陳 満咲杜の「為替の真実」

陳満咲杜のFXブログです。ブログ引っ越ししました。新ブログはhttp://chinfx.blog136.fc2.com/

ドル/円相場の示唆(五)

2007年11月08日 16時05分03秒 | ドル/円の真実
10月30日「日経金融新聞」のコラム「相場を読む」には東京三菱UFJ銀行のチーフアナリストさんのコメントが掲載され、「年内円高小休止、113~118円で推移」との相場感とレンジを示していた。

銀行系のアナリストの殆どがファンダメンタルズから相場を語り、ある意味ではレンジ相場には強い。ただ、相場の水準をファンダメンタルズで決めるものではなく、トレンドの進行が速い、或いは変動率が高まる際、往々にして、相場の進行がアナリストらの予測範囲から大幅に掛け離れる、というケースがしばしばあった。昨日のドルの全面安と外貨の変動率はこの好例となろう。私は少なくとも7年間に渡って銀行系のレポートを読んで来たので、このような感想を持つことになったが、決して銀行系アナリストの能力を軽視しているわけではない。この辺は誤解しないように予め断っておきたい。

さて、「相場は相場に聞け」との原則に沿って、最近のドル/円チャートからヒントを得たい。上のチャートはドル/円の日足図、図示のAラインは8月23日高値と9月18日高値を連結し、Bラインは8月17日安値と9月10日安値連結したもの。A、Bラインが「トライアングル」とのフォーメーションを形成した。

注目していただきたいのは、10月3日にて、トライアングルの上放れが確認され、本来の目標計算値である120.30か121.35(トライアングルの最大値幅をブレイクのレベルに加えた計算値)前後まで上昇するはずだった。

ところが、ドルの上昇が117.94で頭打ち、逆にA、Bラインを順次割り込んで来た。即ち、前記「トライアングル」の目標値を達成しないばかりか、トライアングルの下まで落ちてきたので、テクニカル・アナリシス的な言い方をすれば、10月3日の上放れが「ダマシ」であった。

テクニカル・アナリシスの原則としては、「ダマシ」ほど「正確なシグナル」となれるものはないと見なす。何故なら、世の中の現象と同じく、「達成すべきものが達成されていなければ、その反対の方向になる確率が逆に高くなる」と考えられたのである。よって、10月19日にて、今後ドルがベアトレンドへ復帰するといった確信が得られた。その後、ドルの小反発も見られたが、すっと下落傾向にある21日線に頭抑えられ、ショートの好機とも解釈できよう。

さて、下値ターゲットとしては、順次111.36、109.00と108.35との目標値が概ね計算される。今月下旬までドルの「底入れ」がなかなか難しいと見ているから、銀行系アナリストの「レンジ感」が否定される可能性も浮上しよう。因みに、「年内108円台」とは、私の一貫した見方で、10月5日の記事にも言及している。相場は結局行くべきところに行き、ファンダメンタルズのみでその行方を掴みきれないのは自明の理だ。

昨日のボラティリティーの拡大を以って、ドル安小休止の可能性を再浮上させた。が、対円以外の話だ。よって、クロス円相場も含み円高となり、円を除きドルの保ち合い相場が見られるのでは。ユーロとの関係にも鑑み、豪ドルとカナダドルの過熱感は否めない。

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ドル/円相場の示唆(四)

2007年10月29日 17時48分51秒 | ドル/円の真実
当方の指摘した通り、目下、ユーロは1.4424との高値を更新し、1.4500大台を目指す展開に。また、豪ドルの23年来高値、カナダドルの47年来高値更新と相俟って、ドル安トレンドの加速を証左した。

さて、肝心のドル/円相場は小幅変動に留まり、次のステップをなかなか踏めずにいるか、下放れ必至との見方には全く変化なし。今回引き続きこのシナリオの根拠をテクニカル要素で説明したい。

