野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

名前通りのねじれがかわいいネジバナ

2019年06月23日 06時56分53秒 | 

小さなピンクと白の花がねじれてつくネジバナ。名前と姿形がぴったりなので、知らない人にこの花の名前は何と聞くと、半分くらいの人はきっとこれに近い名前を挙げるのではないかと思うほどだ。昔はどこでもみたものだが、公園の野原でやっとみつけた。

別名はもじずりだが、古今和歌集の「みちのくの 忍ぶもちずり 誰ゆえに みだれそめにし 我ならなくに」(河原左大臣 源融)のもじずりは草木染の技法のことで違うものらしい。
花は右巻きと左巻きがあるそうだが、どちらも同じ比率ででるというのも珍しい。写真の花は左巻きだが。

(2019-06 川崎市 公園)

ネジバナ

ネジバナ(捩花、学名:Spiranthes sinensis var. amoena)は、ラン科ネジバナ属の小型の多年草。別名がモジズリ(綟摺)。

特徴
湿っていて日当たりの良い、背の低い草地に良く生育する。花色は通常桃色で、小さな花を多数細長い花茎に密着させるようにつけるが、その花が花茎の周りに螺旋状に並んで咲く「ねじれた花序」が和名の由来である。「ネジレバナ」、「ネジリバナ」、「ねじり草(そう)」とも呼ばれる事もある。学名のSpiranthes(スピランセス)は、ギリシャ語の 「speira(螺旋(らせん))+anthos(花)」に由来する。右巻きと左巻きの両方があり、中には花序がねじれない個体や、途中でねじれ方が変わる個体もある。右巻きと左巻きの比率は大体1対1である。

花茎から伸びる子房は緑色で、茎に沿って上に伸び、その先端につく花は真横に向かって咲く。花茎の高さは10-40 cm。花は小さく、5弁がピンク、唇弁が白。花のつく位置が茎の周りに螺旋状であるため、花茎の周りにピンクの花が螺旋階段のように並ぶことになる。この螺旋は右巻きと左巻きの両方が見られる。コハナバチのような小形のハナバチなどが花粉塊を運んで他花受粉が起こる。訪花昆虫が入り込めない隔離温室内などで開花した個体の場合、基本的にはほとんど結実がみられない。しかし長期にわたって花粉塊が運び去られないと、これが崩壊して柱頭に降りかかり、自家受粉を成立させる場合もあることが知られている。開花時期は4-9月。

葉は柔らかく厚みがあり、根出状に数枚つける。冬期は楕円形だが生育期間中は細長く伸びる。根は極めて太短く、細めのサツマイモのような形で数本しかない。ごく稀に真っ白い花をつける個体(シロネジバナ、シロバナモジズリ)が見られ、園芸愛好家に好まれる。

生育環境
日本全土、ヨーロッパ東部からシベリアにかけて、温帯・熱帯アジア全域、オセアニアなどに広く分布する。

ラン科ではめずらしく、芝生や土手、都市公園等の人間の生活圏に近い所で普通に見ることができる。この為、ともすれば花の綺麗な雑草として扱われ、芝刈り機で刈り取られてしまう。他方、その花の可愛らしさから、昔から愛でられ、愛好家主催の展示即売会等で、山野草として販売される事もある。昭和の終わり頃、当時の野性ランブームの中で管状の葉や斑入りなどの変異個体を収集するのが流行したが、後述のように単独栽培や株分けによるクローン増殖が困難なこともあって、ごく一部を除いて保存されていない。

 

俳句では捩花やもじずりとして夏の季語になっている。「捩花のまことねぢれてゐたるかな 草間時彦」は、ネジバナのを初めて見た人の驚きがよく表現されている。「捩花の影も捩れてをりにけり 高須賀恵美子」は観察が細かい(笑)。

 

捩花 

おもはゆき捩花の辺に汝と坐る 高澤良一 素抱 
千木屋根に咲く捩花も神の国 岡部六弥太
山男くる捩花の小鉢提げ 高井北杜
恭仁京阯捩花芝を描きにけり 金久美智子
捩花のういういしさがこみあげる 高澤良一 素抱 
捩花のどれも動力尽きしさま 高澤良一 ももすずめ 
捩花のほどよく捩れ蟻のぼる 渡邊千枝子
捩花のまことねぢれてゐたるかな 草間時彦
捩花のもののはづみのねぢれかな 宮津昭彦
捩花の一本に風旅の僧 加藤三七子
捩花の妻得てあれから四十年 高澤良一 素抱 
捩花の影も捩れてをりにけり 高須賀恵美子
捩花の根がぶち切れて口惜しかり 高澤良一 素抱 
捩花の翩翻梅雨の中休み 高澤良一 随笑 
捩花は糸の如くに咲きのぼる 脇田裕司
捩花を挿し正面を決めにけり 日原傳
捩花を降り来し蟻と思ひけり 大串章
捩花地に音たてて雨降り来 鈴木貞雄
昏々と愛捩花に子が生る 栗林千津
遠ざかる遍路の鈴や捩花 有馬朗人
青芝の中なる捩花いっぽんに 背景は消えゆきゆきて夕 吉野裕之
ねぢ花をゆかしと思へ峡燕 角川源義
ねぢ花の野をおのおのの腓かな 岡井省二
ねぢ花の枯れても縒の戻らぬよ 樋笠文
芭蕉曾良もじずり草の長短か 百合山羽公
もじずりの花に霧ゆく療養所 竹内水居
もじずりの花の恋歌なかりしや 大谷ふみ子
もじずりの咲きて目洗地蔵道 西居 浩
仏彫る里にもじずり咲きにけり 林徹


淡いピンクのグラデーションが魅力的なベニガク (紫陽花シリーズ1)

2019年06月22日 07時12分02秒 | 

ガクアジサイのうちでも、淡いピンクのグラデーションが魅力的なベニガク。路傍でもよくみかけるようになった。もともとはヤマアジサイをベースにしたもので、江戸時代から栽培されているという。

