ペーパードリーム

夢見る頃はとうに過ぎ去り、幸せの記憶だけが掌に残る。
見果てぬ夢を追ってどこまで彷徨えるだろう。

160亀甲結城紬+栗繭紬帯

2013-01-31 01:12:58 | きものがたり
130128.mon.



「志の輔らくご in PARCO 2013」へ着ていったのは・・・

浅緑の160亀甲の結城紬。
帯は縁起物の石榴を染め抜いた暗緑色の栗繭紬。
半襟はベージュの刺繍柄。
帯揚は茶系の染柄。
帯締は潤朱~黄金色のぼかしの紬の丸ぐけ。
足袋は緑。
草履は緑の格子の鼻緒の畳表。

  

結城紬は、小千谷縮、越後上布、久留米絣、芭蕉布、宮古上布、久米島紬と共に
国の重要無形文化財に指定されている織物。
結城紬の場合、
1 糸は真綿より手紡ぎすること
2 絣くくりは手で行うこと
3 地機で織ること
この3つの条件を満たして初めて重要無形文化財といわれます。

現代では複雑な柄の結城紬も多くなりましたが、
究極は色無地かシンプルな柄に行きつきますね。
結城紬が絣を織り出すようになったのは、江戸時代末期から。
明治になると十字や井桁などが現れ、
亀甲絣は明治末期から大正初期にかけて盛んに織られたそう。
その亀甲とは、鯨差し九寸六分(約36センチ)の織巾に、
亀甲を一列に配列したとき、何個並ぶかでその精密さがわかるのだそうです。
一般的なのは80個、つまり80亀甲。
それが160個並ぶということは、
糸をくくる人も織る人も、相当の熟練者でなければ務まらないでしょうね。

もう10数年も前になりますが、鎌倉にこの着物を来ていったことがありました。
八幡通りの老舗のお菓子屋さんで買い物をしたところ、
「いい柄の着物を着ているね」と店主に声をかけられたことを覚えています。
着物にはそんな思い出が付いて回るから面白い。

普通のお蚕さまは桑の葉を食べて大きくなるのですが、
栗の葉を食べて育ったお蚕様が作るのが栗繭。
ざっくりと味わいのある織物です。

石榴は、日本では、種子が多いことから豊穣や子宝に恵まれる象徴で、
キリスト教では再生と不死に対する希望のシンボル。
だいぶ新年から遠ざかってしまった感はあるのですが、
やっぱり締めるのは今の時期でしょう。

・・・とまあ、今回は真面目にしっかり書いてしまいました。

忘れてはいけないこと

2013-01-30 02:54:16 | 暮らしあれこれ
130127.san.



神楽坂は赤城神社の参集殿にて、
普天間かおりさん&村山直子さんによる
東日本大震災復興支援チャリティーコンサート“さくら並木の道しるべ”。

小春日和の神楽坂を、三線友達のR姉と歩く。
今夏また三線教室の発表会があるという。
R姉はジャンベも続けているし、すごいね。
私なんて、もう二年は弦に触ってないから、
もう指も覚えてないかも、、、なんて話をしながら。

赤木神社の鳥居をくぐり、会場に入ると、ほぼ満席。
山形から届いたという啓翁桜が、ステージを飾っている。
過去の、また2年前の東日本大震災の記憶を風化させることなく、
そして後世へ伝えるべく、
今回の津波到達最終地点へ桜の植樹等の活動をしている
NPO法人さくら並木ネットワークが協力、とあるためだろうか。

最初に演奏するのは、リコーダー奏者の村山直子さん。
リコーダーって、ランドセルの脇にさしていたあれですよ、
なんて笑わせながら、
かわいいソプラノリコーダーから、
初めて見る大きなバスリコーダーまで、
自在に音を操る。
そもそもルネサンスからバロック音楽には欠かせない楽器なのだとかで、
お馴染みの日本の童謡から本家本元のクラシックまで、まさに自由自在。
小鳥のさえずりのような軽やかな音と、
彼女のしなやかな指先にうっとりしてしまう。

