野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

装飾花に絞りのような質感があって、ユニークな「渥美絞り」(紫陽花シリーズ4)

2019年06月25日 09時56分18秒 | 

渥美絞りの「渥美」は土地の名前で、渥美地方で開発されたためだという。「愛知県の渥美地域(田原市)で栽培されている。この地域では40年以上の栽培の歴史があり、100種以上の品種が生産されているという。渥美絞り(アツミシボリ)はそうした中で生まれたオリジナル品種である」だそうである(園芸品種図鑑)。絞りという着物のデザインからの着想で、いかにも日本らしい命名だと思う。装飾花に絞りのような質感があって、ユニークだ。花の色どりの多彩さではなく、質感で勝負する珍しい品種だろう。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

 園芸品種図鑑

渥美絞り(アツミシボリ)はユキノシタ科アジサイ属(ヒドランゲア属)の落葉低木である。
分類体系によっては(APG第3版)アジサイ科とされる。
ヒドランゲア属はアジアと南北アメリカ大陸に70種くらいが分布する。
また多くの園芸品種が作出されている。(紫陽花図鑑参照)
日本でも紫陽花(アジサイ)などが栽培され、属名の和名はアジサイ属という。
本種は額紫陽花(ガクアジサイ)の系統の園芸品種である。
愛知県の渥美地域(田原市)で栽培されている。
この地域では40年以上の栽培の歴史があり、100種以上の品種が生産されているという。
渥美絞り(アツミシボリ)はそうした中で生まれたオリジナル品種である。
樹高は100センチから150センチくらいである。
葉は卵形で厚く、向かい合って生える(対生)。
葉に柊(ヒイラギ)のような粗いぎざぎざ(鋸歯)がある。
開花時期は5月から6月である。
花序の周辺には濃い青紫色の八重咲きの装飾花がある。
装飾花には白い絞りが入って複色となる。
中央部は両性花になっている。
両性花は花径1センチにも満たない5弁花である。
属名の Hydrangea はギリシャ語の「hydro(水)+angeion(容器)」からきている。さく果の形からから名づけられた。
種小名の macrophylla は「大きな葉の」という意味である。
品種名の normalis は「通常の」という意味である。
学名:Hydrangea macrophylla f. normalis 'Atsumi Shibori'

 

 

 


日本の風土にあったしっとりとした花を咲かせるギボウシ

2019年06月25日 07時35分50秒 | 

今どきはいたるところでギボウシが花を開いている。園芸種としても好まれているためだろう。写真のは神代植物公園のものだが、大きな株のオオバギボウシである。
名前のもとになった擬宝珠は、橋の欄干などについているネギの花に似た飾りのことだ。すぐに思い出せない人は、葱坊主とも呼ばれるロシアの寺院のドームの形を思い浮かべるとよい。蕾がこの擬宝珠に似ているというのだが、この蕾から擬宝珠を連想するのは難しいかも。
若芽はおいしいらしいのだが、有毒のバイケイソウと間違える人がときおりいて、中毒事故になる。今年の四月にもバイケイソウの「おすそわけ事故」が発生していので注意が必要だ。
日本からシーボルトによってヨーロッパに伝えられたというのも意外である。たしかに日本の風土によくあいそうなした涼しげで、しっとりとした花ではある。「涼しさやぎぼしの花をなぶる風 政岡子規 」。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

ギボウシ

ギボウシ(擬宝珠)は、キジカクシ科リュウゼツラン亜科ギボウシ属(学名: Hosta)の総称である。山間の湿地などに自生する多年草。食用となり、花が美しく、日陰でもよく育つため、栽培される。

新エングラー体系及びクロンキスト体系ではギボウシ属はユリ科 Liliaceae に含められていた。

名称
「ギボウシ」は擬宝珠(ぎぼうしゅ)の転訛であるが、これはこの植物のつぼみ、または包葉に包まれた若い花序が擬宝珠に似ることに由来する。ギンボ(青森県)、タキナ(高知県)などの地方名がある。英語名 plantain lily は「オオバコユリ」という意味であるが、これはギボウシの葉がオオバコに似ているためである。

形態・生態
葉は幅広く根元から出る。

夏に総状花序に青色(白色の品種もある)の細長い花をつけ、マルハナバチなど大型のハナバチの訪花によって受粉される。

果実は朔果で3裂するが、栽培品種には結実しないものもある。

分布
東アジア原産。

人間との関わり
食材
日本にはオオバギボウシ(Hosta montana または Hosta sieboldiana var. gigantea)など20種ほどが野生し、いずれも東北地方から中部地方の一部でウルイと呼び、西日本でもギボウシ、タキナなどの名で山菜として若芽、若葉などが利用される。ただし、若葉が毒草のバイケイソウに似ており、誤食事故が多いので注意を要する。スジギボウシ(Hosta undulata)やその他雑種などが栽培される。栽培品の主な産地は山形県で、薄い黄緑色の若芽を出荷し、サラダ、浅漬け、油炒め、味噌和え、酢味噌和え、味噌汁、混ぜご飯、巻き寿司などに利用する。食味に癖はなく、噛むと少しぬめりがある。

園芸
江戸時代の日本で変異個体が多数園芸品種として固定され、さらにこれがシーボルトらによってヨーロッパに紹介されてヨーロッパでも多くの品種が育成された。

花言葉は「落ち着き」「沈静」「静かな人」。



擬宝珠の花 の例句

その後のいよよ白さよ花擬宝珠 石田波郷
わが胸は小さくなりぬ花擬宝珠 石田波郷
七十の母が二人や花擬宝珠 弟子 星野麥丘人
光晴の死の擬宝珠咲くばかりかな 平井照敏 天上大風
宿もとめがたき地なるぞ花ぎぼし 角川源義
小房の花のぎぼし点々野は覚めつつ 古沢太穂 古沢太穂句集
山に木なし玉簪花花咲く滝の道 政岡子規 擬宝珠の花
旅ゆけば我招くがに擬宝珠咲く 角川源義
涼しさやぎぼしの花をなぶる風 政岡子規 涼し
石仏の百態ぎぼしの花終る 角川源義
絶壁に擬宝珠咲きむれ岩襖 杉田久女
花ぎぼし月光坂に息杖おとす 角川源義
草刈も影もさやけし花擬宝珠 藤田湘子 途上
露の碑のこれより木曾路擬宝珠咲く 角川源義
風吹てぎぼうしの花砕けり 政岡子規 擬宝珠の花
馬返はるかに朝の擬宝珠咲く 角川源義