一目でアピールする熱帯植物のような強さはないが、色のニュアンスがよく出る紫陽花は、日本の風土によくあっている。しばらく神代植物公園のあじさい園のあじさいたちを紹介しながら、さまざまな品種のあじさいに登場してもらうことにしよう。題して「紫陽花シリーズ」。まずはガクアジサイの系統から。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 



ベニガク

所属:ユキノシタ科 アジサイ属 

学名:Hydrangea macrophylla f.japonica Ohwi
特性: コガクウツギに同じであるが、花の色が初め白色、次に淡紅、最後に紅色となり七変化と云い、額花中随一のものである。
備考: ガクアジサイの品種の一つで、外にアジサイ、サワアジサイ、アマチャ、アマギアマチャなどがあり、園芸変種としてフイリアジサイがある。
開花時期: 5~7月
果実成熟期: 10月

 


風に揺れて儚げなキキョウソウ

2019年06月22日 06時31分38秒 | 

キキョウに似た小さな紫の花をつけるキキョウソウ。
一番上に一つだけ花を開き、あとは閉鎖花なるヒナノキキョウソウとは違って、一本の茎にいくつかもの花をつける。それでも風に揺れて、儚げな花であることに変わりはない。寂しげな風情が魅力的だ。
アメリカ・インディアンたちは薬草あるいは毒草として使ったらしいが。

(2019-06 東京都 神代植物公園)

キキョウソウ

キキョウソウ(桔梗草、学名:Triodanis perfoliata、英名:Common Venus' looking-glass)は 北アメリカ・南アメリカに自生するキキョウ科の一年生植物。自生域はカナダからアルゼンチンにおよび、中国、韓国 、オーストラリアに帰化している。日本では福島県以南に移入分布し、道端や公園の空き地などに群生する。別名はダンダンキキョウ。

特徴
花は車形花冠または鐘形花冠で青紫色。放射対称な5弁の花冠を持つ。葉は幅6ミリメートルから25ミリメートルで鈍鋸歯を持つ貝殻型。高さ15から45センチメートルで5月から8月に開花する。小さな蒴果を多く付ける。

アメリカ先住民族による利用
チェロキー族は過食による消化不良に根の液体混合物を服用し、煎じた根を入浴に用いる。

メスクワキ族は一日中病気にさせるための嘔吐剤として使用し、儀式の際に喫煙する。

 


高いところで風にそよぐ石斛の花

2019年06月21日 09時30分58秒 | 

昨日ご紹介した高尾山のセッコクは、野草園だけではなく、ケーブル駅のすぐ近くでも咲いていた。ここは大きな木に群生していて、圧巻である。たくさん群れている写真と、咲きこぼれている写真をご覧にいれる。

 

次は群生しているところを。つくづく不思議な花だと感じる。

俳句では石斛の花が夏の季語である。手の届かない高いところに咲くので、風情がある。

「石斛の花に風あり高きより 池上不二子」。

(2019-06 東京都 高尾山)

セッコク
開花時期 5月、6月
花の色 白、ピンク
名前の読み せっこく
分布 本州の東北地方から九州
海外では、中国にも分布
生育地 山中の樹木や岩の上
植物のタイプ 多年草
大きさ・高さ 5~25センチ
分類 ラン科 セッコク属
学名 Dendrobium moniliforme
花の特徴 茎の節ごとに花径2~3センチの花をつける。
花の色は白ないし淡い紅紫色である。
萼片3枚と側花弁2枚はほぼ同じ長さである。
唇弁はやや短く、先が尖る。
葉の特徴 葉は幅の広い披針形で、互い違いに生える(互生)。
葉のつけ根の部分には葉鞘(茎を鞘状に包むような形になった葉のつけ根)があり、茎を抱く。
実の特徴 花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)である。
この花について ―
その他 園芸品種のことを長生蘭(チョウセイラン)と言い、美しいものや特殊なものが多い。
蕾のときに全草を乾燥させたものを生薬で石斛(せっこく)といい、健胃、解熱、消炎、強壮などの薬効がある。
俳句では「石斛の花」が夏の季語である。

 

石斛の花

声あげて石斛の香を感じをり 加藤楸邨
石斛に庭の歳月たゞならず 秋吉方子
石斛に瀑落つる巌のはざまかな 松瀬青々
石斛の花に風あり高きより 池上不二子
石斛の花のをはりし一字塔 安食彰彦(白魚火)
石斛の花の白きに雨上る 金堂豊子
石斛の花を宿してみな古木 古沢京
石斛の花咲き垂るる雲の中 高橋悦男
石斛の花海境の照りわたり 黒田杏子 花下草上
石斛や崖めぐらせて宮家住む 小谷久子
石斛や朝雲ひかる峰の寺 高田蝶衣「青垣山」
老杉の枝の石斛七星めく 田中英子


宝石のような白い花をこぼすオカトラノオ

2019年06月21日 07時58分40秒 | 

昔はよくみかけたものだが、最近はあまりみなくなったオカトラノオ。
近くの道端でみつけてうれしくなった。あまり虎の尻尾にはみえないが、白い花が雪崩れるようにこぼれて、宝石のようにもみえる。散歩する者にとってはうれしい贈り物だ。
俳句の世界では虎尾草として夏の季語になっている。「とらのをの尾の短きへ日が跳ねて 大石悦子」。日の光をあびているトラノオの姿をよく表している。

(2019-06 川崎市 路傍)

オカトラノオ

オカトラノオは平地から低い山地の日当たりのよい草地や道端に見られる多年草です。冬は地上部が枯れます。茎はまっすぐに立ち上がり、多数の卵形の葉をつけます。茎の先端に長さ15cm前後の花穂をつけ、多数の花を咲かせます。花穂は途中で横向きに曲がっているのが特徴です。葉や茎に短い毛があります。地下に細長い地下茎が多数あり、これを伸ばしてふえていきます。そのため群生しているのが普通です。