上のチャートはドル/円の週足図である。そこに、2001年安値と2002年安値を連結したサポートライン(A)、2003年高値と2004年高値を連結するレジスタンス・ライン(B)や2005年安値と2006年安値を連結するサポート・ライン(C)がそれぞれ表示されています。

このように、2年間の安値或いは高値を連結するラインの意義を重視し、そのブレイクをトレンドの転換サインと捉えた場合、その後の相場の変動を検証したい。

図示のように、Aラインを下抜いた後(2003年9月)、2005年年初までドル安が続いた。逆にBラインでは、抵抗ラインとしての役割が2005年5月にて否定された後、ドル高トレンドが2007年6月まで続いた。では、Cラインが2005年からの上昇相場のサポートラインとして見た場合、8月の下ブレイクがドル高の終焉を意味し、今後1年半から2年ぐらいのドル安トレンドを継続させる蓋然性が高まる。つまり、二年越しのサポートラインがブレイクされた以上、ドル/円相場の過去のデータを検証する限り、しばらくドル安トレンドが続く公算は大きい。


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ドル/円相場の示唆(三)

2007年10月05日 19時03分03秒 | ドル/円の真実
一昨日ドル/円が跳ね上がり、116.77まで上昇した。早速円安派から歓声が上がり、円安復活、123円も視野に入るといった楽観論も台頭した。果たしてそうなるだろうか。引き続きドル/円のチャートを検証し、今後の行方を探りたい。

前の記事で指摘したように、2005年1月から、ドル/円相場は15、16月の周期を以って2つのサイクルを形成し、サイクル内における上昇期間も約1年だった。また、サイクルがトップアウトした後の下げ幅はほぼ同じで、二つのサイクルが擬似性を持つ。単純に考えると、このようなサイクルが繰り返されば、8月17日安値(111.68)からドルの反騰が続き、来年8月前後まで再びトップをつけてから反落となる。これを前提とすれば、来年8月前後はドル/円相場が126.86~130.95、(2006年安値~2007年高値の値幅と2005年安値~高値の値幅はそれぞれ15円18銭と19円27銭だったので、それぞれ8月17日安値の111.68から加算した目標値)といったレベルに付くはず。円安派トレーダーにとってまさに果報だ。

しかし、残念ながら、私は全く逆の結論を申し上げたい。即ち、ドル高はすでに終了し、今後2.3年間円高トレンドの蓋然性が高いということである。今までの2個のサイクルは強気パターン(サイクル内における上昇期間、値幅が共に下落期間、値幅より大きい)に対し、今後のサイクルは弱気パターン(サイクルにおける上昇期間、値幅が共に下落期間、値幅より小さい)に転じる公算が高いと見る。

まず、6月22日から8月17日までの下げ幅(12円46銭)は確かに2005年5月12日から2006年5月17日までの下げ幅の12円43銭とほぼ同じであるが、経過期間は明らかに違う。2005年5月からのケースでは、約5月をかけて12円43銭の値幅を形成したに対し、今回6月からの下落は2月足らずでほぼ同じ値幅を達成した。つまり、ドル安のスピードと変動率が共に拡大したわけで、今までと違ったパターンの可能性を示唆した。

具体的には、相場における価格と時間の関係は常に均衡を保とうとしており、お互いに制約し合う関係でもある。目下三番目の強気パターンのサイクルにいる、という状況であれば、6月からの急落が2005年のケースと比べ、かなり短い期間で同じ値幅を達成したから、戻りも2005年のケースより早くなるはず。そうでなければ、今回の下落はあくまでも途中で、値幅はともかく、最短今年11月末まで、長ければ来年8月前後まで下落トレンドを続くかもしれない。サイクルの周期(約15、16月)で考え、来年8月前後まで下落が続くようであれば、サイクル自身は明らかに弱気パターンとなり、ドルも安値切り下げていく。

