「他人の人生を横切る」とは? by 私
遠藤周作氏が本の中で「他人の人生を横切る」と書いていますが、自身が「横切る」ことで相手が不幸になったり幸福になったりということは、「他人の人生を横切る」とは“関わる”ということでしょうか?
by tt66ttさん
その解釈で良いと思います。「他人の人生を横切る」とは、「十」の字の様なイメージで使われる表現です。「ほんの短い間だけ、自分と相手(他人)が同じ空間と時間を共有する(共に過ごす)」という事を表した言い回しです。
「他人の人生を横切る」とは? by 私
遠藤周作氏が本の中で「他人の人生を横切る」と書いていますが、自身が「横切る」ことで相手が不幸になったり幸福になったりということは、「他人の人生を横切る」とは“関わる”ということでしょうか?
by tt66ttさん
その解釈で良いと思います。「他人の人生を横切る」とは、「十」の字の様なイメージで使われる表現です。「ほんの短い間だけ、自分と相手(他人)が同じ空間と時間を共有する(共に過ごす)」という事を表した言い回しです。
鶴代は、金田一耕助にして“明敏なる頭脳”と称賛された女性。
没年齢:数え年17歳(満16歳)。
昭和5年某月某日 生誕
昭和21年10月15日 没
身の回りで起こっていることや気になったことを療養所の次兄に書き送っている内に、点と点を繋ぎ一本の線となった事件の真相に辿り着いた。その悲しみは鶴代の心の臓を断ち切ってしまう。
001 イワン:サムエル・キャピタル社は知ってる? アメリカ国内に本社を置く、この投資ファンドの実態はイスラエル国防省も出資を行うある種の出先機関でもあるんだ。彼らの思惑はただ一つ、世界の秩序を安定させないことで得られる軍産複合体としての莫大な利益。
9月21日の誕生花
イヌサフラン
花言葉
裸のあなた、悔い無き青春、永続、頑固、楽しい思い出、華美、美徳、私の最良の日は過ぎ去った、懐かしき青春、回顧。
篠塚と慎悟の関係にも見られる通り、「城南一高」篇では篠塚とその側近であるイック達は“人としての全てを捨てなければならない”と頑なに人間的感情の幸福を否定しており、一口に日本支部の面々とは言っても彼らから遠ざかるメンバーほど人間的感情を肯定するという温度差があった。慎悟の愛を篠塚が受け入れ、組織の保護下に彼が迎えられて以降はその温度差も徐々に変化していった。
慎悟と篠塚が和解して新たな人生を歩み始めた或る冬の朝、慎悟に懇願した。何があっても篠塚の傍を離れず彼女の心に寄り添い、その心に“春の幸せ”を与えて守って欲しいと。それをこそが慎悟を再びと篠塚の許に導いた最大にして唯一の動機だった。本来の「No.9」としての在るべき姿に立ち戻り且つ幸せになって欲しいと願えばこそである。篠塚に叛逆行為をしてまで慎悟との仲を取り持った苦労が報われ安堵の息をつき、2人に襲い掛かるであろう困難が現実になることのないよう切実なる願いを抱いている。
慎悟と共に生きる道を歩み始めた当初、彼が幸福であっても自責の念から不安定に陥る篠塚の“普段”を装った言動の陰で揺れる感情を察し、2人の幸福を心から祈りつつ心を鬼にして諌めることがあった。第1シリーズの終盤で「煌龍」が動き出し緊迫した状況下、一般人の揉め事のレベルで篠塚が動こうとしたのを敢えて制止し苦言を呈した。
篠塚に次いで慎悟と関わりが深く強い信頼で結ばれているため、時には一緒にチンピラをしばき倒し、基本的に篠塚の希望を尊重して慎悟を任務に関わらせないようにしているが、思った以上に深い部分に入り込んでいる慎悟が苦しめば自分自身も苦しむ篠塚の精神安定と自身の力のみで任務遂行に固執する篠塚を見かねて、彼女の怒りを覚悟で慎悟を任務に参加させることもある。篠塚が非常識で他人の心情に疎いことが原因で傷ついた護衛対象の「一ノ宮沙耶」の心のケアを慎悟に頼み、同じく護衛対象である「佐倉麻亜矢」が現実を受け入れられずに篠塚や「UB」を拒んだ際、あくまでも自身の手で護衛することに固執し、麻亜矢の離反を煽るだけで事態を悪化させるばかりの篠塚を見かねて、彼女の怒りを覚悟の上で指示を仰がなくとも対処する権限を行使し、麻亜矢の望み通りに慎悟を彼女の護衛に据えたのだった。
