本質を理解することである。結論を先に申し上げると、危機とは「宿命的であり、人為的に避けられないもの」と私は見ている。


9月19日の記事相場の最終決定要因を考えるにも紹介したが、今年4月25日発売の「ビッグトゥモロウ」誌に掲載された広告記事には、「2009年末、2010年頭まで、ドル安・円高に進展する可能性が高い。100円割れも」と私は予測していた。具体的なレベルの言及よりも、ミソの部分が実に文書の最後にあった。

巷で話題のキャリー・トレード、即ちスワップ金利を狙う投資ブームは既にバブル化しています。その正当性をファンダメンタルズ(主に金利差)で説明しようとする評論家達の予測に反し、これから主に米国側から様々なマイナス要因が続出するでしょう。つまり、今後2,3年間に渡るドル安が「宿命的」である以上、ファンダメンタルズも後追いで円高の材料となる方向に展開すると予想します。


私は米国経済の専門家ではない。米サブプライム問題の深刻さを予想できる術もなかった。が、結論から言えば、私の見方は正しかった。つまり、金融マーケットにおける値動きが自身の内部構造に沿って動き、ファンダメンタルズはその反映として後付けして来るもの。言い換えれば、世の中のすべては「神の見えざる手」によって必然的、宿命的に位置付けされている以上、金融相場もその仕組みから抜け出せない。因みに、ここで言う「神の見えざる手」とは一般の宗教上のものではなく、「宇宙の法則」を指している。

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相場の真実を語る事例 

2007年09月20日 11時23分44秒 | 相場の真実
昨日昔の広告記事の内容を載せたので、恐らく多くの方が見てくれたと思うが、私の考え方と結論に違和感を感じる方も多くいるかもしれない。自分では、一番肝心な論点が文書の最後にあると考えている。しつこいようだが、もう一回繰り返す。

「巷で話題のキャリー・トレード、即ちスワップ金利を狙う投資ブームは既にバブル化しています。その正当性をファンダメンタルズ(主に金利差)で説明しようとする評論家達の予測に反し、これから主に米国側から様々なマイナス要因が続出するでしょう。つまり、今後2,3年間に渡るドル安が「宿命的」である以上、ファンダメンタルズも後追いで円高の材料となる方向に展開すると予想します。」

その時点(4月初、私は全く米サブプライム問題の深刻化を想定していなかったし、想定する力もなかった。自信を持って、自分の名前と写真まで公表したのは、あくまで前記の相場の真実に気付いていただけだ。現実はまさにこのように展開してきたことは、世間の一般的な考え方、即ちファンダメンタルズが相場の動きを決定するという原則は必ずしも正しいと限らない。

この問題は奥深い。世界観と哲学も絡んでくるだけに、一朝一夕で論議を尽くせない。今日はこの辺と関連する3つの事例を紹介し、今度話の材料にしようと考えている。皆さんもご感想があったら、コメントをください。

相場の真実を語る事例 その一

1906年、イギリスの科学者Francis Galton 氏による実験が行われた。ある家畜博覧会において、参加者全員に一頭の牛の処理された後の重量(内臓を取った後の重さ)を測ってみることに。計787個の回答が集まり、その787個の数字を足して787を割ると、平均値としての数字が得られた。因みに、回答者の中には農民と畜産関係者も含まれたが、大半は全く牛など家畜になんの専門知識も持たない一般人だった。
統計の結果では、平均値は1197パンに対して、実際牛の重量が1198パンだった。誤算は0.08%しかなかった。

相場の真実を語る事例 その二

1986年1月28日11:38分、米宇宙飛行機のチャレンジャー号が発射されたが、74秒後爆発し、墜落した。テレビの生中継もあり、事故はすぐに知れ渡った。

株式市場はすぐ反応した。数分後、宇宙飛行機事業を手掛ける大手製造会社の4社の株が強烈に売り浴びせられた。パフォーマンスは以下の如き:
事故発生後21分: Rockwell社(エンジンと機体を製造)は6%安、Lockheed社(発射台や地面設備を製造)は5%安、Martin Marietta社(機外メイン燃料装置を製造)は3%安、Morton Thiokol社(固体燃料補助エンジンを製造)はストップ安。同日終値では、前3社の株は揃って約3%安に留まったに対してMT社は12%安だった。