※科名:ヤブコウジ科で分類される場合もあります。

基本データ

園芸分類 草花,山野草

形態 多年草 原産地 ロシア東部から朝鮮半島、日本列島、中国東部から南部、台湾

草丈/樹高 40~100cm 開花期 7月~8月

花色 白 

 

虎尾草

やまかぜに堪へ虎尾草に目をおとす 瀧春一 菜園
夕虹や虎尾草はまだをさなかり 青柳志解樹
白揺れて少し虎尾草らしくなる 山田庄蜂
虎尾草に水やり一日外へ出ず 小熊一人
虎尾草に黒姫山の霧匂ふ 亀田英子
虎尾草のはつかなものを蝶が吸ふ 藤田湘子
虎尾草の咲くべく木曽の高曇 宮坂静生
虎尾草の思ひ思ひに尾を振りし 斎藤 幸一
虎尾草の風に払子を振るごとし 高澤良一 さざなみやっこ 
虎尾草や日の通りみち子が通る 磯貝碧蹄館
虎尾草や鐘掛岸は屏風立ち 本田一杉
とらのをの尾の短きへ日が跳ねて 大石悦子

 


木に着生するラン科のセッコクの優雅な花

2019年06月20日 07時56分15秒 | 

木に着生する蘭のセッコクの花が、六月初めの高尾山でまだ咲いていた。五月にいったときに撮影し損ねていたので、うれしかった。最初の白い花の写真は野草園のもの。次のピンクの花の写真はさる園のもの。優雅な花で、人気も高いらしい。

(2019-06 東京都 高尾山)

 

 

セッコク
セッコク(石斛、学名:Dendrobium moniliforme)は、単子葉植物ラン科の植物。日本の中部以南に分布する。岩の上や大木に着生する着生植物である。

概説
茎は細長く、堅く、始めは緑色を帯び、通常は後に黒紫色になる。多数の節があり、節ごとに出る葉の基部の鞘に包まれる。一年目の茎には節ごとに葉がある。葉は細い楕円形で、厚くやや堅く、つやがある。葉は年の終わりには葉鞘との間で脱落する。新しい芽は古い茎の基部から横に顔を出す。また、茎の先の方から新しい芽が伸び、その根元から根を生じる形で新しい個体ができることもある。

大きさが十分であれば、葉のなくなった茎は、次の年に花を咲かせる。花は、茎の先端に近い数節から出る。各節からは、短い花茎が出て、そこから数個の花を咲かせる。花は赤紫がかった白の花弁で、よい香りがする。唇弁以外の五弁は、いずれも同じくらいの大きさの卵状楕円形、先端はややとがる。唇弁は外見は他の花弁と似たような形で、ただし蕊柱との間の奥の方にくぼみが入り込み、短い距を作る。側弁の基部が下側の外でこれにつながっている。

花が咲いた後も茎は数年間生き残り、場合によっては大きな株になる。

名称及び利用
セッコクは漢字では石斛で、本来は中国産の近似種(D. crispulum、D. Kwantungenseなど)に当てられた名称であり、健胃、強壮作用などがあり、漢方薬として用いられる (現在は、細葉石斛D. hancockiiなども使われる。) 。

日本名は、そのまま音読みにしたセキコクが使われる場合もあるが、セッコクを使う場合のほうがはるかに多い。セッコクはセキコクが詰まったものと思われる。また、薬用にされることから記紀神話の医療神である少彦名命(すくなひこなのみこと)にちなみ、少彦薬根(すくなひこなのくすね)の古名も持つ。

シノブ玉やイワヒバの鉢植え、庭木につけるなどの形で栽培される。 また、野生で発見される葉変わり品などを選別・命名する形で江戸時代より古典園芸植物としても栽培された歴史があり、現在も栽培されている品種が多い。東洋ランとしての名称は、長生蘭(ちょうせいらん)である。主として葉変わり、姿や模様の変化を楽しむ、いわゆる柄物が主体であったが、昭和の終わりころより花変わりにも関心が集まるようになり、花物の品種も登録されている。同様に古典植物として栽培される着生ランのフウラン(富貴蘭)と異なり、株分けや、古い茎を切り離してミズゴケの中で腋芽の発芽を促す「矢伏せ」により、株の増殖は容易である。

ただし、このような栽培のための採集によって、野外の個体数は激減し、大株を見ることはほとんどなくなっている。昭和50年代までは神社の境内の木に大株が見られることもあったが、現在ではそのようなものはすべて取り尽くされた。幸いに、繁殖力の弱いものではないので、採集熱が冷めるにつれ、次第に回復の気配があるようである。

同属の熱帯産の種には、洋ランのデンドロビウムとして栽培されるものが多く含まれ、セッコクもデンドロビウムの園芸品種のうち、矮性品種作出の交配親のひとつとなっている。

 


宵待草のやるせなさ

2019年06月20日 05時59分25秒 | 

待てど暮らせど 来ぬひとを 宵待草の やるせなさ 今宵は月も 出ぬそうな

という竹久夢二の歌で懐かしいマツヨイグサだが、最近では見かけることが少なくなって寂しい。
大マツヨイグサとメマツヨイグサはしぼむと赤くならないらしいので、これはマツヨイグサらしいのだが。

俳句の世界では白の月見草と一緒に歌われている。ヒルザキツキミソウに似た月見草も最近みかけなくなって寂しい。「人の世に月見草あり夜明あり 星野立子」

(2019-06 川崎市 路傍)

 

 

 

 

マツヨイグサ

マツヨイグサ(待宵草、学名:Oenothera stricta)は、アカバナ科マツヨイグサ属の一年草。

分布
原産地はチリやアルゼンチンといった南米で、嘉永年間(1848年?1853年)に日本にもたらされ、当初観賞用として植えられていたものが逸出し、昭和30年代に同属のオオマツヨイグサ O. erythrosepala とともに空き地などに大群落を形成した。しかし近年はこれも同属のメマツヨイグサ O. biennis に押され、姿を見る機会は減った。

