イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

玄椿 くろつばき -03

2012年10月01日 07時01分35秒 | 白泉社

周一:へェ!仕込みさんがもう1人増えたの!?よろしく、周一だよ。(僕より大きい女の子かァ。虹子姉さんといい勝負かな。)
胡蝶:歌舞伎役者の若宮虹之助はんえ。
摩歩:かぶき!!?かぶきって男ばっかでやる舞台劇だよね!?男だけど女の役をやる女形(おやま)って人がいるよね!?
周一:う…うん。そーだけど、僕も女形で…。(的確だけど色気のない表現。いたいっ。)
摩歩:じゃあ、お願い!教えて!!女らしく可愛く見せるのってどーやるの!?
周一:へっ!?(…あ。ああそうか、この子は虹子姉さんとは反対なんだ。)いいかい?無理に体を小さく見せようとして、背中を丸めたりとか腰を折ったりとかしてコソコソしちゃ絶対ダメだよ。むしろ背筋はシャンとしてまっすぐにしてるんだ、そして常に意識して首を上に伸ばして肩を下げてごらん。
摩歩:肩を?下げる!?
周一:そう。細くて長い首と怒り肩より撫で肩の方が華奢に見えるから。背を低く見えるのならヒザで調整するんだ、ヒザを曲げて腰を垂直に落とす。そーそー、いわゆる中腰というヤツだね。着物にもかくれるから曲げてるのはわからなくなるだろ、これは日舞をやれば自然と身に付くから。それともう一ツ!これが一番大切!!
摩歩:なっ…何!?
周一:大丈夫。難しくないよ、すごく簡単。毎日きれいなモノをごらん、人間(ひと)でも花でも着物でも、何でも。毎日一ツでもいいなとか好きだなと思うモノを見つけて気持ちを優しく楽しく過ごすんだ。体もだけど心も女らしくならなくちゃ意味ないからね。
摩歩:(…きれいなモノ?あたしがこの世で一番きれいだと思うのは、胡蝶。…なんだそうか、やっぱり!この女性(ひと)を見てればいいんだ。)


玄椿 くろつばき -02

2012年10月01日 00時30分49秒 | 白泉社

恵慈:それが一変するのは大平洋戦争だ。15歳で中学を卒業し義務教育を終えるまでは舞妓にはなれなくなった。15なんてのは女にとってはもう子供じゃない。身長の伸びも止まり胸も腰もふくらんだ大人の肢体(からだ)だ。しかも、戦後の食生活と生活様式の欧米化で日本人の体つきまで変わっていった。平均身長は10センチ以上伸び、顔は小さく肩は張り手足は長く、これは和服の似合う体形じゃない。その外国人擬(もどき)の大人の体で舞妓(こども)をやるんだ!つまり君に限らず現在(いま)の舞妓は全員不自然なんだよ!しかし…だ!だからと言って、これが京舞妓の実状なんだから受け入れるしかない。全部が不自然というなら、それで「自然」だ。この京から舞妓を無くす訳にはゆかないのだから。そのためには背が高すぎるからと、せっかくの貴重な舞妓志願者を失う訳には…な。この将来(さき)きっと君みたいなのはもっと増えるだろうし。
乙女:恵ちゃん、ほな…。
摩歩:…じゃあ。
胡蝶:おおきに、恵兄はん。よかったなァ、摩歩ちゃん。

摩歩:(あたしはべつに舞妓でも芸妓でもかまわないんだけどな、最終的に胡蝶さん(このひと)みたいな女性(ひと)になれるんなら。…つまり基本的に舞妓さんてのは幼く可愛く見えるべきで、そのために小さく華奢な方がいいんだ。背…かァ今更縮めないしなァ、人間って小さい人を大きく見せる工夫はいくらでもできるけど大きな人を小さく見せるのは難しいってきいたことがある。でも、今のあたしに芸妓さんってのも無理があると思うけど…。)


玄椿 くろつばき -01

2012年10月01日 00時04分37秒 | 白泉社

『玄椿 くろつばき』
第5巻

-舞妓試練-

摩歩:(さっきの唐糸ってコもそうだったけど、この2人も大体平均…かな…とゆーことは。胡蝶さんは平均よりちょっと低め、女将さんはもっと小さい、でも丸い。このおじさんはずい分な長身で…この場合男は関係ない…か。)
胡蝶:…摩歩ちゃん。あんた、身長何センチあるのん?
摩歩:高校に入った時の検診で確か173センチ。多分、あれからもう少し伸びてると思う。
胡蝶:私(ウチ)が155センチやさかい…20センチも差ァがある訳やな、えろう大きいなァ。
乙女:ひえっ。ほな日本髪結うて、花かんざし挿したら180越えてまうな!おこぼ履いたら190以上や!!
恵慈:デカすぎる。ううむ、こりゃあ舞妓通り越して芸妓で店出しした方がいいかな?
摩歩:背が高いと舞妓さんになれないの!?
胡蝶:恵兄はん。
恵慈:現在(いま)はそーゆーコトでもないが…できるなら小柄の方が望ましい。
摩歩:どーして!?
恵慈:子供は小さなものだろう?
摩歩:(子供…?)
恵慈:昔の舞妓は本当に子供がなったんだ。普通八ツ九ツで仕込み(おちょぼ)に入り、11・12歳で座敷に出る。早いのは9歳なんてのもいたっていうからな。
摩歩:(8歳!?11歳!?)…まだ小学生だ!!
恵慈:そうだ。まだ肩上げや腰上げした着物を着てるような完全な子供だ。現在(いま)でも舞妓の衣装(しかけ)の肩と袂が普段着(からげ)でも肩がつままれているのは「舞妓(わたし)はまだ子供です」という表現(いみ)だ。その舞妓の体が段々と大きくなって、えずくろしくなる頃「衿替え」して芸妓になる。これが16・17歳だ。
摩歩:…じゃあ、今のあたしくらいでもう芸妓さんだったんだ!!あたしくらいで、あんな色っぽいカッコしたの!?「えずくろしい」って何?胡蝶さん。
胡蝶:「えずくるしい」とも言うえ。「基準に合わんよおなる」意味や、この場合は「舞妓姿が派手で似合わんよおになる」ゆうコトやな。