休憩を挟んで普天間かおりさんが登場。
彼女が最初に歌ったのが「芭蕉布」。
懐かしい。三線教室で初めの頃に習った曲だ。
民謡で聞いていたのとは全然違う~。(笑)
一気に力強い歌声に引き込まれる。

普天間さんは沖縄出身のシンガーソングライター。
2年前の3月11日、ラジオ福島の生放送中にあの地震に遭い、
「Smile Again 0311」支援プロジェクトを立ち上げて、
第2の故郷ともいえる福島と東北のために
このようなチャリティーコンサートや支援活動をしているのだという。

すべてを失くした人たちの前では、音楽は何の役に立たないと思った、
と彼女は語っていたが、そんなことは絶対にない。
「負けないで」「あきらめないで」「生き抜いて」・・・
ストレートに訴えかける言葉がこれほど胸に沁みわたるとは……。
懸命に歌いあげる彼女の姿に心打たれた午後でした。

忘れてはいけない大事なことがある。
思い出させてくれてありがとう。



「Smile Again」 作詞・作曲/普天間かおり

http://www.youtube.com/watch?v=1OZZ4Y_uTfY

三月 春の日 穏やかな午後でした
街も木々も人も みんな変わり果てました
すべてを失くした人の前に 言葉は役に立たなくて
それでも贈り続けたい あなたを励まし続けたい
負けないで 負けないで 生きてゆくことあきらめないで
がんばって がんばって たくさんの愛が見守っているよ
もう一度あなたが笑える日まで

大切な人を亡くした哀しみ
怖かったよね 不安だよね 抱きしめてあげたい
この世に神様はいるのかな 人生って一体何だろう?
それでも信じ続けたい あなたには立ち上がる強さがある
負けないで 負けないで 生きていてくれて本当に良かった
がんばろう がんばろう たくさんの愛とつながっているよ
もう一度あなたが笑える日まで

    (後略)

花びらほどく

2013-01-29 16:29:30 | 歌を詠む
山形県の啓翁桜は真冬に満開になるのだという。
日曜日の神楽坂、東日本大震災を支援する
‘桜並木の道しるべコンサート’会場は、
この可憐な桜の花で溢れていました。
いま、その一枝がキッチンで日向ぼっこしています。

 





希望へと花びらほどく冬桜

みちのくに冬咲くさくら琉球の歌姫の声にいよよ華やぐ

「負けないで」
歌声に乗り届け
冬咲く桜の香
ひとの心に
東北の空に





指先は語る

2013-01-27 08:11:01 | 美を巡る
130125.fri.
今年もまたこの季節がやってきた。
東京国際キルトフェスティバル。
この“布と針と糸の祭典”に、
連日、何万人という手芸愛好家が足を運ぶ。
初日で2万人、2日目でそれ以上と聞いたから
この土日はどれほどの熱気が
東京ドームからあふれるだろうか。

ベテランキルト作家の花岡瞳先生の作品は、
モノトーンでシンプル、
そして遊び心のスパイスをピリッと効かせて、
綿や麻だけでなく、ツイードなども駆使した
男前なものが多い。
カラフルで甘い、
あるいは緻密で素朴なというイメージが
多数を占めるキルト作品の中では、
独自のスタイルを確立している。



今年は「旅」というテーマで
ナチュラルなアースカラーでまとめた
優しい世界を見せてくれた。

普段から、身近なものを工夫して
おしゃれに生かすのがとってもお上手なのだが、
それがふんだんに作品に現れている。

靴下やブラウスの一部を効果的に配置した、
「旅立ち」をイメージした作品。
しばらく眺めていると、
甘酸っぱい記憶が蘇ってくるようだ。
それから、未知の世界への期待と少しの不安も。
「旅立ちの時はいつもまっさらな気持ちでいたい」
という花岡先生の想いが詰まった一枚。



