ことばを鍛え、思考を磨く 

長野市の小さな「私塾」発信。要約力、思考力、説明力など「学ぶ力」を伸ばすことを目指しています。

水を「あげる」?

2005年09月15日 | ことば・国語
花に水を「あげる」、水を「やる」、どちらを使いますか?
自分の子におもちゃを買って「あげる」?「やる」?
犬の餌の場合はどうですか?

文化庁の調査では若い層ほど「あげる」の使用が多く、特に女性で目立つそうです。
また、信州大名誉教授の馬瀬氏によると、学生の「あげる」の使用率は、

 ①「子どもにおやつをあげる」88%
 ②「花に水をあげる」     70%
 ③「先生に花をあげる」   66%
 ④「犬に餌をあげる」     62%
  であったということです。

私は実際には「あげる」も使いますが、正しくは花や犬には「やる」だと思っていました。
ただ、なぜかと聞かれれば、人間じゃないものに「あげる」では丁寧すぎるから....くらいの感覚でした。

ところが、「あげる」はりっぱな謙譲語なのですね....。
従って「先生」にこそ使われるべきで、他の3つに使ってはおかしいというのが本来のようです。


ではなぜ、こんなに「あげる」が連発されるのか....。

「やる」という言葉には「くれてやる」的な、どこか不遜な態度が感じられます。
高い立場から恵まれない者に「ほらよ!」と投げつける印象が拭えません。
そんな語感と「動物も植物も同じ生き物」的な過保護精神(?)によって、「あげる」派が増えてきたのではないでしょうか。
私はそんなに偉そうな態度はとらない、犬も花も大切にする心やさしい人なんだと自分で納得したい....そんな意識が垣間見えます。

おそらく、馬瀬氏も指摘しているように、「あげる」は謙譲語から丁寧語への道を歩んでいるのでしょう。
だから、先生に対して使うと敬意が不足している感じがするのだと思います。

因みに信州では、花に水を「くれる」という所が結構あります。
ラジオ番組の調査では県の北部から中部に多く、南部では「やる」が多いとのこと....。
私の地域の学校でも「水くれ当番」は標準語のように使われているし、松本の近くの美ヶ原には、牛に塩を与えた「塩くれ場」という地名が残っています。

「水くれ当番」や「水やり当番」も、やがて「水あげ当番」に変わって行くのでしょうか....。

みなさんは上記の①~④、どこまで「やる」を使いますか?
犬じゃなくて金魚やカブトムシならどうですか?



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