或る任務で、任務内ギリギリの範疇でも他に担当すべきメンバーがいるのを無理矢理に割り込んだ篠塚の愚挙は“寝耳に水”だった。事後承諾に甘んじるしかない状況に追い込まれたため、潜入直前の1週間前に篠塚と激しく揉めた。
潜みに徹して「UB」に尻尾を掴ませなかったローが動き始めた折、篠塚がローを捕縛すると同時に自らの死を偽装し慎悟を捨てる計画を立てたことを知らされ、その悪辣な計画に内心猛反発して慎悟や束の間のクラスメイト達に対する友愛から苦しんだ。指示された通りに森田と佐野を篠塚の死の証人とすべく慎悟のいるS県の山奥に誘導し、課せられた役割を果たすもその表情は苦悶に満ちていた。両親と親友を失い深く傷ついている慎悟に対し、篠塚が自身の爆死を偽装して彼を捨てたことに改めて疑念を抱く。部下にその後の慎悟の動向を監視するよう指示して任務で渡米した篠塚に同行しつつ彼をずっと案じており、この時点での危険人物である篠塚には慎悟の情報をシャットアウトして彼を守った。深く傷つき友人達との付き合いを一切止めてしまい、事情を知る森田と佐野を除くクラスメイトの心証を著しく悪化させても一顧だにしない慎悟の姿に心を痛め、篠塚と自分達の罪を噛み締めていた。
1年後の冬の「UB」絡みの事件で慎悟に再会し、いや増すばかりの愛ゆえに篠塚の生存と彼女自身による「爆死偽装」の真相を確信し苦しむ慎悟を励まして旅立ちを促し、更に1年後に骨休めに帰京した慎悟に“灯台下暗し”と告げNo.77に篠塚の居場所をそれとなく教えるように指示し渋谷に誘導した。やがて「Ω(オメガ)」のメンバー達と邂逅した慎悟が任務終了ギリギリで篠塚に接触を図ろうとしたのに合わせ、手榴弾から篠塚を守ろうとした慎悟を密かに助けて彼の死を偽装し篠塚を罠に嵌めた。2年前のススキの高原に彼女を連れ出して密かに同行させた慎悟の前で彼を愛していることを自白に追い込み、遂に篠塚に慎悟と共に生きる決意をさせるに至る。慎悟の“死”に壊れ始めて正常な判断を下せずにいる篠塚の姿に心を痛め、彼女自身のためにも慎悟のためにも慎悟の愛を受け入れて乗り越える以外に2人に救いはなく、篠塚の精神的安定のためには慎悟が必要不可欠だと確信しての行動だった。
過酷な任務の連続で凍てついた篠塚の心を慎悟が溶かし、恋から愛へと急速に成長してゆく彼の想いが篠塚の心を温めて彼女に初めて微笑みを浮かべさせたのを見て、慎悟は篠塚に無くてはならない存在だと悟ったのだった。当初はそれすらも自分達「UB」の崇高なる使命の足元にも及ばない塵芥と看做し、クラスメイト全員が味方であり亡き親友に準ずる森田と佐野の存在が、篠塚の去った後の心の隙間を消滅させるだろうと慎悟の想いを侮ってもいた。しかし、篠塚が彼を捨てた際、既にその考えが間違っていると自覚しており“愛に代わりは無い”という人間として当たり前の境地に至る。篠塚にそんなつもりはなくとも、彼女が慎悟にした仕打ちは“身も心も弄んだ娼婦の悪行”なのだと悟っていた。
第2シリーズの「MISSION5~試練の冬~ Episode5」のイック。
UB日本支部に所属する男性メンバー。篠塚不在時の留守を預かり、彼女の代理を務める重責を担う存在である。原作:麻城ゆう / 作画:道原かつみの漫画〈ジョーカー JOKER〉シリーズの主人公ジョーカー JOKER」(スペード(地球系)のJOKER-1)とは表裏一体の「スペード・エース SPADE ACE」のような存在。〈ジョーカー・シリーズ〉のS-Aと飛騨ジェンキンスと、『金田一少年の事件簿』の明智健悟とを足して3で割ったような性格の悪さは今も健在だが、時には篠塚以上に慎悟を気遣う姿が見られ、『エリュシオン 青宵廻廊』のアマゾーン国の前女王に10年来の忠義を貫く近衛隊長のデーリマケイアの如き忠誠心も兼ね備えている。
初登場時は18歳。第1シリーズは18→21歳、第2シリーズは22歳、第3シリーズでは23歳である。誕生日は不明だが、生年は1982年(昭和57年)である。