お馴染み、各部門の日本キルト大賞から、
日本にもファンの多い
ターシャ・テューダーとルーシー・ボストンの
「ふたりの婦人の物語」、
長野富江さんの「野良着2000つぎ」、
新作キルト、パートナーシップキルト、ジュニアのキルト、
著名人の「わたしの手仕事スタイル」などの企画ものまで
一日ではとてもとても見きれないほど盛りだくさん。








共通するのは、基本のキルトはもちろん、
絵画的なもの、前衛アートのようなものもすべて
1本の針と糸から始まるということ。
そして、指先に想いを込めるということ。
昔も今も女性の指は雄弁だ。

冬の教会

2013-01-24 14:36:16 | 歌を詠む
130122.tue.

聖路加国際病院にて、細谷先生との打ち合わせの後、チャペルへ。
たいてい午後のこの時間は
パイプオルガンの練習の音が聞こえてくるのだが、
珍しく静まりかえっていた。
こんな日もいい。
天井が、高く高く感じられる。
売店の棚に置かれていた折り紙のシスターも
妙に可愛くて。

   
  


オルガンの響き届くや寒の空


短日の淡き光を透かしいるステンドグラスの青の静寂


見えぬものに
目を凝らし
聴こえぬ音に
耳を澄ます
冬の教会

米を研ぐ、ということ

2013-01-24 00:42:28 | 歌を詠む
130123.wed.


神楽坂にて書道のお稽古。
今年の書初めです。
先月、新しい年を迎えることなく
人生の幕を閉じられた歌友が三人いらっしゃいます。
その中の一人、古希のF氏は書友でもありました。

昨夏、病気がわかってから、
一切の治療も投薬も拒否され、
外部との連絡も絶ってしまわれたとのこと。
お洒落でダンディ、
お酒と友をこよなく愛し、
料理好きで、物静かで、
男っぽくて、肝が座ってて、、、
昨日の追悼歌会で出された、
北海道出身の好漢F氏を偲ぶ言葉の
なんて多様で温かいこと。
F氏が2001年の五行歌全国大会で
二席をとられたというお歌がこれです。

米を
研ぐ音が
大きい夜
母さんは
無口だった

長い筆を持って、
いつも静かに半紙に向かっていた
F氏を思い出しながら、
今日はこのお歌を書きました。

黙ってお米を研ぐお母さんの背中を
F少年はどんな気持ちで見ていたのでしょうか。
長じたF氏に、あの時のお母さんの思いが
どう蘇ってきたのでしょうか。
誰の胸にもあるノスタルジーをくすぐる
素晴らしいお歌だと思いました。



全然関係ないけど、米を研ぐ、で
こんな歌を作っていたのを思い出しました。
何年か前、とある料理店のレシピ本を作っていた時に
何気なく目にした店主の一瞬でした。

両手で包むように
米を
研ぐ
一瞬の仕草は
祈りにも似て

お米を研ぐことって
どこか神聖で、
なにか思いを浄化してくれるような
そんな気がします。
F氏のお母さんの気持ちはわからないけれど、
もしかしたら、その時そうすることで
心を静かにしていかれたのかもしれない、
そんな妄想が頭を過ぎったのでした。

Fさん、どうぞ安らかにお眠りください。

飽きるまで雪を蹴る。

2013-01-15 15:08:59 | 歌を詠む
130115.tue.

昨年、東北に行くために買った防寒ブーツを
今季初めて履いて、
用足しがてら近所を散歩。



雪だるま一夜の夢を融かしをり

細胞の一つひとつを放つごと空にのびする山茶花の赤

飽きるまで
雪を蹴ってから
「ママ~」
頬紅くした幼い勇者は
どんな報告をするのだろう


さむいね。

2013-01-14 14:00:58 | 歌を詠む
130114.mon.

吟行が昨日でよかったけど、
もしも今日だったら、
また違った句ができたかも。




天からの便りに庭も冬帽子

裸木も瞬くうちに外套をまとひて白き世界に溶けむ

「さむいね」
「そうだね」
窓いっぱいの雪
目で追いかける
室温23度の午下がり