生態
オオマツヨイグサ O. erythrosepala と似た環境に自生するので紛らわしいが、オオマツヨイグサに較べ丈が低く、葉が細いことから区別できる。

 

月見草 の例句


「古妻」ならで「経る妻」なるぞ月見草 中村草田男
「夜」を盗むたぐひか月見草摘みぬ 中村草田男
かの母子の子は寝つらんか月見草 中村草田男
こよひ咲かん晩翠草堂月見草 山口青邨
さゆらぎは開く力よ月見草 稲畑汀子
とびかかる焜炉の火の粉月見草 富安風生
とぶ虻に花粉の糸や月見草 高野素十
どの花も旦のあはれ月見草 飴山實 句集外
ひとを訪はずば自己なき男月見草 中村草田男
み仏の前に二輪や月見草 高野素十
わかものゝ口笛娯し月見草 日野草城
わが心海より昏し月見草 福田蓼汀 山火
アセチレン瓦斯の手入よ月見草 茅舎
ゴルフ場斜面 その月見草までは刈るな 伊丹三樹彦
デスマスク白きを拝す月見草 山口青邨
ポイントマン走り転轍月見草 山口青邨
モンペ脱ぎ夜の裳ゆるらか月見草 香西照雄 素心
一つ蛾に浜の月見草みなひらく 林翔 和紙
一面といふ月見草今は枯れ 深見けん二
下といふは吉田のことよ月見草 山口青邨
不知火の見ゆとふ岬の月見草 藤田湘子 神楽
乳牛と炭焼く人と月見草 金子兜太
人の世に月見草あり夜明あり 星野立子
人をらぬ時月見草蛾を誘ふ 山口青邨
今日の花やうやく動く月見草 高浜年尾
別棟へ一人寝にゆく月見草 松本たかし
刻と相関して月見草ひらく 上野泰
北斗露の如し咲きすむ月見草 渡邊水巴 白日
咲ききりし花の明るさ月見草 高浜年尾
咲ききりて動きやまずよ月見草 星野立子
城草のしげるがままに月見草 山口青邨
夜の燈も乏しき村や月見草 香西照雄 素心
夜の雷雨朝も降りつぐ月見草 水原秋櫻子 残鐘
夜振火に浮みいでたり月見草 日野草城
天地のあひびき長し月見草 三橋鷹女
天地の一興月見草ひらく 上野泰
女客あり月見草こよひ咲くか 山口青邨
女立つ時男立つ時月見草 山口青邨
宵待草ぱつちり闇に戦見つむ 香西照雄 対話
宵待草河原の果に落ちこむ日 鬼城
富士の霧圧倒し来る月見草 富安風生
工員は下駄履きが好き月見草 後藤比奈夫
床頭台暗し月見草が欲し 岸田稚魚 紅葉山
影絵劇一団下車す月見草 山口青邨
思ひ出のひとつふたつは月見草 加藤秋邨
明笛鳴り軍艦通る月見草 中村草田男
星流れつぎ月見草開きつぎ 上野泰
晩涼の月見草皆咲き終る 松本たかし
暁の雲ほぐれゆく月見草 清崎敏郎
月あらぬ空の澄みやう月見草 臼田亜浪 定本亜浪句集
月の穢に妙にも黄なる月見草 松本たかし
月出でぬ月見草咲き蛾とびかひ 星野立子
月明の蛾の跳梁や月見草 松本たかし
月見草 麦藁帽で誰か 来ぬか 伊丹三樹彦
月見草うち伏すままに丘の雨 水原秋櫻子 緑雲
月見草かく美しき宵ありき 星野立子
月見草かの家もかく咲きゐるか(たまたま庭前に簇生した純生種を来訪の諸友に分株) 飯田龍太
月見草ここで折れてはおしまひよ 飯島晴子
月見草だんだん昼となりゆく黄 山口青邨
月見草には宵といふ目覚あり 稲畑汀子
月見草に月尚さゝず松の下 杉田久女
月見草のつぼみのさきに花粉かな 高野素十
月見草はなれ~に夜明けたり 渡邊水巴 白日
月見草はらりと地球うらがへる 三橋鷹女
月見草は月の輪の渡しにもさいていよう福島につく 荻原井泉水
月見草ばかりを見よと利根の宿 山口青邨
月見草ぼうぼうとたくたなごころ 飯島晴子
月見草ゆれつつ宵を待つてをり 上野泰
月見草よべあまた咲きしことをいま 山口青邨
月見草ランプのごとし夜明け前 茅舎
月見草レールも歯止石も錆び 鷹羽狩行
月見草一刀あらば野を拓く 古舘曹人 能登の蛙
月見草初花一花凛々と 山口青邨
月見草別るるときを摘まれけり 大野林火 海門 昭和十年
月見草別れてのちの山霧は 臼田亜浪 旅人 抄
月見草咲きこぞりけり月一つ 松本たかし
月見草咲きそむあはれ雨の中 水原秋櫻子 浮葉抄
月見草咲くころ着けば人親し 山口青邨
月見草咲くと欅や夕炊ぎ 松本たかし
月見草咲くまでけふの女客 山口青邨
月見草咲くまで君をかへすまじ 山口青邨
月見草咲く野を供華の心もて 稲畑汀子