8月17日の安値(111.68)をつけてから、昨日まで35日(取引日)が経過した。昨日の終値(116.43)で計算すれば、約4円75銭の上昇幅だったが、この間の高値は8月23日の117.13だったので、5円45銭の上昇となる。つまりドル/円は35日をかけて、今だに安値付けた日から1週間後の高値を抜けずにいる。対照的に、2006年5月17日安値(108.96)から35日後(7月5日)の終値は115.60であり、6円64銭の上昇幅だったし、この間の最高値は6月27日の116.70から見れば、7円74銭の値幅だ。特に、108.96との安値を付けてから1週間後の高値(112.96)を見ると、昨年ドル反騰のモメンタムは明らかに今回より強かった。言い換えれば、8月からの新しいサイクルが強気パターンではなく、弱気パターンである確率が高く、相場はすでにドル安に転換した蓋然性が大きい。

従って、構造的にドル安に傾いた以上、ドルのリバウンドも限定されよう。当方では、117.13ブレイクの有無に注目、上回れば一時117.92/97まで上昇する可能性も排除しないものの、再び頭打ちとなり、今後ドル安トレンドへ復帰するシナリオを有力視。この見方が正しければ、今後108円台を目指して、ドル安/円高が進むであろう。

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ドル/円相場の示唆(二)

2007年10月01日 15時22分39秒 | ドル/円の真実
今日もドル/円相場の値動きをサイクルの視点から見てみたい。28日の記事で述べたように、2005年1月からのドル/円相場は概ね15、16月のリズムを以ってサイクルを形成し、サイクルがトップアウトした後の調整幅(ドルの下げ幅)は驚くほど同じであった。それではサイクルの始め(安値)からトップ(サイクル期間中の高値)までの日柄も計算して見よう。それぞれ2005年1月17日~2005年12月5日、2006年5月17日~2007年6月22日であった。即ち、2005年から、ドルの上昇相場はほぼ1年ぐらいの期間を以って頭打ちになる傾向が強く、サイクルの期間と同じく、二回とも期間的誤差は1か月ぐらいであった。これは最早偶然的な現象ではなく、必然的なものと受け止めるべきではないでしょうか。要するに、相場にはサイクルが存在し、個々のサイクルは一定期間内(より大きいスパン)において擬似性を持つ蓋然性が高いとのことです。


このように、サイクルの概念は相場分析において非常に重要で、マクロ的な視点を提供してくれるコンパスである。次回はこのコンパスを使ってドル/円相場の行方を測ってみたい。

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ドル/円相場の示唆(一)

2007年09月28日 18時40分55秒 | ドル/円の真実
ドル/円相場は6月22日に付けた高値(124.14)から、8月17日の安値(111.68)まで、実に12.46円の下げ幅を演じた。米サブプライム問題が端を発した混乱に起因した相場の急変などファンダメンタルズ的な説明をとりあえず無視し、テクニカルの視点から問題を再考したい。

まず、2005年1月からの上昇トレンドが12月5日高値(121.39)を以って終了し、翌年の5月17日まで大幅調整した。17日の安値は108.96円であり、下げ幅は12.43円だった。二回の急落が同じ下げ幅を形成したことは、偶然でしょうか。では、2005年1月安値から、ボトムを数え、値動きをサイクルとして捉えてみよう。2005年1月14日~2006年5月17日~2007年8月17日、つまりドル/円が15.16か月のサイクルを以って安値を形成してきた。言い換えれば、時には相場が結構リズムをとって、わかりやすいものだ。仮にわれわれが一回目のサイクルの周期と下げ幅を注意深く利用すれば、7月以来の下げ相場を概ね予測できた上、下げ幅もあらかじめ計算できたはず。例えファンダメンタルズを一切無視しても。

相場の美学との表現もあるように、神の見えざる手によって探られる値動きが神秘的な美が潜める。その美しさを感じ取れることは所謂「相場師の感」である。