イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

結びの神は香港マフィアに義兄

2008年05月24日 10時38分16秒 | 小説
 アレクは何も悪くない。それなのに復讐と憎悪にとり憑かれたジェイルの恋の罠に嵌められて捨てられ、その挙げ句にジェイルの密告で駆けつけたエドモントに“他人のお古なんぞ要らん!”と暴行を受け、その手下どもに輪姦されて場末の売春宿に売られ、望まずして男娼に身を堕としました。しかし、売春宿で用心棒がその役を兼ねたか、ともかく味見をした後か、それより先かは不明ですが奴隷調教の凌辱をされて男娼の技巧と媚態を仕込まれなければ不自然でしょう。何も知らない男娼とは名ばかりの素人でも好きな客はいるでしょうが、経験を重ねるだけでは足りないモノがあるだろうから。

 魔窟に堕ちたアレクは春をひさぐ日々を過ごしていました。しかし、ジェイルの激しく情熱的な恋の迸りを真実だと信じて囚われ、恋の奴隷に貶められた我が身を気づかずに一時の幸福に酔いしれたアレクを絶望のどん底に叩き込むための悪逆な罠でしかなくても、アレクの生涯ただ一度の恋になるかもしれなかったジェイルへの想いはアレクだけのものであり、ジェイルにもエドモントにも、いいえ、誰にも理解できる筈もないし、されたくもないでしょう。アレク自身にしかわからないのですから。

 欠片も罪のないアレクが魔窟に堕ちた元凶のジェイルは意気揚々とかねてからの計画通りに猗グループ買収劇を成功させ新会長として大々的にメディアに取り上げられ晴れ舞台にのぼり、時折、アレクのことが心を痛めてもその痛みの正体から目を背けて我が世の春を謳歌していたなんて最低ですね。自分もアレクに恋していることを、それに気づいていたのは義兄弟の契りを交わした義兄であり黒社会(香港マフィア)のロバート・費(フェイ)だけでしたが、さり気なくアレクが男娼になっていたことを知らせたりするなんて、いい兄貴ですね。

 しかし、油断は禁物です。ロバートはたとえボスに背いても義弟であるジェイルとその最愛の伴侶アレクの幸福を守ってくれるでしょう。しかし、ロバートのボスがジェイルの手腕を利用しようと企んだり、ボスがアレクを自分のスケにしようと画策したり売春させない保証は何処にもないのです!ましてや、兄弟分や兄貴分、そして舎弟たちがアレクに欲望を抱かないとどうして言えるでしょうか。

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