陳 満咲杜の「為替の真実」

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間違いだらけの「為替の常識」

2008年01月08日 23時15分13秒 | 相場の真実
日本人ほど為替動向に関心を持つ国民はいないだろう、少なくとも先進国の中では突出している。半面、比例しているように、為替に関する所謂常識、或いは通説も日本ほど間違いだらけの国はないと言えよう。

昨年11月のセミナーでは、当方は為替相場における「通説」の殆どが信憑性に欠けていると指摘し、いくつの項目を代表例として挙げた。以下はそのレジュメである。

1. 為替レートは一国の価値を表すもの。
2. 高金利通貨が常に買われ、低金利通貨は売られる運命にある。
3. 株式市場と為替相場の相関性が高い。
4. 日本の財政赤字は円安の要因である。
5. 中央銀行の介入で相場の流れを転換させる。
6. ヘッジファンドが円キャリートレードを進んで行った。
7. 円高傾向で日本企業は困る。

完全に間違っているとは言い切れなくても、以上のような偏った「常識」が常に日本の投資家の行動を歪めてきた。既成概念や先入感としてあるだけに、なかなか修正されにくい。まして市販のFX入門書にはこのようなロジックで展開されたものが多いことも、「常識」を疑う余地を一層縮めた。

日本経済新聞は「YEN漂流」のコラムを連載している。4日のコラムでは、東京証券取引所社長の斉藤さんへのインタビューを載せていた。当方は以下の問答に特に興味を持った。

問:株式市場には「円高=売り」という「円高恐怖症」が浸透しているようです。

答:円安で潤う輸出企業は稼いだ金を外貨で運用している。トヨタ自動車が外貨建て売り上げを円に替えたら1ドル=50円くらいに円高が進むだろう。海外生産する企業の増加で為替が企業業績に及ぼす実際の影響は中立に近い。

日本全体で見れば、円高の方が購買力が上がって望ましいのではないか。08年は大豆価格急騰が懸念されているが、これだけ値上げが続くと賃金が上昇しない限り購買力は落ちる。1995年と比べると実質5割程度落ちているのではないか。

このような論述を読むと、前記7番の「常識」への疑問も自然に湧いてくる。実際、企業は銀行との為替予約で殆どの為替リスクをヘッジできるし、市況が乱高下でない限り、円高で競争力を落とすことがあれば、そもそも他のところに問題があると見るべきだ。

東京の高級ホテルはもっぱら外国人をお相手にする、といった事例を紹介しながら、「国際競争力の低下と円安で相対的に貧しくなった日本」と嘆ぐ同コラム。今こそ速水前日銀総裁の「強い円強い経済」をもう一度読むべき時期であろう。

「強い円」の出番に喝采!


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