イリアーデの言霊

  ★心に浮かぶ想いのピースのひとかけら★

黒龍王(15) 作者の歪んだ心が投影された冴紗

2007年11月24日 17時08分05秒 | 小説

 羅剛だけの冴紗になる日はいつなのか?『神官は王を狂わせる』の「Ⅶ 碣祉城」で“怒ることも泣くことも許されず、そのうえ仮面で顔を隠され、人前で飲食を摂ることも、むろん、寝ることも、いや生きものとしてのすべての行為を禁じられ、ただ神の言葉を語るのみ。そのような、麗しいだけの生き人形を、なにゆえ人は造ろうとするのか。欲するのか。”と嫌なくせに羅剛のためになると思い込み、「Ⅰ 夢の日々」“お役目でございまする。――それでも、わたしなどを望んでくださる方々がいらっしゃるかぎり、誠心誠意つとめたいと存じます。…なすべきことをなしてこその、幸せでございますゆえ。”と、《聖虹使》という世に災禍を撒き散らす元凶をやめようとはしない冴紗男を狂わせる魔性でなくても最低です。

 『神官は王に愛される』の「Ⅴ 決心」“王宮は遠い。神殿には飛竜はおらぬ。脆弱な冴紗の足では、山を下りるのさえ数日かかるであろう。大神殿は、そういう意味では聖なる牢獄のようなものである。……王は、明日には、お妃さまを、あの腕にいだく……。戯れにくちづけなどを与えて、攫いに来るなどという惨いお言葉を残して、この牢獄に冴紗を閉じこめたまま。”+「Ⅶ 王宮」“神殿の質素な部屋とはまるで違う。華やかで贅を極めた品々。けしてあの清貧の神殿暮らしを疎んでいるわけではないが、…ただあの場所には、『羅剛王』がいらっしゃらなかった。この場所も、王がおこしでなければ、寒々しい、死んだような宮であろう。”と羅剛だけを求めながら、大神殿を牢獄と厭いながら、なにゆえに羅剛の心を傷つけてまで、なりたくもない《聖虹使》になり猿芝居を続けるのか?羅剛を幸福にすまいとする作者の陰謀が冴紗を歪めている。

 『神官は王に愛される』の「Ⅹ 祈り」“あなたさまが虹のご容姿でなかったとしても、私どもは、そのお心ばえのうつくしさを、敬愛しております。”という嘘八百をぬかした最長老の言葉に、それ以来、私は“心映え”という言葉が大嫌いになりました。本当に大切に思うなら、戦の危険が無くなり羅剛が返してくれと言ってきた時に、すぐに王宮に返していた筈です!それなのに、羅剛が幾度も冴紗を返してくれと言っても無視し、その返還要求を握り潰して冴紗には隠匿したことが、冴紗を大切になんか思っていなくて道具と看做している何よりの証拠です。


黒龍王(14) 羅剛陛下は暑苦しいの?

2007年11月24日 16時28分40秒 | 小説

 どこもかしこも羅剛を「暑苦しい」とほざくとは何事かと、日頃、不満を抱いていました。何故、そんなふうに言われるのかしら?作者の吉田珠姫までサイトの「これから」に第3巻『神官は王を恋い慕う』での羅剛について“あいかわらず超暑苦しい男です”とか、日記に“三冊目の『『神官は王を恋い慕う』』も、古臭い言い回しがてんこもりです。(苦笑)羅剛王の暑苦しさもパワーアップしております……。”とまで、ここまで書くなんて酷いです。

 恋する冴紗しか目に入っていない羅剛が狂おしく恋い焦がれたり、黒ずくめが“暑苦しい”なんて私には理解できません。黒衣の騎士にして竜王様、かっこいいのに「暑苦しい」とは驚きです!しかし、そんなふうに作者にまで暑苦しいと言われるほどに自分も相手をも焼き殺し滅ぼしかねない狂気の恋の炎を燃やし、王宮での公開プレイで《婚姻の儀》を強行するなど暴走しなければ、周りが許さない恋だからと逃げまくり、自分が傷つきたくなくて安全圏に籠り自分では何もしようとせず、終始自分のことしか考えない冴紗をゲットすることは不可能だったでしょう。

 羅剛の心よりも帝国にならんとしている“侈才邏国王としての羅剛”のことばかり考え、“国王である前に一人の人間である羅剛の恋心”を土足で踏み躙る冴紗は腐れ外道です。それでも暑苦しいと言われても追い続けゲットした羅剛だけの冴紗に戻ってくれる日を待ち焦がれていますが、駄目なのかしら?羅剛だけが犠牲を強いられて胸が潰れそうです。そんな彼の懊悩も知らずに色事の師を仰ぎたいと悶々と悩むらしい第3巻が楽しみではあるけれど、不安でもあります。

 ちなみに、私もパソコンで「王家」を入力してきちんと変換したつもりが「お受け」になりがちです。後で気がついて慌てて修正しています。ところで、ドラマCDで知ったのですが、「冴紗(さしゃ)」というのは言いづらいらしく、終始自分のことしか考えず羅剛のために行動しているつもりの腐れ外道の冴紗が大神殿に逃げ帰った時、神官の誰かが「しゃしゃ様」と言い間違えていました。