篠塚(No.9)の「影」と呼ばれる側近達のリーダー的存在で、篠塚の片腕であり“兄弟のような存在”の慎悟の理解者兼保護者であり、時折、任務遂行中の篠塚の帰りを待つ慎悟を訪ねている。UBトップナンバーの恋人ゆえに最高機密事項として扱われる慎悟だが、つき合いの5年という長さから今更「コード405」とは呼べないと笑い飛ばす。立場上、篠塚の“心の安定”のために慎悟を彼女の傍に置き、そのための“道具”としか看做していないかのような印象を他者に与えるが、口には出さずとも慎悟に対する強い“友愛”を抱いており、彼を心の底から大切に想っている。
一人称は普段は「私」だがたまに「俺」であり、「城南一高」篇は篠塚と同様に「僕」だった。篠塚不在時の留守を預かり、彼女の代理を務める重責を担う存在である。但し、篠塚の任務遂行の拠点となる支部の指揮を代行することであり、必ずしもUB日本支部でとは限らない。地毛はショートヘアだが“エクステ”を愛用しており、篠塚以外でコロコロと髪型が変わる。特に、第1シリーズの「DUTY32:標的」の中で髪が短くなったり長くなったり忙しかった。前髪は慎悟護衛時は篠塚と同様にオールバック→左分け→真ん中分けと変動し、慎悟と篠塚の和解を成立させた頃はオールバック、その後は真ん中分けになった。
篠塚の行動を察知する明敏な青年である。第2シリーズの終盤「MISSION5~試練の冬~」で慎悟が護衛対象の少女の横恋慕に巻き込まれて「ENU」に拉致された際、組織のトップとしては身動き出来ない篠塚が「No.9」としての己を保持したまま立場を捨てて慎悟奪還に動き、彼の情報を餌に“待ち合わせ”を暗に示した「煌龍」の結城と合流しドイツに飛んだことを半歩遅れるも“相容れぬ敵同士だが情報は欲しい、ならばどうする?立場を捨てて個人で動けばいい!”と影の中で唯一看破した。
慎悟との馴れ初めである「城南一高」篇までは身長が慎悟を含め3人+No.7とお揃いの175cmで、まだ成長期に差し掛かったばかりで顔も体格も篠塚とはそう違わなかったため、篠塚が抜けなければならない時に入れ替わって慎悟の護衛を代行する等、篠塚と“二人一役”で男子生徒「篠塚高」を演じていた。しかし、その任務を最後に成長期のラストスパートで10代の成長は男女の性の差異を露わにし、その面影を残すだけの“異性双生児(mixed sex twins / opposite sex twins)”と呼ばれることもある“二卵性双生児(fraternal twins / dizygotic twins)”の男児が成長したような姿になった。慎悟のクラスメイトだった森田も帰京した慎悟と顔を合わせた際、今はもう篠塚の影武者は完全に無理だろうと評していた。慎悟とはお互いに嫌悪感を抱いての出会いだったため、篠塚との差別化を図った慎悟に「イック」と命名された。コードナンバーに誇りを持っており、ふざけた命名に反発して呼ばれる度に抗議するが、その「イック」と「ニセモノ」としか慎悟は呼ぼうとしなかったため、半ば諦めてもいたので惰性で呼ばれていた。しかし、慎悟と信頼で結ばれてゆくにつれ「イック」と呼ばれることを好むようになる。生きることは変わり続けることであり、人と人との出会いが変革を齎し成長を促すのが人であるため、昔と「城南一高」時代とではかなり内面が変化しており、かなり醒めた性格だったが、慎悟との交流で多大なる影響を受けたことで篠塚もその変化に驚いていた。
当初、篠塚以上に無表情で石像のように冷たく尊大で陰険であったため、それが慎悟の嫌悪感を逆撫でし、険悪な雰囲気が中々消えずに任務で関わる人々の心情を軽んじがちだった篠塚にすら頭痛の種となった。慎悟に対して辛辣で差別意識に満ちた言動を繰り返し険悪な関係は自身が元凶となって悪化するばかりだったが、半分は篠塚を守らんとしての「S-A」のような理由と立場ゆえの行為だった。しかし、半分は本気の暴言である。
