ペーパードリーム

夢見る頃はとうに過ぎ去り、幸せの記憶だけが掌に残る。
見果てぬ夢を追ってどこまで彷徨えるだろう。

古くて新しい原発ドキュメンタリー

2011-06-29 03:34:55 | 暮らしあれこれ
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岩波ホールにて、緊急特別上映。
毎日16:50より1回限りの上映。6月13~30日まで。
二人の記録映画作家が見た原子力発電。
1「いま原子力発電は…」(1976年・羽田澄子監督)
2「原発切抜帖」(1982年・土本典昭監督)


前日の朝日新聞の天声人語に紹介されたこともあって、
16時前に整理券をもらいに行ったら、すでに82番目。
所用をすませて、10分前に岩波ホール10階にあがると、
なんと8階まで行列が延びているほどの大盛況ぶりだ。

これらの映画が撮られた30年も前から、
「嘘」は核を巡るキーワードのひとつだった。
現に今だって、いったい何が真実なのかわからないほどの情報が、
それぞれの思惑に厚塗りされて発信されている。
すべてを知ることができない私達は、
そのときたまたま知り得た知識を総合的に判断するしかない。
昔も今も同じ。

始業間もない福島第一原発に羽田監督は取材に向かう。
カメラは、観光施設として原子力発電所のプレートも新しいのどかな駅から、
最近ではもうすっかり見飽きた(なじんだ?)といってもいい
第一原発の立派な(そう見えたこともあっただろう)建物を映していく。

「最近、事故が多いと聞いていますが」と羽田監督。
「いえ、わたくしどもは、それは故障と位置づけております」とまじめに答える所長。
・・・って、この頃からかよ!? といきなり突っ込みたくなるような台詞に
会場から失笑が漏れる。

安全できれいな原子力発電は、夢のエネルギー。
事故の確率は50億分の1だとか、どんな事態にも対応できるだとか
本気でそう思っていたんだろうか?的な発言ばかりの原発擁護派。
一方で、使用済み核燃料廃棄物処理の未来や
原子炉の空焚きが起こったときの心配をする学者も登場する。
あのー、今作っても同じものができるんじゃないでしょうか?
35年前ですよね?これ。
私達はずーっと同じことを繰り返してきたのかしら?
少なくとも事故が起こってしまった今だから、
変えていけることがあるはずと思う。

『原発切抜帖』は、広島の原爆投下を報じる記事に
「私」の一人称で語られるナレーションがかぶる。
小沢昭一さんの軽妙な語り口が耳に心地よく、
つい聞き流してしまいそうになるが
実は痛烈な批判と皮肉のオンパレード。
会場からは、先にも増して冷めた忍び笑いがときどき。
1954年にビキニ環礁での水爆実験でアメリカが謝罪しなかったこと、
死の灰を浴びた第五福竜丸の乗組員は
具合が悪くても放射能が原因ではないといわれ続けたことなど、
なぜ?なぜ?という思いが今さらながら迫ってくる。
1797年のスリーマイル島の原発事故、1981年敦賀原発など
原子力発電所の事故に至るさまざまな事件報道を
朝日、毎日、読売、東京各新聞の切り抜きから浮かび上がらせていく
ドキュメンタリー手法は、対象が動かないだけに、かえって怖い。

2本あわせても60分強の上映はあっという間だった。
30年前から変わらぬメッセージを発していたのは
この二人の監督だけではないはず。
見て見ぬふり、考えないふりをしてきたことを
他人のせいにはできないですよね。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
50億分の1 (ふくろう)
2011-06-29 16:32:33
アンテナを張り巡らせて 情報をキャッチ?
そうして 即実行! 素晴らしいの一言。

情報の お裾分けを戴けるだけでも幸せです。

時間が許せば 観たかったです。
返信する
>50億分の1 (kikkoro)
2011-06-30 04:25:46
ふくろうさま

私の行動は定点観測ができない、と
家族からは評判悪いです~(笑)

でも新聞の威力はすごいですよね。
あれだけの人がすぐ集まる。
すぐにそんなドキュメンタリーを上映した岩波も立派。
どこかで引き続き上映すればいいのに・・・。
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