羅剛だけの冴紗になる日はいつなのか?『神官は王を狂わせる』の「Ⅶ 碣祉城」で“怒ることも泣くことも許されず、そのうえ仮面で顔を隠され、人前で飲食を摂ることも、むろん、寝ることも、いや生きものとしてのすべての行為を禁じられ、ただ神の言葉を語るのみ。そのような、麗しいだけの生き人形を、なにゆえ人は造ろうとするのか。欲するのか。”と嫌なくせに羅剛のためになると思い込み、「Ⅰ 夢の日々」で“お役目でございまする。――それでも、わたしなどを望んでくださる方々がいらっしゃるかぎり、誠心誠意つとめたいと存じます。…なすべきことをなしてこその、幸せでございますゆえ。”と、《聖虹使》という世に災禍を撒き散らす元凶をやめようとはしない冴紗は男を狂わせる魔性でなくても最低です。
『神官は王に愛される』の「Ⅴ 決心」“王宮は遠い。神殿には飛竜はおらぬ。脆弱な冴紗の足では、山を下りるのさえ数日かかるであろう。大神殿は、そういう意味では聖なる牢獄のようなものである。……王は、明日には、お妃さまを、あの腕にいだく……。戯れにくちづけなどを与えて、攫いに来るなどという惨いお言葉を残して、この牢獄に冴紗を閉じこめたまま。”+「Ⅶ 王宮」“神殿の質素な部屋とはまるで違う。華やかで贅を極めた品々。けしてあの清貧の神殿暮らしを疎んでいるわけではないが、…ただあの場所には、『羅剛王』がいらっしゃらなかった。この場所も、王がおこしでなければ、寒々しい、死んだような宮であろう。”と羅剛だけを求めながら、大神殿を牢獄と厭いながら、なにゆえに羅剛の心を傷つけてまで、なりたくもない《聖虹使》になり猿芝居を続けるのか?羅剛を幸福にすまいとする作者の陰謀が冴紗を歪めている。
『神官は王に愛される』の「Ⅹ 祈り」“あなたさまが虹のご容姿でなかったとしても、私どもは、そのお心ばえのうつくしさを、敬愛しております。”という嘘八百をぬかした最長老の言葉に、それ以来、私は“心映え”という言葉が大嫌いになりました。本当に大切に思うなら、戦の危険が無くなり羅剛が返してくれと言ってきた時に、すぐに王宮に返していた筈です!それなのに、羅剛が幾度も冴紗を返してくれと言っても無視し、その返還要求を握り潰して冴紗には隠匿したことが、冴紗を大切になんか思っていなくて道具と看做している何よりの証拠です。