月見草四五歩離れて相言はず 大野林火 冬青集 海門以後
月見草墓前をかすめ日雨ふる 飯田蛇笏 霊芝
月見草夕月よりも濃くひらき 安住敦
月見草夜発ちの船のさみしさよ 汀女
月見草大輪能登の夜をありく 前田普羅 能登蒼し
月見草太陽は今沖にゆらぎ 高田風人子
月見草川上の雲雑然と 廣瀬直人 帰路
月見草己が朝影置きにけり 清崎敏郎
月見草旦の露のみどりなる 茅舎
月見草明日咲く蕾無くなれり 津田清子
月見草昼もしぼまず草深く 山口青邨
月見草月のけはひのありそむる 日野草城
月見草梅雨の川波かむりけり 水原秋櫻子 緑雲
月見草梟の森すぐそこに 茅舎
月見草水車の生める風に咲く 大野林火 雪華 昭和三十六年
月見草汀があれば波寄せて 清崎敏郎
月見草流亡のわが蹇(あしなへ)に 佐藤鬼房
月見草浄らかに咲き月濁る 松本たかし
月見草湾を距てて山灯る 中村草田男
月見草潮もかなひて舟出人 大野林火 月魄集 昭和五十六年
月見草煤煙朝の海に降る 水原秋櫻子 残鐘
月見草牛は四肢より暮れそめて 藤田湘子 途上
月見草白沙を神の御前まで 前田普羅 能登蒼し
月見草百姓泣きしを思ひ出づ 石田波郷
月見草目路に人思ふ夕端居 山口青邨
月見草砂地は風の吹くままに 桂信子 新緑
月見草空を捻りてひらきけり 上野泰
月見草群がり咲きて尚淋し 上野泰
月見草花ひらく辺に門火燃ゆ 松村蒼石 雁
月見草萎れし門に帰省せり 前田普羅 普羅句集
月見草蘂あり~と暮れにけり 茅舎
月見草蘂さや~と更けにけり 川端茅舎
月見草蛾の口づけて開くなる 松本たかし
月見草蜜吸ふ火蛾の来ることも 高浜年尾
月見草話しゐて人遠きかな 岡本眸
月見草買物籠の女子寮生 大野林火 雪華 昭和三十八年
月見草跼めば水の音消えし 橋閒石 雪
月見草踏切番にいとまあり 木村蕪城 一位
月見草開きしときの夕明り 高浜年尾
月見草開く刹那の蒼白に 山口青邨
月見草闇に溺るる仔犬あり 草間時彦 中年
月見草闇馴れたれば船見ゆる 橋本多佳子
月見草雲の夕焼が地を照らす 橋本多佳子
月見草頭をすゑてすれちがふ 飯島晴子
月見草飯綱山は裾長し 大野林火 冬雁 昭和二十一年
月見草鳴瀬は遠くなりにけり 山口青邨
月見草黄色の帯にまぎれぬる 山口青邨
来年は来れるかどうか月見草 高田風人子
橋の上のまだ夕焼けて月見草 大野林火 冬雁 昭和二十一年
母のこと待宵草に雨降れば 燕雀 星野麥丘人
気力薄き者等引きあげ月見草 中村草田男
水かけて二の腕洗ふ月見草 岡本眸
水泳着しぼりほそめぬ月見草 原石鼎 花影
汝と我の間の月見草ひらく 上野泰 春潮
汽車煙熱きがかかる月見草 鷹羽狩行
洗髪乾きて軽し月見草 松本たかし
浅間大影真ッ向に暮れつ月見草 村山故郷
涼風や湖をうづめて月見草 百合山羽公 春園
湖に沿ふ駅のホームの月見草 清崎敏郎
漂流記読む椅子暮れぬ月見草 福田蓼汀 山火
潜水の四肢を見下ろす 月見草 伊丹三樹彦
燈の障子月見草色妻和むか 香西照雄 素心
牛の群歩き出す意ぞ月見草 古舘曹人 砂の音
白露やうしろむきなる月見草 茅舎
砂をふむ音ばかりなり月見草 日野草城
砂洲が支ふ国引きの岬月見草 松崎鉄之介
破船埋もれ待宵草を点す闇 佐藤鬼房
磯墓に みちあるなしの 月見草 伊丹三樹彦
竹割つた気性高きに月見草 古舘曹人 能登の蛙
荒地待宵草 稀には女来る 伊丹三樹彦
落葉松の露に立ち濡れ月見草 松本たかし
西山は雲のごとくに月見草 山口青邨
覚えあり待宵草の大磧 佐藤鬼房
記憶ほど咲かぬ岳麓月見草 稲畑汀子
車窓左右月見草にて降り出せり 大野林火 潺潺集 昭和四十年
遠き灯の一つ二つや月見草 日野草城
遠くまで灯は及ぶもの月見草 波多野爽波 鋪道の花
金の靴もすでに暮色や月見草 山口青邨
陽炎や砂より萌ゆる月見草 水原秋櫻子 葛飾
離陸せり夜を待つ月見草そこに 汀女
雨粒のそれかあらぬか月見草 飴山實 次の花
風のむきかはりつゝあり月見草 清崎敏郎
風ふるゝさきしばかりの月見草 清崎敏郎
馬柵つづくかぎり空ある月見草 桂信子 草樹
鰹船あげて明るし月見草 三橋鷹女
鴉描いて足がふくれたよ月見草 永田耕衣
黄の上に緑の露や月見草 茅舎

