蕎麦彷徨

ひとりの素人が蕎麦について考えてきたことを書きしるすブログ

栽培 (71)

2007-01-25 | 栽培
④ 育種について

現在日本で最高の品種と評され、有名な蕎麦店が買い付けに走る「常陸秋そば」は、本当に美味しいだろうか。私にはそうは思えない。

確かに、「常陸秋そば」は他のソバに比べて、「豊潤でコク」がある。しかし、最高のほめ言葉で用いるそれではない。「豊潤でコク」があるといっても、差異があってもよいと私は考えているのだが、諸手を挙げて賛美したいその言葉ではない。
「常陸秋そば」が最も評価できる点は、粘りけがあることである。そばきりにする際には、この点は実によい。上手く打たなければ、固いコシがでてしまうほどである。かつて、上手く打てなかった私の「常陸秋そば」の蕎麦を「ゴムのようだ」と形容した人がいる。

「常陸秋そば」の最大の弱点は、香りが乏しいことである。

それでは、一体常陸秋そばは、どのようにして「生まれた」のだろうか。
私は、「常陸秋そば」の開発過程を記した「ソバ新奨励品種『常陸秋そば』について」という論文を読んだ。それによれば、「常陸秋そば」は、「金砂郷在来」を選抜系統栽培した結果、その名が附され1985年に茨城県の奨励品種に指定されたものである。

私の最大の関心事は、どのような形質を持つ品種として固定されていったかという点であるが、この論文には「選抜目標」が次のように記載されている。以下引用。
「選抜目標は①赤花の混入を無くする。②矢羽根のついた粒や稜の部分が角張った鋭角の粒を無くする。③果皮色が黒褐~黒の粒に揃える。④粒を大きくする。⑤その結果、粒揃いを良くし、見た目の品質と製粉歩合を高める、ことをねらいとした。」

私は、これを読んで唖然とした。美味いそばを開発しようという思想など微塵もないではないか。




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