ピアノの演奏会へ行くときは,できれば中央から少し左手の座席を選んでいます。その位置からピアニストの指がよく見えることと鍵盤カバーに映る美しい指が楽しめるからです。音響を考えれば右手に座ってピアノの蓋からダイレクトに音を浴びるのも乙なものですが,フレーズをどのように弾いているのかを眺められるのは生演奏の醍醐味です。
シューマンPGシリーズの最後はクララ「ロマンス」,シューマン「森の情景」,ショパン「葬送」,シューマン「ピアノソナタ第1番」の4曲。華やかな曲想の中,微妙な指のタッチの差で和音が厚く薄く自在に変化する。変拍子を絶妙なタイミングで捌く手腕によって鮮やかな音が氾濫する,至福のひととき。冬のスタンウェイはよく鳴っていました。ピアノが良く鳴っているということは乾燥しているという事と同義なので,ホール内ではエヘン虫が大暴れしていました。生のピアノの音で耳を洗われた心地がして,何も聴かずに本を読みながら帰路につきました。
おまけ;終演ちかく,うっとりしながら客席を眺めるとテレビでおなじみのフラワーアーチストのあの人がいらっしゃいました。さすが,美のエキスパート!