 


今の時期に貴重な白い花を咲かせるクマノミズキ

2019年06月19日 08時49分43秒 | 

クマノミズキがいたるところで花を開いている。
ミズキよりもおよそひと月ほど花期の遅いクマノミズキは、白い花が少なくなった時期だけに貴重だ。
写真のは神代植物公園のものだが、近くの公園でも花を開いていて、おやと思わせる。神代植物公園では数本のクマノミズキが天にそびえるほどに花をつけていて、圧巻だった。
(2019-06 東京都 神代植物公園)



クマノミズキ
クマノミズキ(熊野水木、学名:Swida macrophylla)はミズキ科ミズキ属の落葉高木。

特徴
樹高は8-12m。若枝はほぼ無毛で4-6の縦稜がある。葉は、長さ1-3cmの葉柄をもって枝に対生し、形は卵形または楕円形で、先端は長い鋭尖頭で基部はくさび形、縁は全縁。葉身の長さ6-16cm、幅3-7cmで、裏面はやや粉白色になる。

花期は6-7月。新枝の先に、径8-14cmの散房花序をつける。花は多数の白色4弁花。果期は10月。果実は核果で、径5mmほどの球形で紫黒色に熟す。

和名は、三重県熊野に産するミズキの意味。

分布と生育環境
日本では、本州、四国、九州に分布し、山地に自生する。アジアでは、朝鮮、台湾、中国、ヒマラヤ、アフガニスタンに分布する。




数世紀に及ぶ長い伝播の歴史をもつムラサキツユクサ

2019年06月19日 06時48分25秒 | 

あちこちでムラサキツユクサが咲き始めている。

新大陸原産でヨーロッパに伝わり、そこから世界各地に広まったという。唐辛子の伝播の歴史のように、植物の伝播の歴史はそれぞれの種ごとに固有の物語があって、掘り下げたら面白いのだろう。日本から伝えられた紫陽花の品種に、シーボルトが愛人だった遊女のお滝さんの名前をつけてotakusaとしたように。

かつてはどこでも見られた種だが、今では園芸種が増えて、白やピンクの花もあるという。いちどみてみたい。

(2019-06 川崎市 路傍)

 

ムラサキツユクサ

ムラサキツユクサ属(むらさきつゆくさぞく、学名:Tradescantia)とはツユクサ科の属の1つで、75種が認められる。別名はトラデスカンティア属。多年生の草本で、原産はカナダ南部からアルゼンチン北部にかけての新大陸で、西インド諸島にも分布する。17世紀にヨーロッパに園芸植物として伝わり、現在では世界各地で見ることができ、野生化していることもある。

この属は這うものもあるが、立ち上がって30-60cmになることもある。多くは花を朝に咲かせ昼にしおれるが、天候の影響も受ける。

細胞遺伝学的には、染色体の数と構造の進化の点で関心が持たれている。経済的には、園芸植物の他、雑草として農業の邪魔になる。また、環境中の変異原に対する指標生物として用いられることもある。

特徴
多年生草本で、這うものや立ち上がるものがあり、立ち上がるものは30-60cmに達する。葉は長く、肉質で、剣状から披針形、長さ3-45cmと種によって幅がある。花は青が多いが、白、ピンク、紫もあり、花弁は3枚、葯は黄色く6本あるが、稀に奇形をつくる。汁は粘性があり、透明。


大きなドングリをつけるマテバシイが満開になっていた

2019年06月18日 08時11分41秒 | 

大きなドングリをつけるマテバシイが満開になっていた。ドングリやシイの仲間たちと同じような花を咲かせる。大きなドングリはそのままで食べられる。ぼくは焼いて食べたことがあるが、まずまずの味だった。この時期のドングリやクリの木の花の香りは、むせ返るように強い。見えなくても、すぐにその位置が分かるほどである。

マテバシイの名前は、日本刀の短刀の馬手差しから来ているらしい。少し縦長なの葉が刀に似ているというわけだが、ハテ?

(2019-06 川崎市 路傍)

 

 

マテバシイ

マテバシイ(馬刀葉椎、全手葉椎)は、ブナ科の常緑高木である。学名 Lithocarpus edulis(シノニム Pasania edulis)。
学名の種小名の edulis は英語の edible に相当するラテン語の形容詞で「食べられる」という意味である。 和名は葉がマテガイに似たシイノキであるという意味だが、植物分類上はマテバシイはマテバシイ属に属し、シイノキが属するシイ属とは同じブナ科でも別属に分類されるため、葉や幹などの外見は似ているものの系統上はシイノキの近縁の別属である。日本に自生するマテバシイ属の植物は、本種とシリブカガシの2種のみである。

形態・生態
別名 マテバガシ、マテガシ、マタジイ、サツマジイ、アオジイ、トウジイ。
分布 日本固有種で九州から南西諸島の温暖な沿岸地に自生し、本州の房総半島の南端、紀伊半島に分布している。
樹高 15m
幹  暗褐青灰色、滑らか、若枝は無毛。
葉  互生、楕円形で全縁。厚く平滑で、光沢がある。
花  5~6月頃、黄褐色の10cm程度の雌雄花穂を結ぶ。雄花は皿状の花被から長い12本の雄蕊が突き出る。雌花は三つに分かれた雌蕊がある。
果実 堅果(どんぐり)で長楕円形、2年かけて熟す。
用途 
樹木 街路樹、防風樹、防火樹
材  建築材・器具材・木炭・薪
果実 実はタンニンをあまり含まないため、アク抜きを必要とせず、そのまま炒って食用になる。粉状に粉砕してクッキーの生地に混ぜて「縄文時代のクッキー」として味わうこともできる。


奇妙な配置で花をつけるサイハイラン

2019年06月18日 06時04分20秒 | 

 

奇妙な配置で花をつけるサイハイランは、キンランなどと同じように、栄養を菌類からもらう「部分的菌従属栄養植物」らしい。そのため葉は一枚しかつけないらしい。キンランやサイハイランが移植が難しいのも、そのためである。なかなか賢い植物ではある。采配というのは時代劇でしかみたことがないが、次のようなものらしい。

グンバイナズナの名前のもとになった軍配は、相撲などでもみるが、サイハイランの花はたしかに采配を思わせる。

(2019-06 東京都 高尾山)


サイハイラン

サイハイラン(采配蘭、学名:Cremastra appendiculata var. variabilis)は、ラン科サイハイラン属の多年草。

特徴
偽球茎は卵形。偽球茎の頂部につく越冬性の葉は狭長楕円形で革質、長さ15-35cm、幅3-5cmで先端は尖る。ふつう1葉がつく。葉の基部は鞘状になって茎を抱く。