その後の調査では、当日憶測やうわさも含め、特にMT社製品の欠陥が事故の原因であるとの指摘がなかった。また、各会社の経営陣によるインサイダー取引の痕跡もなかった。6カ月後、事故調査委員会はやっと調査結果を発表し、MT社製品の欠陥が事故の引き金だったとの結論を付けた。

相場の真実を語る事例 その三

米財務学教授のTack Treynorが授業である実験を行った。彼はグラス容器に850個の飴を入れて、授業に参加した学生全員にその数を当てさせることにした。その結果、全員の平均値として871個となり、誤差は2.47%しかなかった。56名参加者の中、ただ一人の答えが平均値よりもっと正確だった。

Treynorj教授は直ちに2回目の実験を実施した。今回は彼が容器がプラスチェック製であることを強調した上、容器の中には空気が存在すると注意した。その結果、参加者全員の平均値は15%の誤差を示し、個別学生の予想よりはるかに不正解だった。

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相場の最終決定要因を考える

2007年09月19日 20時28分10秒 | 相場の真実
相場の最終決定要因とは何か、この問題についておそらく永遠に共通な認識が得られないと思う。結論から申し上げると、私はファンダメンタルズが相場の最終決定要素にはなれないと経験上の実感を得ており、東西を問わず、歴代の相場師らはこのような真実を強調している。今回、まず以前の広告記事の内容を載せ、改めて皆さんと一緒に考えたいと思う。記事内容は広告代理店の方が私の話を纏め、今年4月25日発売の「ビッグトゥモロウ」誌に掲載したもの。以下は記事本文。

長期為替動向の最終決定要素は金利差ではなく「宿命的」サイクルである!
―円高はまだまだ続く。1ドル100円割れもアリ!?

 すべての金融商品の値動きにはサイクルがある、というのが私の持論です。もちろん、為替相場もそう。短期的には、ファンダメンタルズ(経済・政治など基礎的な要素)の変化によって、値動きも千変万化していますが、基本的には主要サイクルの構造によって値動きのトレンドは決まっていきます。

 サイクルには強気の「ライト・トランスレーション」と弱気の「レフト・トランスレーション」の2パターンがあり、これらが連続したり入れ替わったりしながら、一定間隔で相場を作っているのです。すべてのサイクルはより大きな、長期的なサイクルに内包・支配されます。短期的なサイクル構造が強気でも、より長期的なサイクルが弱気構造であれば、結果的に値動きは下へ向かいます。サイクルの長さは完全に同じではありませんが、おおまかな期間は予測できます。

 では、為替相場がこの先どう動くか、サイクル理論から分析してみましょう。下図を見てください。ドル/円の動きを月足で測ると、ドルは約8年(96カ月)ごとに値動きのトップを形成する傾向にあります。これが1つ目のサイクルです。1990年4月のトップ(160.20円)から1998年4月のトップ(147.63円)までは約100カ月あり、その前のサイクルは89カ月と98カ月でした。今年1月の高値(122.19)まですでに101カ月が経過しており、すでにこのサイクルはトレンド転換した公算が大きい。

 また、2つ目のサイクルは1995年4月安値~1999年12月安値~2004年12月安値の5年周期サイクルです。 これを見ると、2006年1月についたドルの高値をトップとして、2010年前後次のボトムを形成する機運が見受けられます。つまり、2009年末、2010年頭まで、ドル安・円高に進展する可能性は高いと思われます。

 さらに、1995年における歴史的安値からのサイクルでは、ボラティリティ(変動率)の縮小に伴って「トライアングル」パターンを形成しており、この安値を起点とする周期変動を一つのサイクルと見なせば、明らかに弱気のパターン(そのサイクルの高値は既に1998年に出現)と考えられます。従って、今後ドルは再び101前半まで続落の公算が大きく、100円割れもおかしくないと予測できます。

 巷で話題のキャリー・トレード、即ちスワップ金利を狙う投資ブームは既にバブル化しています。その正当性をファンダメンタルズ(主に金利差)で説明しようとする評論家達の予測に反し、これから主に米国側から様々なマイナス要因が続出するでしょう。つまり、今後2,3年間に渡るドル安が「宿命的」である以上、ファンダメンタルズも後追いで円高の材料となる方向に展開すると予想します。

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