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失敗から学ぶか、成功から学ぶかという話題

2008-11-18 17:11:53 | 感想
学習の仕方について情動は認知に作用するのではと考えを巡らせているところで気になった記事に出会ったので、その感想をここに。

「社会的評価の連合学習」
Associative learning of social value : Abstract : Nature
誰をどの程度信用するべきかといった社会的な人間関係の評価で、ヒトはわりとシンプルな学習機構を利用しているらしい。ピンと来ないのだけれど、連合学習(Associative learning)というのがキーワードのようだ。
連合学習 - Google 検索
いろんな実験が行われていて興味をそそられた。
例えば、かなり原始的な生物でも連合学習の仕組みを持っていること。
連合学習の解析
情動よりもさらに原始的な生理現象として、報酬体験を行動に取り込む仕組みの方が先にあったということか。
視覚刺激と運動との連合学習の神経機構
サルに、いくつかの図形を提示されたときに一対一対応でそれぞれ特定の動作をするように訓練した後、使用した図形の内の一つを未知の図形に入れ替えて提示するとすぐには対応を修正できなかったけれど、数回から数十回の繰り返しで修正できたとのこと。

この結果が示唆するところで気になることが二点あった。まず、「図形の提示」→「(限定された)動作」とリンクさせるという部分での連合学習はスムーズに行われていること。過去に適用されたルールを踏襲しているのは一見自然なことのように思えるけれど、考えようによっては、全然違う動作やリアクションが要求されているのかもしれないと戸惑ってもいいはずの場面であるのに。一方で、入れ替えられなかった図形から差し引きすることで、未知の図形の動作を推測するという判断がなされなかった(らしい)。これが二点目。過去に学習したルールに則していることが推測されるなら、二、三回の内に、まず唯一対応を失った動作をそれに当てはめてみようとするものではないだろうか。ところが正解できるまでに数回から“数十回”掛かっているという点で、このような判断を下していないことが読み取れる。

学習刺激
Learning From Mistakes Only Works After Age 12, Study Suggests
失敗から学ぶか、成功から学ぶかという話。

被験者はあるコンピュータディスプレイ上のテスト(ゲーム)を行うように指示される。テストには二つの形(車と魚)、二つの色(赤と緑)の2x2の組み合わせが用意されており、そのうち、色を選択するか形を選択するか、二つのルールのどちらであるかを推測してタッチパネルで回答するようになっている。あるグループでは、まず、画面上に緑の車と赤の魚が提示され、続けて緑と赤の線が表示される。このとき被験者はどちらか一方の色を選択するように指示される。次に色と形のいずれかが入れ替えられたものが提示され、被験者はそれを色を基準にするか、形を基準にするか、ゲームのルールを予想して答える。ここで、正解であった場合に、動作を引き続き練習で繰り返させるグループと、不正解であった場合に引き続き繰り返しの練習を行わせるグループに分けて、その練習過程での被験者の脳の活動領域をfMRIで観察したというもの。
(実験方法の解読に充分な自信がなく、説明はかなり曖昧です)
成長過程にある8才から12才までの間に、脳の学習戦略が変化するという話。8才までは成功体験(ポジティブなフィードバック)から、「こうすればいい」というアプローチで自分の行為について学習する傾向が強いが、12才になるまでに失敗体験(ネガティブなフィードバック)から「こうしてはいけない」という行為を学習する能力が発達する。

非常に大胆に結論を活用するならば、小学校低学年までは、上手に褒めて能力を伸ばす方が効率よく、高学年になってからは叱る、間違いを指摘するということでより正確に物事を伝える教育方針を採ることができるということ。成功体験というよりも報酬体験という方が正確なのかな。アメとムチも年相応にバランスを取って、ということか。

褒められるか叱られるかという認知が、ソーシャルスキルの学習には最も影響が大きいものではないかと推測されるのだけれども。ソーシャルスキルの教育って、結局のところ多数派工作だといえるもので、所属の集団にとって快か不快かが基準になる。環境から学習する、周囲の人間の振舞から学習するというのは非常に自然な流れに思える。

しかし、自分は叱られることに一向に慣れないのですよね、これが。叱られても気にしない人や、ダメだしされても、自分に必要なことを吸収していける人の思考回路というか、学習メカニズムはどのように組み立てられてきたものなのだろう。単に、生まれついての連合学習の感度や傾向の差が現れているものなのだろうか。

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