旅のウンチク

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オフロードとダート

2005年02月10日 | 海外ツーリング
言葉というのは文化の違いを大いに反映するもので、日本語では1つの単語で表しても、他の言語では微妙な違いを捉えて違った単語で表現する、あるいはその逆という事が多々あります。後者の代表的な例は魚の呼び名。セイゴ・フッコ・スズキなどと魚の年齢でまったく違った呼び名になる“出世魚“の存在は日本人の生活に魚介類が密接に関わってきた事の証として面白いと思いますし、逆に我々がラクダという単語1つしかもたない生物に対してアラビア語ではかなり多彩な単語を持っているという話を何かで読んだ事があります。
 オフロードとかダートといった言葉は外来語ですが、これも文化の違いからか日本ではあまり明確な使い分けはなされていませんね。一方、英語ではオフロードとダートはまったく別の言葉として認識されています。国によって微妙にそのニュアンスが違ったりするのですが、日本のようにほぼ同義語という事はありません。

 例えば“オフロードバイク”と我々が呼ぶ場合、ジェベル250、アフリカツイン、BMW F650GSやR1150GSなども含めて呼ぶのではないでしょうか。むしろ我々のニュアンスではKX250FやCRF250など競技専用車は”モトクロッサー“とか”レーサー“という別の分類に含めていて、オフロードバイクに含めていないかもしれません。ところが、例えばカナダのガイドたちと話しているときは”Off Road Bike”はKX250FやCRF250、あるいはKTM250EXCなど、競技専用の車両を指す言葉であって、ツアーで使う”DRZ400SE”などは”Dual Sport Bike”。両方を総称して”Dirt Bike”と呼んだりすることもあります。

 お客様がガイドに“普段どんなバイクに乗っているの?”と聞かれて“XR250”と答えると、”Off Road Bike?”と再質問されて不思議な顔をしている時があるのですが、これは競技専用のXR250Rか、ナンバーつきのXR250Sか聞かれていると思って間違いありません。

 私が添乗員として同行しているツアーに参加したことのある方は、1日の行程が終わりに近づいた頃に私が現地ガイドとバイクを寄せ合って何事か話し合っているのを見た事がある人も多いでしょう。あれは“今日晩メシ何にする?”と話し合っている事も多いのですが、それ以上に”ここからもう1回オフロード・ライディングして行くか?それともダートでホテルへ向かうか?“なんて相談しているのです。この相談が終わるとだいたいリーダーガイドはそこから道を外れて訳のわからない藪の中へ皆さんを誘導して行ったのではないでしょうか。

 オフロードとダートはガイドと添乗員がどっちにするか話し合わなければならないほど違うのです。ニュアンスの近い日本語で言えば、ダートは”未舗装路“。オフロードは”道なき道“でしょうか。カナダのデイブやオーストラリアのビンスは”整備の行き届いた道幅の広いダート”の事を“ハイウェイ”と呼んだりもします。これは正しい英語では無く、彼ら流儀の呼び方かと思いますが・・・。

 私は“どうする?ここからハイウェイで帰るか?ハードコースで行くか?”と聞かれて“今日はみんな疲れているようだし天気も悪いからハイウェイで行こう”と答え、お客様には”ハイウェイで帰ります。“と説明したのに延々とダートを走らされてビックリした事が何度かあります。

 ついでに我々がオフロードと総称するものに類する英語の表現をいくつかあげてみると
・トレール:ダートより幅の狭い、車1台がやっと通れるかどうかといった道幅の未舗装路
・シングルトラック:道幅が狭くて、四輪の轍はなく、人が歩いたか、バイクが通ったかの轍が1本だけの道
・モトクロストラック:モトクロスコースのこと

 私個人にとってはダートバイクで走る楽しみの一つは“オフロード”を走ることだと思っています。もちろん、モトクロスコースなどの整備された環境で思いっきりバイクを走らせるのも楽しいですが、これは海外まで行かなくてもできますね。ダートロードを気ままにツーリングするのは個人でツーリングでも可能。ただ、オフロード・ライディングとなると自分たちより確実に上手いライダーが引率してくれて楽しい。あのコースを個人でツーリングするとちょっと悲壮感が漂うかもしれません。

 私が海外オフロード・ファンライドの企画に関してガイドの技量にこだわる所以です。

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