ペーパードリーム

夢見る頃はとうに過ぎ去り、幸せの記憶だけが掌に残る。
見果てぬ夢を追ってどこまで彷徨えるだろう。

写真から問われること

2011-06-28 03:28:18 | 美を巡る
110615.wed.

「ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー」
       2011.04.09-06.26 (東京オペラシティアートギャラリー)


     「速度おとせ」
     ホンマタカシの写真から
     ハイウェイの標識が
     目に飛び込んできた
     それは 心の声だったか

第1室の「Tokyo and My Daughter」には
嘘の家族アルバムが並ぶ。
次の「Widows」も、
イタリアはジェノヴァの11人の未亡人達のスナップ写真。
それはまったく日常の風景で
誰が撮っても撮れるんじゃないか、と。

以前テレビで彼を見たとき、
被写体に媚びないことに驚いた。
篠山紀信氏とも梅佳代嬢とも違う
被写体へのスタンスが、なんて面白いのだろう、と。

今回の展覧会で、
イメージを少しだけ覆されたのは
猟師について入ったという雪山で撮られた作品。
白い雪面にぽつぽつと飛び散る血痕。
それは、猟師に仕留められた獣のものなのか、
はたまた赤い絵の具なのか?

一隅の壁に、赤い絵の具を使ったドローイングが数点。
明らかに意図的でしょ?
見る者の想像力をどこまで引き出そうとしているのか。

冒頭の「速度おとせ」の標識が見える作品は
「Together」と名づけられた一連の写真の中の一枚。
LAを取り囲む山に生息する大型野生動物の通り道を
追跡調査するプロジェクトで撮られた写真群。
写真と文章で構成された壁は、
開拓して作られた街並、遠く続くハイウェイ、高架の下の影、
動物の足跡、かろうじて残る自然などなどを描き出す。
ドライに、しかし、ときに人間くさく。

この部屋の床には、世界中の街の「M」=マクドナルドの店舗を
シルクスクリーンで表した作品が並べられていた。
被写体を忠実に写した写真ではないそれらから、
ホンマが見せたかったものは何なのか?

「写真は“真”を写すだけじゃない。
 写真は現実をとらえたものである。
 しかし、それは同時に、誰かに意図的に選び撮られたものであり、
 編集され、加工されたものかもしれない」
「決定的瞬間など存在せず、
 すべては等価値であるという認識こそが重要だ」(ホンマタカシ)

写真に問いかける、または問いかけられる面白さ。
ニュー・ドキュメンタリーと称された展覧会で、私が味わったこと。


     いつのまに
     特急列車に
     乗っていたのか
     景色が窓を飛び
     私はただ見送るだけ

もう10年以上も前になるが、
今の私より若いくらいだった大学教授のS先生にかわいがってもらった。
とにかく忙しい方で、バンバン仕事を引き受けては
バンバン片付けておられたスーパーウーマン。
彼女とはフランス各地を旅行をしたこともあったが、
そんななかで彼女がよく言っていた言葉。

「私の両側を、恐ろしいスピードで物事が過ぎ去っていくの。
 年をとるごとに加速する一方よ。
 貴女もきっとこれから実感するわ」

実感してます。S先生。
今日また、ホンマタカシにも言われちゃったみたい。

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2 コメント

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特急列車 (ぷりん)
2011-06-28 11:31:20
そうか~♪
先月の特急列車のお歌は
その先生のお言葉をヒントに生まれた
ものでしたのね~
「いつのまにか~」のフレーズが
ミステリアスなおもしろいお歌です。たしかに、時間はあっというまに過ぎていくようですが、
わたしのやってることは、
鈍行のいいところみたいで。とほほです~
キコさんのアクティブさを少しは
見習わないとね~
返信する
Unknown (kikkoro)
2011-06-28 13:18:00
ぷりんさま

ずーっとその言葉が耳を離れなくって
気がついたらそのとおりじゃん・・・と
特急列車を降りるのには勇気がいるだろうな、と思いつつ
そろそろ減速体制にはいらないとなあなんて思ってます~。
動体視力も落ちてきたことだしね
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