===昨日の続き===
さて、タクシーを降りた我々を待っていたのは山中の真っ暗闇の中に建つコンクリートの建物。周囲は簡単なフェンスで囲まれていて、入り口の横から下水用なのか水路が掘られています。その水路をふと覗き込んでみると、どういうわけか何かの生物の内蔵が放り込まれているのです。
普通ならこれでかなり怯えそうなものですが酔ってもいますし、集団心理もあります。しかもこの集団、いずれも過酷な旅を乗り越えて来た人間ばかりですから何だか安心ではあります。
店に入ってみると入り口から建物の端まで続いていると思える廊下があり、左側に部屋がいくつか並んでいます。イメージは学校の校舎みたいな感じです。我々は入り口に近い大きな部屋に通されました。
さっそく、ビールとスイカが運ばれてきて、日本人らしく”乾杯”。一緒に来たトルコの人達はコーヒーです。
音楽が流れはじめてとても高齢のやせ細った女性が踊りながら入ってきました。彼女のおでこの左側には大きなコブがあり、何だか体調の悪そうな感じです。
それから間もなく、もう少し若い女性が数人部屋に入ってきて、我々のテーブルを回っては、ビールを注いだり、椅子とテーブルの間に割り込んできて膝に座ったりしてチップをせがみます。酔ってもいるので最初はチップを渡したりしていた我々ですが、皆、貧乏旅行者で手持ちのお金が限られています。
我らがボスが、皆に提案します。”このチップ、払っていたら破産でしょう?我々はベリーダンスを見に来ただけだから、ダンスを見てビールが飲めれば良いと交渉したいと思うんだけれどもそれでどうだろう?”もちろん満場一致で賛成。
様子を覗きに来たその店のオーナーとおぼしき女性に我らがボスが事情を説明します。話を聞いた彼女はわかってくれた様子。彼女が女性たちに声をかけると皆サッと引き上げて行って、ダンサーのお年寄り1人が残ったのでした。そして再び音楽が流れ始めて、交渉通りの流れになったと思った瞬間.....。
筋骨隆々とした強面の男たちが数人部屋に入ってきたのです。腕組みをして入り口を塞いで立っています。先程は交渉は成立したと思える印象だったので、これも何かの余興なのかと思いきや、そうではないようです。
”オマエ達、金を払いたくないと主張しているらしいな”と凄みます。
”イヤイヤ、誤解です。ここで飲んだり食べたりしたお金やショーを見たお金は払いますから。”
”それからどうするんだ?金を払ってくれないと聞いたから来たんだ!”
かなり険悪なムードです。それでもダンサーの老人は踊っています。
旅でいろいろな体験をしてきた私達は既に空気を読みました。どうやら誤解でもなんでもなくて、我々が意外とお金に渋いので、力づくでも払わせようという展開の様子です。
私の脳裏にはふと、入り口の水路で見た動物の内臓が蘇ります。
殺されてあそこに捨てられちゃうかも
”それじゃあ、我々はどうすれば良いのでしょうか。”
”xxxxxxxリラ払え”
とても払える金額ではありません。皆で知恵を絞りますが、無いものは無い。
我々は一緒に来たトルコの人も含めて、皆の持ち金をかき集めて見ました。言い値には全く届かない金額ですが、まあ、これしかないので仕方ありません。
”我々が払える金額は全員合わせてこれだけしかないけれどどうすればよいでしょうか。”
”それなら、それを置いてトットと出て行け”
手持ちのお金は全部取られましたが命まで取られる事にはなりませんでした。
店を追い出された我々は今どこにいるのかもわかりません。手がかりは遠くに見える旧市街の夜景。そこへ向かって言葉少なくテクテク歩きます。ここへ連れてきたトルコの人達は道中、盛んに謝ります。この辺にベリーダンスを見せる店があるとは聞いたことが会ったけれど実際に来たことは無かったとか。もしかするとすごく手の込んだ”客引き”だった可能性は否定しきれませんが、多分違うと思います。むしろ我々の思いつきに巻き込まれてしまった親切な人達。彼らも一緒にテクテク歩きます。
どうにか旧市街の町中へ戻ってきて、スルタンアフメット寺院の横辺りを歩いていると、トルコアイスのお店がまだ空いていました。魔法のランプから出てきた魔神のような風体の男が木の樽に棒を入れて捏ねています。ピザチーズみたいに粘りがあるのがトルコアイスの特徴。
ズボンのポケットを探ってみると、小銭が少しだけ出てきました。なんとかトルコアイスを買える金額です。トルコアイスを買って、皆で一口づつ食べながらイスタンブールの旧市街へ無事帰ってこれた安堵感に包まれ、三々五々、各自の宿へ帰っていったのでありました。
========完=========
