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遺伝子操作トウモロコシの記事について。

2009-08-05 03:33:25 | 言及
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雅楽多blog : ここらで8/4の落ち穂拾い - livedoor Blog(ブログ)
(元記事)
ニュース - 科学&宇宙 - SOSを発する遺伝子操作トウモロコシ(記事全文) - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト

「感情的に受け入れがたい」というのはもう個人的なことですから、止むを得ないことなのですけれど、以前、遺伝子組み換え作物やその育種に関わっていた立場から、どうしても反応したくなってしまいました。

「これが胃に入る」の「これ」が、遺伝子操作されたトウモロコシを指すのか、導入された遺伝子なのか、酵素のことか、もしくは生成される揮発性の物質なのか、いろいろ想定されますが、仮にそのいずれが入るにしても、元になっている素材はオレガノに含まれていたものですので、カレーやイタリア料理に使われるスパイスとして、殆どの人にとって、すでにさんざん胃に入れているはずなのですよね。なので、個人的には、なぜそれが気になってしまうのだろうという疑問を抱いてしまいます。

この点、きっと記事の書き方一つでも印象は変わるのでしょうね。「害虫の天敵を惹き付けて身を守るトウモロコシを開発」「農薬が減らせる」「植物本来の防御機能」「スパイスでおなじみのオレガノの機能を利用」といった点を強調すれば良いのかなあ。どういった伝え方をすれば受け入れてもらい易くなるのだろうなあなどと考えてしまいます。

「感情的に受け入れられない」という反応に対して、研究者達は、何をクリアにすれば受け入れられるのかを問い、それに応えようとしている経緯があります。そういった要請の中で「作物が元々持っていた機能を取り戻す」というアプローチが今回なされました。

これは元記事(ナショナルジオグラフィック)に対する反発なのですけれど、そこでは、こういった背景には触れずに、

「ただし、本来備えていた能力であっても、それを人為的に取り戻すとなると、自然界に元々存在しなかった遺伝子を生み出す恐れもある。」

の一文でもって切り捨てられており、なんとも気の毒でなりません。元々存在しなかった遺伝子を生み出しながら進化してきた過程すらも拒絶するつもりなの?とか、本来備えていた能力が失われたのも、(従来の育種という)人為的でしかも闇雲な操作によるものなのだけれど、それは受け入れられるの?と問いかけたくなります。

それでも「受け入れがたい感情」は誰もがそれぞれ持っている防衛本能でもあるので、どうにもならないのかもしれませんね。余談になりますが、実は、こういった防御機能を持った品種で畑を取り囲んでしまうことで、虫などの被害を防ぐ効果が得られるのですね。ですので、その内側で「普通の」品種を育てるという利用法が可能かもしれません。確かハワイの果樹園で実際に使われている手法だったと記憶しています。なかなか受け入れてもらえない遺伝子操作作物の苦心の末の活用法です。

ご参考までに記事で紹介された論文です。
「Restoring a maize root signal that attracts insect-killing nematodes to control a major pest ― PNAS

<さかい>