花茎は直立し、高さは30-50cmになる。花期は5-6月で、淡紫褐色の花を総状花序に10-20花を下向きにつける。萼片と側花弁は線状披針形で長さ3-3.5cm、幅4-5mm、唇弁は長さ3cmで紅紫色になる。

分布と生育環境
日本では南千島、北海道、本州、四国、九州に分布し、山地の林床に自生する。アジアでは樺太南部、朝鮮南部、中国(本土および台湾)、ヒマラヤに分布する。

和名の由来は、花序の様子を戦場で指揮官が兵を指揮する采配に見立てたもの。

栽培
長期栽培や移植が難しい植物として知られる。採集・移植直後は偽鱗茎に蓄積された養分で順調に発育し、開花もする。しかし新しい偽鱗茎が肥大不良となり、多くの場合は数年で養分の蓄積が枯渇し衰弱枯死する。これは、サイハイランが生育に必要な養分を光合成以外に菌類からも得て生育する部分的菌従属栄養植物(Partial mycoheterotrophic plant)であるためと考えられる(参考:腐生植物>部分的菌従属栄養植物の項目を参照)。

近年、サイハイランの種子は担子菌門のナヨタケ科の菌種である、コキララタケCoprinellus domesticusにより発芽が促されることが、人工培養条件下で確認された。ナヨタケ科の菌種は、生育に必要な養分のすべてを菌根菌に依存するタシロランやイモネヤガラなどから菌根菌として検出されている。これらのラン科植物と菌根共生するナヨタケ科の菌種は、光合成することなく生育する菌従属栄養植物の生育を支えるだけの充分な養分供給能力を有している。さらに、タシロラン・サイハイランそれぞれから検出された菌根菌は分子系統解析の結果からも極めて近縁であることが明らかにされている。このような生態的特性から、サイハイランは緑色葉を有しつつ、菌従属栄養性を発達させる途上にある植物であると考えられる。

本種には「素心」(そしん:アントシアニン合成能力を欠く緑花個体=アオサイハイラン)や斑入り、「銀葉」と呼ばれる葉色変異など、数多くの変異個体が発見されており、栽培も試みられている。しかし、それらが栽培下で増殖に成功した事例は報告されていない。無菌播種はエビネ類に準じた培地・技法で可能だが、培養容器から出して開花株まで育成した報告は、研究・営利・趣味、いずれの分野においても確認できない。

園芸店などで販売品が見られるが、すべて野生採集個体であり、消費的に栽培されていると推定される。

保護
開発や園芸目的の採集で個体数は減少傾向にあり、埼玉県・千葉県で絶滅危惧II類、群馬・山梨・奈良・鹿児島各県で準絶滅危惧種に指定されている。栽培技術、移植技術ともに未確立であるため、現在のところ自生地保護以外に効果的な保護対策はない。


少しうなだれてみえるのがかわいいヒメシャラ

2019年06月17日 09時01分25秒 | 

ナツツバキによく似ているが、小振りなヒメシャラ。

花の外縁はナツツバキと同じように縮れている。

ナツツバキよりも多くの花をつけるので、重くなって少しうなだれてみえるので、かえってかわいい。そのため庭木としても好まれるらしい。

サルナメリの別名は、サルスベリと同じ意味で、木の肌がサルスベリに似ていてつるつるしていることによるもの。アカラギの別名は、木の肌が赤いことによるもの。

(2019-06 川崎市 路傍)

 

 

ヒメシャラ

ヒメシャラ(姫沙羅、学名:Stewartia monadelpha)はツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。ナツツバキに似るが花も葉も小ぶり。和名は誤って娑羅樹と伝えられたナツツバキよりも小さいことによるもので、サルナメリやアカラギという別名もある[2]。

特徴
垂直によく伸び、高さ15m、胸高直径90cmに達する。若木のうちは灰色の細かくざらついた樹皮であるが、成長するに従いこのような樹皮ははがれ、次第に赤褐色のごく薄い樹皮に変わる。この樹皮は細かい鱗状にはがれるが、全体としては明るい赤褐色のつるつるしたものに見え、森林内ではひときわ目立つものである。

葉は互生で短い柄があり、長さ5-8cm、葉身は楕円形から長楕円形、縁には低い鋸歯がある。葉は黄緑色で、全体に毛がある。

花期は7-8月。葉腋から1つずつ、小さな白い花を咲かせる。秋には紅葉になり、10-11月に濃褐色の実ができて種子ができる。

分布と生育環境
神奈川県から和歌山県までの本州太平洋側、四国南部、九州、屋久島に分布する日本特産種である[3]。暖帯上部から温帯域の山地に生育する。パイオニア的な性質を持ち、やや荒れた森林によく出現する。

利用
観賞用にもされており、剪定は通例3月に行われる。高温に弱いので、夏は遮光をし風通しのいい場所に置いた方が適当である。なお寒さには強い。 病害虫にはカイガラムシがよく出るが、通風をよくすれば抑えられる。原産は日本。


人間には人気がないが、蝶たちからは好まれるヤブガラシ

2019年06月17日 05時49分06秒 | 

人間には邪魔者あつかいされるヤブガラシ。

藪を枯らす草とか、貧乏をもってくるカズラなどと呼ばれているのはなんともかわいそうである。

花としては見栄えは悪いが、子供の頃に、この花によくアオスジアゲハが来ているのをみかけた。蝶たちには人気の花なのだ。

(2019-06 川崎市 路傍)


 

ヤブガラシ

ヤブガラシ(藪枯らし、Cayratia japonica)は、ブドウ科ヤブガラシ属の一種である。つる植物で、日本ではよく見かける雑草である。標準和名はヤブカラシ。

和名は藪を覆って枯らしてしまうほどの生育の旺盛さを示している。別名ビンボウカズラ(貧乏葛)とも呼ばれ、その意味としては、庭の手入れどころではない貧乏な人の住処に生い茂る、あるいはこの植物に絡まれた家屋が貧相に見える、またはこの植物が茂ったことが原因で貧乏になってしまう、などの意味に解釈されている。