さて、タクシーを降りた我々を待っていたのは山中の真っ暗闇の中に建つコンクリートの建物。周囲は簡単なフェンスで囲まれていて、入り口の横から下水用なのか水路が掘られています。その水路をふと覗き込んでみると、どういうわけか何かの生物の内蔵が放り込まれているのです。
普通ならこれでかなり怯えそうなものですが酔ってもいますし、集団心理もあります。しかもこの集団、いずれも過酷な旅を乗り越えて来た人間ばかりですから何だか安心ではあります。
店に入ってみると入り口から建物の端まで続いていると思える廊下があり、左側に部屋がいくつか並んでいます。イメージは学校の校舎みたいな感じです。我々は入り口に近い大きな部屋に通されました。
さっそく、ビールとスイカが運ばれてきて、日本人らしく”乾杯”。一緒に来たトルコの人達はコーヒーです。
音楽が流れはじめてとても高齢のやせ細った女性が踊りながら入ってきました。彼女のおでこの左側には大きなコブがあり、何だか体調の悪そうな感じです。
それから間もなく、もう少し若い女性が数人部屋に入ってきて、我々のテーブルを回っては、ビールを注いだり、椅子とテーブルの間に割り込んできて膝に座ったりしてチップをせがみます。酔ってもいるので最初はチップを渡したりしていた我々ですが、皆、貧乏旅行者で手持ちのお金が限られています。
我らがボスが、皆に提案します。”このチップ、払っていたら破産でしょう?我々はベリーダンスを見に来ただけだから、ダンスを見てビールが飲めれば良いと交渉したいと思うんだけれどもそれでどうだろう?”もちろん満場一致で賛成。
様子を覗きに来たその店のオーナーとおぼしき女性に我らがボスが事情を説明します。話を聞いた彼女はわかってくれた様子。彼女が女性たちに声をかけると皆サッと引き上げて行って、ダンサーのお年寄り1人が残ったのでした。そして再び音楽が流れ始めて、交渉通りの流れになったと思った瞬間.....。
筋骨隆々とした強面の男たちが数人部屋に入ってきたのです。腕組みをして入り口を塞いで立っています。先程は交渉は成立したと思える印象だったので、これも何かの余興なのかと思いきや、そうではないようです。
”オマエ達、金を払いたくないと主張しているらしいな”と凄みます。
”イヤイヤ、誤解です。ここで飲んだり食べたりしたお金やショーを見たお金は払いますから。”
”それからどうするんだ?金を払ってくれないと聞いたから来たんだ!”
かなり険悪なムードです。それでもダンサーの老人は踊っています。
旅でいろいろな体験をしてきた私達は既に空気を読みました。どうやら誤解でもなんでもなくて、我々が意外とお金に渋いので、力づくでも払わせようという展開の様子です。
私の脳裏にはふと、入り口の水路で見た動物の内臓が蘇ります。
殺されてあそこに捨てられちゃうかも
”それじゃあ、我々はどうすれば良いのでしょうか。”
”xxxxxxxリラ払え”
とても払える金額ではありません。皆で知恵を絞りますが、無いものは無い。
我々は一緒に来たトルコの人も含めて、皆の持ち金をかき集めて見ました。言い値には全く届かない金額ですが、まあ、これしかないので仕方ありません。
”我々が払える金額は全員合わせてこれだけしかないけれどどうすればよいでしょうか。”
”それなら、それを置いてトットと出て行け”
手持ちのお金は全部取られましたが命まで取られる事にはなりませんでした。
店を追い出された我々は今どこにいるのかもわかりません。手がかりは遠くに見える旧市街の夜景。そこへ向かって言葉少なくテクテク歩きます。ここへ連れてきたトルコの人達は道中、盛んに謝ります。この辺にベリーダンスを見せる店があるとは聞いたことが会ったけれど実際に来たことは無かったとか。もしかするとすごく手の込んだ”客引き”だった可能性は否定しきれませんが、多分違うと思います。むしろ我々の思いつきに巻き込まれてしまった親切な人達。彼らも一緒にテクテク歩きます。
どうにか旧市街の町中へ戻ってきて、スルタンアフメット寺院の横辺りを歩いていると、トルコアイスのお店がまだ空いていました。魔法のランプから出てきた魔神のような風体の男が木の樽に棒を入れて捏ねています。ピザチーズみたいに粘りがあるのがトルコアイスの特徴。
ズボンのポケットを探ってみると、小銭が少しだけ出てきました。なんとかトルコアイスを買える金額です。トルコアイスを買って、皆で一口づつ食べながらイスタンブールの旧市街へ無事帰ってこれた安堵感に包まれ、三々五々、各自の宿へ帰っていったのでありました。
========完=========
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