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旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

イスタンブールでベリーダンスを-その1

2017年01月19日 | 旅の風景
 前回とは違って現実世界での体験の事。
 
 スーパーカブで旅するタイ北部タイ&ラオス路線バスの旅のようにお客様と一緒に旅する企画の場合、ほとんど24時間一緒に行動するので、特に一緒に”呑んでる”場面では色々な旅の話をして過ごすことが多いのです。
 
 そんな時に旅先で危ない目にあったことがあるかと尋ねられる事があります。
 
 私は幸運なのか、そういうものなのか、本当に危険な目にあったことはあまりありません。朝起きたら、安宿の中庭でアフガニスタンゲリラ御一行様が朝食をとっていて、”一緒に食べよう”と誘われたり、そういう見た目危なっぽい体験はいっぱいありますが、大抵は危なっぽい不思議体験の範疇に収まります。

 とはいえ、やっぱり危険を感じた体験はあります。今回はそのうちの1つ。

 1988年(だったと思います。)南アジアからヨーロッパへ向けてバイクで旅していた私は少し急いでいた時にオイル管理を怠ってバイクのエンジンにダメージを与えてしまいました。騙し騙し走ってきたけれども、トルコのイスタンブールへ向けて走っている時にロッカーアームが折損。4バルブ単気筒のエンジンが2バルブになってしまいました。幸いまだエンジンはかかったので盛大な騒音を響かせながらイスタンブール入り。イスタンブールで探し出したバイクショップで大々的なオーバーホールをお願いすることになりました。

 バイクが直ってくるまでは待つしかありません。旧市街の安宿のドミトリールームに滞在しながら毎日ぶらぶら過ごします。実はイスタンブールに到着した日にパキスタンのカラチで会った日本人ライダーと偶然再会、開き直ってしばらくイスタンブール滞在を一緒に楽しんでいました。

 当時のイスタンブールは旅人にとってもまさに東西文明の十字路。私以外にも”外的要因”でやむを得ず長期滞在している日本人旅行者がゴロゴロ居ることがわかりました。多くがシリアやヨルダンのビザ取得で悪戦苦闘中。イスタンブールの領事館に行ったら、”アンカラの大使館へ行け”と言われ、アンカラの大使館へ行ったら”イスタンブールの領事館へ行け”と言われたとかでトルコ国内を行ったり来たり。当時の旅人はそのくらいのトラブルは慣れっこ。笑い話のネタに過ぎなかった時代です。そんな人達がイスタンブールでいつ終わるか判らない”待ち時間”を過ごしていたのです。
 
 日が経つにつれて、そういう人達同士が知り合いになって、知り合いが知り合いを呼び、何だか不思議な集団が出来上がっていきました。

 誰が言い出したわけでもないのですが、いつしか決まった集合場所はスルタンアフメット寺院前の広場の大きな木の下。夕方になると三々五々集まって、なんとなく皆で飲みに出かけるのが日課となっていきました。

 そんなある日のこと。いつものように皆で呑んでいた現場はガラタ橋下層のレストラン。”サカナ、サカナ”とか”サバ、サバ”とか、変な日本語で呼び込みしているこの店は我々の1つの行きつけの店となっていました。

 我々の殆どが、私を含めて20代、その中に1人だけ30代後半(?)と思える、我々にとってボス的存在の人がおりました。実はこの人、中国から国境を超えてきた際にパキスタンで私と会っていて、イスタンブールの郵便局の前でばったり再会した不思議な縁のある人物。世界は広いようで狭いものです。
 
 さて、そのボスが雑談の合間に話します。
 ”実はイスタンブールに来たら是非、ベリーダンスを見たいと思っていたんだ。”

 いい加減酔いの回っている我々は全会一致で”良いね、行ってみよう。”と無責任に言い放ちます。

 ところが、誰一人、どこへ行けば良いのかわかりません。”何だか観光客向けにディナーショーやってるようなところがあると聞いたけど”とか、そんな程度の情報しかありません。この話、そのまま消えそうになって、我々の話題は別の方向へ向かい始めたのでした。

 我々と隣り合ったテーブルでトルコ人の男性二人が静かに食事をしていました。我らがボスは得意のドイツ語で話しかけます。

 *トルコからはドイツへの出稼ぎ労働者が多いので英語よりドイツ語の方が通じる場合があるのです。

 すると、彼らも乗り気になって、”それじゃあみんなで行こう”という事に。一度消えかけていた企画は一気に現実化。店を出てベリーダンスを見に行くことになりました。

 ガラタ橋の上へ出てタクシーを2台確保して、件のトルコ人の案内で現場へ向かいます。旧市街を抜けたタクシーは小高い丘へ向けて走ります。いつしか道路は未舗装になり、振り返るとイスタンブール旧市街の夜景が美しく広がっています。
 
 整備はされているけれど未舗装の道路をしばらく走って来たタクシーは、山の中にポツンと寂しく建っているコンクリートの箱のような建物の前で我々を降ろして去っていったのでありました。

=====続く=======


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