特徴
多年草。道端、林縁、荒れ地などに生え、市街地では公園のフェンスなどによく絡まっている。

つるの長さは 2 ないし 3 メートル。葉と対生する巻きひげが伸びて他のものに巻き付き、覆い被さって葉を茂らせる。

葉は5枚の小葉からなる鳥足状複葉が互生する。それぞれの小葉は縁に鋸歯のある先のとがった卵形。

花は葉と対生する散房状の集散花序につき 6 - 8月ごろ徐々に開花する。花は直径約 5 ミリメートルで薄緑色の花弁4枚と雄蕊が4本雌蕊が1本ある。花弁と雄蕊は開花後半日ほどで散ってしまい、白色の雌蕊が中央に立った直径約 3 ミリメートルの橙色の花盤(盤状の花托)が残る。この花盤は蜜が豊富で、蜂や蝶などの昆虫がよく集まる。

分布
日本国外では東アジアから東南アジア、日本国内では北海道西南部から南西諸島まで分布する。関東以北はすべて3倍体で実を付けないが、中部以西には実を付ける2倍体がまじる[1]。球状の液果で、最初薄緑色のものが熟すとつやのある黒色になる。

人との関係
若芽は茹でてあく抜きすると食用になる。漢名は「烏歛苺(ウレンボ)」で、根は利尿・解毒・鎮痛などに薬効のある生薬として利用している[2]。

駆除が困難な草である。地上部を抜き取っても土中に根茎を残すと春から夏にかけて盛んに芽を出す。地下茎は横に長く伸びるため、一度広がってしまうと、その土地から完全に取り除くのは難事である。


この時期に貴重なナツツバキ

2019年06月16日 10時07分48秒 | 

この時期に椿に似た白い花を開く貴重なナツツバキ。
一日花であるのも潔い。別名の沙羅双樹からは、平家物語の冒頭「祗園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必滅の 理をあらはす」が懐かしく思い出される。
外縁が細かに縮れた花弁も可愛い。
(2019-06 川崎市 路傍)




ナツツバキ
ナツツバキ(夏椿、沙羅[2]、学名:Stewartia pseudocamellia)は、ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。別名はシャラノキ(娑羅樹)。

仏教の聖樹であるフタバガキ科の娑羅樹(さらのき)に擬せられ、この名がついたといわれる。

特徴
原産地は日本から朝鮮半島南部にかけてであり、日本では宮城県以西の本州、四国、九州に自生し、よく栽培もされる。樹高は10m程度になる。樹皮は帯紅色でツルツルしており「サルスベリ」の別名もある(石川県など)。葉は楕円形で、長さ10cm程度。ツバキのように肉厚の光沢のある葉ではなく、秋には落葉する。

花期は6月~7月初旬である。花の大きさは直径5cm程度で、花びらは5枚で白く雄しべの花糸が黄色い。朝に開花し、夕方には落花する一日花である。

ナツツバキより花の小さいヒメシャラ(Stewartia monadelpha)も山地に自生し、栽培もされる。

ナツツバキ属(Stewartia)は東アジアと北アメリカに8種ほど分布する。



立ち姿の美しいシライトソウ

2019年06月16日 05時57分11秒 | 
高尾山の野草園で咲いていたシライトソウ。
その繊細な花の形と立ち姿に感動する。
ブラシノキとは桁違いだ。
「雪の筆」という属名はすばらしい。
外国でもこの花の繊細さがよく理解されたということなのだろう。
(2019-06 東京都 高尾山)




花の部分のアップをご覧いただこう。




シライトソウ
シライトソウ(白糸草、学名:Chionographis japonica (Willd.) Maxim.[1])は、シュロソウ科シライトソウ属の野生の多年草である。和名は糸屑を束ねたような花の姿に由来する[2][3]。属名(Chionographis)は雪の筆を意味する[3]。スウェーデンのカール・ツンベルクによる『日本植物誌(Flora Japonica)』(1784年)で、この種が世界に紹介された[3]。

特徴
根茎はごく短く、ときに小規模な株立ちになり、根生葉をロゼット状に地表に広げる[2]。その姿はややショウジョウバカマに似ている。葉は先がやや広くなったサジ型、深緑色でつやはあまりない。全体で3-14 cm、葉柄は不明瞭、先端はあまりとがらない。

花期は4-7月[3]。細長い花茎を直立させ、高さは15-50 cm程になる。花はその上の方から数-10数 cm程にわたってつき、その部分の花茎は白っぽくなる。それ以下の部分には間隔を開けて数枚の線状の苞がある。全体としては枝分かれのない穂状である。花は下から順に咲く[3]。

花は6枚の花被片、6本の雄しべ、1つの雌しべを含むがそのうちで4枚の花弁以外はごく小さくて花茎に密着する。4枚の花弁だけは1 cm前後、細い匙型で先端がやや幅広い。花弁は花茎に対して大きい角度をもって立つように着き、それ以外の花の部品は目立たないので、外見的には個々の花は見分けられず、花茎から多数の細長い花弁が立っているように見え、真っ白なビン洗いのブラシが立ったような不思議な姿を見せる。また、香りもよい。

果実は楕円形で3-4 mm、種子は長楕円形で2-3 mm。果実が成熟する頃には花茎も緑色になる。

花の細部、6本の花被片にうち4本が長い

ロゼット状の根生葉から長い花茎が直立する

分布
韓国と日本に分布する[3]。国内では秋田県以西の本州、四国、九州の山地に分布する[2]。

林縁などの木陰からやや日当たりのよい場所にも生える[3]。草丈のごく低い植物なので、背の高い草地には出ない。山村では定期的に草刈りをする林縁などで見かけることも多いが、人為的撹乱の強いところに出ることはない。

利用
その花の不思議な姿と涼しげな様子を愛でられ、茶花として好まれてきた。山野草として栽培されることがあるが、それほど普及していない。