新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

小菅 優 ピアノ・リサイタル 於:2007年12月9日彩の国さいたま芸術劇場

2008-01-06 23:08:56 | ききもの

曲目はバッハのインベンションとシンフォニア、リストピアノソナタロ短調。
インベンションはピアノを習った人なら殆ど誰でも弾いている曲なだけにわずかなミスタッチでも見過ごされない厳しさがあります。きっと原典版だからだわ、と思っていると明らかに間違った展開部になってしまいこちらが焦ってしまうことも。3声のインベンションで一番好きな曲が両手の平行移動の際に2音ずれてしまい、残念でもう。
しかし、生演奏でインベンションを聴いていると、自分が熱心に弾いていたまさにその頃の空気をありありと思い出し、上っていく左のフレーズを弾くと上ずった管楽器のような音を奏でていた自宅のピアノを思い出し、切なくなりました。
代わってリストでは正に水を得た魚で、たぐいまれに強い左手でぐいぐいと曲想を展開させて危なげのない演奏。夕日の残照を思わせる音色でまとめあげてそのまま間髪を入れずにノクターン「夢の中に」へ。いつもは平面で親しんでいる音楽が、生演奏で音の生き死にまで捉えることのできる贅沢さを満喫しました。まさに王侯貴族のような贅沢さです。
ちなみに、リストさんは女性に大変おモテになられていたそうです。こんな超絶技巧のソナタをサロンで聴かされた日には、失神者が続出したという伝説もあながち間違いではないだろうな・・・などと思いました。