旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

不安の幻影

2007年10月25日 | 旅行一般
ここ数年、限りなく増えたと感じさせられるのは"不安"を相談してくるお客様の数。こういったご相談の対応をしていると、旅に出ようとする時、まず、インターネットで価格比較、そして一番安い所で予約をして、次に不安材料探し。今度は不安材料を潰すために出発までの大切な時間を費して、ヘトヘトになって出発していく方が多くなったなと感じさせられます。

皆さんの多くは学校や仕事、あるいは買い物など、日々、外出するのではないでしょうか。テレビのニュースなどを見ていると、交通事故や、傷害事件、災害などの危険な事件がニュースで毎日流れてきます。こういう情報に接したら、やはり、外出するのに不安を感じて懸命に対策を考えたり調べたりするのでしょうか。たいていの人は自分にそんな事件が降りかかってくる事はかなり低い確率だ判断して行動しているのではないでしょうか。

確率と言えば、日本国内で一人の日本人が犯罪に巻き込まれるケースの方が、海外で犯罪に巻き込まれるよりもずっと確率が高い事にまず気がついてみませんか。一生のうちで、日本国内で日常生活を送っている時間の方が海外を旅している時間よりも長いわけですから当然そうなります。

たとえ、日本より治安の悪い国にいたとしても、そこに1日か2日、あるいは1週間程度しか居ないのであれば、重大な犯罪者と遭遇できる確率はそれほど高くないと思います。もし、そんなに容易に犯罪者を発見できるのであれば、あなたは、現地警察やインターポールの情報屋として機能できる特異な能力を有しているわけですから、それを活用する道を考えて世の中に貢献すべきでありましょう。

海外に行くと犯罪やトラブルに巻き込まれるのではないかという不安は幻影だと言えると思います。

京都に旅行に行くとします。その時あなたは京都で起こる可能性がある事故や犯罪について調べて不安を募らせる事があるでしょうか。交通事故の多発地帯を調べたり、活断層の場所を調べて訪問地を決めたりするでしょうか。

日常生活や国内旅行では感じない不安について、海外旅行となると懸命に調べる事。それがナゼなのかをまず考える必要があり、その事の方が、不安材料を一つ一つ調べるよりも重要なのです。なぜならば、不安材料を各論で調べて対策をしていっても、現地で少し違う事態に陷ったら"想定外"。多分対応できないからです。

この"対応できない"という事。これが海外につきまとう不安の原点ではないでしょうか。だから調べても調べても新しい不安材料を見つけては、また不安になるのです。

日本国内であれば対応できる事を海外だと言葉の問題や社会システムに対する無知で対応できない不安。いろいろ調べている不安は結局、そこに集約されているのではないでしょうか。そうであれば、不安材料を調べるのをやめて、"対応できない自分"を直す事に努力してみた方が早いはずです。

解決は簡単。個別に対策を考えるのではなく、言葉を学びましょう。それから、現地の習慣や社会システムについて学びましょう。最も応用の効く不安対策のできあがりです。

ちなみに私がそういう努力を払ってきたからここに書いているわけではありませんので、誤解なきように。

私は不安材料を調べるのも面倒。言葉を学ぶのも面倒と感じる怠惰な旅人。"まあ、何とかなるだろう。自分だけは大丈夫"という根拠なき楽観をよりどころとしてきました。そしてこの方法でここを読んでいる大抵の人より多くの場所を訪れて、まだ生きてるわけですから、やり方と運によっては、いいかげんな楽観論でも大丈夫という事の生きたアカシと言えましょう。ただし、この楽観論は私にしか通用しないかもしれないので、その点も誤解なきように。


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