篠塚に恋い焦がれる慎悟の存在は彼女にとって害毒だと忌避し、「DUTY8:冬の情景」で篠塚に余計な負担を被らせる厄介者として映ったため、護衛よりも彼に対する嫌悪感を優先させて負傷させてしまった。しかし、次第に心を通わせてゆき篠塚に必要であると考えを改めてゆく。その後も慎悟に対して辛辣で差別意識に満ちた言動を繰り返し険悪な関係は自身が元凶となって悪化するばかりだったが、半分は篠塚を守らんとしての行為だった。しかし、半分は本気の暴言である。自分達「UB」が世界とそれを構成する人間達の下僕である立場を弁えず、任務を遂行しやすくするために世界各国の中枢にメンバーが入り込んでいるため、自分達「UB」が世界を支配しているかのような錯覚に陥った一人だった。逃避し始めた篠塚と口裏を合わせて彼女に対する口づけや告白を自身がされたかのように振る舞いもしたが、その頃には既に慎悟は「2人の篠塚」の見分けが出来ていてあまり効果はなかった。
趣味は“チャット”で、休日にはよくチャット仲間のNo.5とチャットで遊んでいる。第1シリーズの「DUTY28:ヒーロー」で現実と妄想を混同したことで篠塚の意識を麻痺させてしまったオタクの少年を誘導し、テログループの危険から守り抜いた。この任務は趣味のチャットを活かして大活躍した珍しいケースだった。
根強い罪悪感を抱く篠塚を安心させるため、彼女の在宅時もバイトに出る。せめて自身の食い扶持くらいは働いて賄いたいと始めたバイトだが、それは自身を“普通”や“現実”から切り離してしまったと自責の念に苦しむ篠塚の心の負担を少しでも軽減するためでもあった。未来の見えない“普通じゃない”自分達の生活に「これで良かったのか?これで、本当に良かったのか?」と自問しては悩み、日ごとに増す篠塚の不安を打ち消すため、敢えて“普通の人間の真似事”をする。篠塚との愛に殉じる道を選択した時点で、元の世界から隔絶された存在と化しており、もはや今となっては完全に相容れぬ関係となったことを自覚している。それでも家族はおろか純然たる友人の一人もいない篠塚にとって、自身は彼女が憧れる“普通”そのもの。だからこそ、既に“普通”ではなくなっても彼女に比べれば確かに“普通”であるため、最愛の女の望むとおりに出来得る範囲で“普通”であろうと努力し、恋人として友人として家族として求める篠塚の心に応えるのだった。
よく告白されるが、篠塚しか視界にないので全て断っている。彼女とはお互いに対してアンテナが固定しているため、自分達以外の恋愛感情に疎く、それ絡みのトラブルに巻き込まれることがある。2人の馴れ初めである「DUTY7:メッセージ」で命を狙われた際に篠塚により実戦に即した“護身術”と“対処の仕方”を仕込まれており、そこら辺のチンピラ風情では太刀打ちできない実力の持ち主である。素人目にもわかる“洗練された技”と“慣れ”により一般レベルでも高水準の戦闘力を有しており、充分な人数を揃えて襲ってもあっという間に過半数を潰し、彼らに「化け物」と評される。難癖つけるタワケどもが後を絶たないため、その手の輩に遭遇する度に不機嫌になりつつ一応は喧嘩は止めるよう呼び掛けるが、向こうには止める気がないので結局は戦うことになる悪循環に陥り、くだらん経験値ばかりが増える現状にうんざりしている。
争う等の人目を引く目立つ行為を避けるよう注意されているだけではなく、嘗て、No.7に協力した篠塚がスパイ一味の一網打尽にした件で、一味のボス(ワイマール元帥)に人質を取られて篠塚が窮地に陥ったため、倒れた部下達の拳銃で元帥を撃ち彼女を救って捕縛に貢献した。しかし、人質を取られて窮地に陥った篠塚を救うため、敵とはいえ人を傷つけたことで彼女自身が後悔に苛まれているため、可能な限りはやむなき次第でも争い事や他人を傷つけることのないよう戦闘そのものを回避する努力をしている。第2シリーズの終盤で殺人ウィルスを消滅させる際、自身を殺して元の世界に戻り生きるようにと篠塚に言われ、未だに自身を元の世界に戻そうと考え虎視眈々とその機会を狙っていることを知り、誰よりも油断のならない“最後の敵”はやはり最愛の妻である篠塚だと悟った。
