旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

プライベートな空間VS交流の空間

2015年10月24日 | 旅のノウハウ
 スーパーカブで旅するタイ北部タイ&ラオス路線バスの旅など、ここしばらく新規に企画した”本当の旅企画”では基本的に安宿に宿泊します。これによりコストダウンを実現しているとお考えの方が多いかもしれませんが、実は全く逆で、この部分に一番コストがかかっています。

 考えてみてください。毎日の宿泊先を現地で安宿を探す役割の人員(つまり私)が不可欠な旅になるわけで、そのために旅の期間中はE&Gインターナショナルは臨時休業になるわけです。これなら中級程度のホテルを手配して、”いってらっしゃい”としたほうがずっとコストは安く済みます。

 コストと労力をかけて”安宿”に泊まるプランにしているのは、単純にその方が”楽しい”からです。それから、”本当の旅”企画が目指しているコンセプトにも一致します。これらの企画で体験していただきたいことのうち、いろいろな人との交流というのがあるのです。これにはホテルより安宿が向いているのです。ただし、これをうまく楽しむためには安宿なりの過ごし方を理解しておく必要があります。
 
 何も難しいことではありません。ホテルとは違って、安宿はのイメージは”知り合いの家に泊めてもらう”感じだと思えばうまくいきます。そういう意味ではニュージーランドやイギリスの田舎町のB&Bなどを考えればわかりやすいかと思います。大都市のB&Bは別ですが、小さな町のB&Bは、たいていは子供たちが独立した老夫婦の経営で、子供部屋だった部屋に人を泊めてくれるようなところが多いのです。だから、ベッドルームはベッドがあるだけ。シャワーやトイレは共同です。その代り、リビングやダイニングがあります。

 お客様の中には気が付いた人もいたようですが、私が安宿を選択する際には必ずこの”リビング”的な空間をとても重視しています。部屋が汚いとか、部屋が狭いとか、エアコンがないとかは全く気にしません。部屋に帰るのは”寝るとき”だけですから、もうエアコンは要らないので、いつもエアコンなしの部屋。部屋が汚いとか、狭いとかは暗くてよく見えません。

 例えばあなたが友人の家に招かれていて、その家に客間があるとします。荷物を持って友人の家を訪れたら、客間に通されました。そのあと、夕食までずっと客間で過ごすでしょうか。部屋に荷物を置いて一段落したらリビングに顔を出すなり友達の部屋を訪れるなり、いずれにしても客間に立てこもったりしないのではないでしょうか。

 あるいは、外出先でなかったとしても、休みの日あなたは終日自分の寝室で過ごすでしょうか。

 友人宅や安宿に共通しているのは、ホテルの部屋のようにはプライベートな時間や空間が確保できないという事です。プライバシーは確保できても自室内でプライベートな時間を堪能するというのは難しいです。でも、ここで考えてほしいのは、旅先でまで、そこまでプライベートな時間や空間にこだわるかどうかです。それは普段、日常生活で十分確保できることではありませんか。それなら旅先の1週間くらいは他の旅人や、地元の人や、偶然居合わせた人、そして、同じ旅行企画に参加している人などとの交流に時間も空間もささげてみてもよいのではありませんか。その人々と話したり一緒に過ごす機会は二度と訪れることのない貴重な時間となることは間違いありません。

 スーパーカブで旅するタイ北部タイ&ラオス路線バスの旅に今後参加される方はもちろん、バックパッカーとしてゲストハウスやB&Bに泊まる人はぜひ、”リビング”をうまく使う旅を試してみてください。

 ゲストハウスを探す場合はまず、”リビング”として使えるスペースがあるところを選んでください。

 宿についたら部屋に荷物を片付けます。場合によってはシャワーを浴びたり着替えをしたりも必要でしょう。それが済んだらとりあえずリビングスペースへ。でも、ただ単にそのスペースに行くだけだと少し手持ち無沙汰になるかもしれません。

 私のおすすめは、その日のお小遣い帖をつけるとか、日記をつけるとか、あるいは”旅ノート”を作る方ならノートのまとめをするのも良いでしょう。写真やスケッチのできる人ならそういうのもよいですね。あるいは今回のタイ&ラオス路線バスの旅の参加メンバーのように”とりあえずビール”でもよいと思います。お酒を飲まない人なら紅茶やコーヒーでも。軽い食事でも。

 そのとき、他の旅行者がいたら思い切って話しかけてみるのもおすすめです。そのためには宿で顔を合わせた時に軽く挨拶する習慣を持つのが良いと思います。あるいは、宿のスタッフに”どこか食事するのにおすすめの場所は?”とか”短い時間で見学できるおすすめのところは?”と尋ねてみるのもありだと思います。こんな何気ないコミュニケーションが一生ものの友達につながる交流になることもありますし、現地でしか得られないマル秘情報を得ることにつながるかもしれません。

 素晴らしい風景とか、世界遺産の建物などは日本にいても写真集やテレビ番組で見ることができなくもありません。でも、旅先で出会った目の前にいる人とは、あなたがその場に身を運んではじめて出会えるわけですから、その出会いを粗末にすることなく、少しでも交流を楽しんでみてはいかがでしょうか。


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