新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

6月大歌舞伎

2009-08-02 23:57:49 | 歌舞伎鑑賞雑記
女殺し油地獄:
何があっても必ず観に行く演目は、仁左衛門さんの与兵衛。練りに練った演技、こなれた台詞、不条理な若者の心理を得心させる演技力。生理的に気持ちの良い間合いで仁さまの目が左から右へ移り、ひとごろしの表情へ変貌する。あの一瞬を味わうことの出来る幸せは手放したくないものです。兄嫁に孝太郎、期待以上の出来でした。前回は秀太郎の兄嫁でこれに勝るものはないのではと思っておりました。しかし、孝太郎は27歳人妻の色香を原作通りに演じており、こときれる間際の型の力強さも彼の若さがよい方向にはたらいていたようです。与兵衛の母に秀太郎、父に友衛門。老夫婦の涙をさそう愛情劇が後半の悲劇への呼び水となっています。滅多にないほど演者と息の合った義太夫節と三味線の糸に乗り、ほのぐらい油屋の室内で繰り広げられる青年の殺人劇。数百年経っていてもいつまでも新しい魂を吹き込まれる近松作品。きっと次も来るぞえ・・・とつぶやいてしまう一幕でした。

双蝶々曲輪日記:
濡れ髪長五郎に幸四郎、吉右衛門が放れ駒。素人力士の放駒があこがれの大関を目の前にして緊張し、虚勢を張り、
やがて自分の意地と男を表に出す。・・・前半部分に全く魂が入っておりませんでしたね。

福助と梅雀で蝶の道行き
不思議な電光の演出で蝶や地獄の炎を演出。福助の動きが時に過剰に見えるためくどさを感じてしまい、残念。
旧い舞台写真を見るような静止画はうつくしいものでした。