UBトップナンバーたる「篠塚高(No.9)」の恋人という立場上、セキュリティの厳重な住居に住み、行動も制限されることで篠塚からは「ガラスの城の鳥」と評される。しかも一つ所にあまり長くは留まれず、1ヶ月~2ヶ月未満で「UB」所有の“隠れ家”から“隠れ家”へと移動を繰り返す。但し、あくまでも何事もなかった場合である。篠塚が任務を終えて帰宅するまでがその住居で過ごす期間であるため、任務が長引いたり、任務に次ぐ任務という形で連続して任務に臨まねばならない時には篠塚が帰還するまで滞在することになる。また自身の周囲は有事の際には安全優先に切り替わる身辺警護のUBメンバーに取り囲まれ、普段は日常を尊重して“ゆるやかな配置”を取るも「見えない壁」に守られている。それが篠塚と共に在ることを選んだ代償であり、篠塚もイックも慎悟の代償は重すぎると時折苦悩する。
あたかも「アンネ(アンネリース)・マリー・フランク」の如く隠れ潜み、傍目には自由を奪われた“囚人”のように不幸な境遇に映るかもしれないが、自他の視点と何を基準に“幸不幸”を判断するかは異なり、当の慎悟は愛する女性と共に在れる自身を“最高に幸せ”と自身の至福に酔い痴れる。周囲の“見えない壁”もUBトップナンバーを愛し組織の保護下に迎えられた自身に対する措置として了承し、閉塞感は否めないが篠塚と共に生きるには必要なのだと納得しており異存はない。ましてや、事態に応じて“こうしろ”と言われたら従うことに文句のあろう筈も無い。篠塚と生きてゆくために試行錯誤を繰り返し、1年近く経った頃、幾たび目かの話し合いで“不自然”ゆえに長続きしないという結論となり、外で顔を合わせても知らない振りをするという“不自然な行為”を止めた。危険を増やすことにはなるが、可能な限り“自然体”で自分達らしく過ごすことにし、敢えて関係を明かすことはなくても堂々と2人で街中を歩くようになった。時には争い、時には遠慮し合い、いつもの自身を出せない時もあったが次第に自然に接することが出来るようになり、心を曝け出す会話も出来るようになっていく。
一生に一度の恋だと思った。それと同時に生きる世界の違いに諦めてもいた。どんなに好きでも篠塚は夢の住人、いつか目が覚めれば消えてしまうと思っていた。しかし、篠塚が“爆死”を装って慎悟を捨てた時、それは生涯を賭ける愛となった。1年後の冬の或る日、「UB」絡みの事件に巻き込まれた際に再会したイックに励まされ、退学届を提出して母校「私立城南第一高等学校」を辞め、マンションを引き払い、篠塚を探し求める旅に出た。更に1年後、帰京した折に旧友の森田から篠塚に助けられた純という予備校生に引き合わされ、更にイックの“灯台下暗しだよ”という助言及びNo.77を介して「渋谷駅」近辺の高校に篠塚がいるとの情報を教えられた。
篠塚が2つの任務と残務処理で関わったK大付属第一高等学校のアウトサイダー的頭脳集団(シンクタンク)である「Ω(オメガ)」のメンバーと邂逅し、テロ壊滅及び人質救出任務を遂行中の篠塚の元に辿り着く。テログループのボスが自棄で投げた手榴弾から篠塚を守ってエレベーターに走り、その爆発で重傷を負ってUB日本支部に収容され、医療チームの加療を受けるも死亡した…とされ誰もがそう信じた。しかし、篠塚再生を願うイックの仕組んだことであり、浅見を自身の身代わりに利用すると気づき反発するが、それ以外に望みはないのだと言われ、何も言えなくなってしまう。
篠塚が「初めて“女”として愛した男」が慎悟だとイックに告げられるより先に、慎悟が“篠塚の恋人”だと察していた「Ω」メンバーだったが、いつしか慎悟と篠塚の“愛の再生”を願うようになっていた。そんな彼らと連携して「篠塚再生」に賭けるイックがS県の山奥のススキが揺れる“問題”の高原に連れ出し自白に追い詰める事に成功した。そして慎悟は知る、最愛の女の自身に対する愛を。漸く篠塚の真意を確認する事が出来たのだった。元々、慎悟は篠塚との別れを受け入れ去りゆく彼女の背中を見送る覚悟をしていたにも関わらず、篠塚の“茶番”が原因で心の行き場を失っていた。改めて身を引き彼女の愛を心の支えに生きていこうとするが、2年前の愚を悔い改めた篠塚に求められた慎悟は彼女を信じてその手を取り、再び結ばれ共に生きていく。しかしながら、和解したことで慎悟の心の奥底に彼自身が封印した“暗澹たる澱”が爆発し、篠塚は我が身を捧げるという「贖罪の性の儀式」が待ち受けていた。