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『ラファエル前派の世界』

2014-01-02 15:42:46 | 書籍(美術書)

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『ラファエル前派の世界』
平松洋
中経出版
2013

2014年1月下旬より、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで「ラファエル前派展」が開かれる。
本書は、その展覧会に合わせて刊行されたものである。

豊富なヴィジュアル・イメージとともに、包括的な視点から「ラファエル前派」の運動を捉える入門書となっている。

しかし読了後、アマゾンのレヴューにも"millais"のペンネームでコメントしておいたが、なんとも値段不相応の感が否めない。

複雑な人物関係は、いわゆる「ラファエル前派兄弟団」を中心としたもの(10-11頁)、「後期ラファエル前派」に分類される画家たちを中心に据えたもの(86-87頁)、また「ラファエル前派恋愛相関図」なるもの(138-139頁)の三回に分けてまとめられている。

以前にこのブログでも言及したように、ラファエル前派を取り巻く人物関係が「複雑」であることは確かである。
(http://blog.goo.ne.jp/efwhiu53/e/b3720ee112a2e47d1ea93ffedff120a5)

しかし著者本人も認めているように、「やや錯綜した図」(4頁)となっていることは事実である。
(情報量としては十分であるが。)

良かった点を挙げるならば、先にも触れたが、まずヴィジュアル・イメージが多い点。
しかし解説の量には不満が残る。

また絵画コレクションに挟む形で挿入されているコラムには、興味深いものも少なからずあった。
ハントの言う"Pre-Raphaelitism"と"Pre-Raphaelism"との違い(28頁)や、比較的「マイナー」な画家にも積極的に言及していたのは印象に残った。

しかし何といっても一番マズいのは、誤植の多さ。
展覧会前に出そうと見切り発車で刊行されたのかもしれないが、校閲の「ユルさ」が気になる。

4頁や28頁のコラムで"PRB"を巡る訳語について細かく触れている以上、より慎重に、語選択を行うべきだろう。

あと、出来たなら「索引」もつけて欲しかった。

ひとつの「画集」として眺めている分にはいいが、いかんせん「粗さ」が目立つ。
結論として、やはり値段不相応と言わざるを得ない。

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