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子ども手当の所得制限 年収2000万円 ほとんど意味なし?

2009年12月19日 10時10分04秒 | 子ども手当・子育て
政府・与党で、子ども手当の所得制限額の調整が続いている。これまでの所得制限を設けない方針からの転換は「規定路線」かのようである。

「年収2000万円」浮上=子ども手当の所得制限
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091218X284.html

もっとも有力な案が「2000万円」である。年収2000万円となると、子ども全体の0.1%程度。これでは、所得制限をかけていないようなものであり、削減できる額も20~30億円程度。所得把握の経費が必要となるため、トータルの予算額は、所得制限なしの場合を上回ることになると思われる。これでは、「鳩山由紀夫首相のお孫さんに差し上げるのが適当か」が発端であるかのようである。
昨日のブログに書いたが、児童手当の事務と同じことを子どもがいる世帯すべてに対して実施すると、大変なことになる。原口総務大臣は、さっそくと「イニシャルコストやシステムのコストまで入れると大きい。1.5倍かかるという話もある」と述べ、厚生労働省が補正予算に計上しているとされる(所得制限なしで見積もった)約120億円では足りない、もっと積み増さないと足りないとの考えを示している。どう考えても、捻出した額を上回ってしまう。
年収2000万円というと、東京都港区のような高所得層が多く住む一部の地域を除いて、いちいち確認しなくてもよい水準である。住民税のITシステムから取り込んだ年収の確認に留めるなど事務の簡素化をはかり、「性善説」的に支給するほうがトータルの予算額を抑えられるかもしれない。性善説で組み立てておいて、もし不正が見つかれば、支給額の何倍ものペナルティを課せばよい。年収2000万円を上回る世帯なのだから、それぐらいのことをしても大丈夫だろう。

子ども手当所得制限「事務経費に配慮を」 原口総務相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091218-00000551-san-pol

その一方で、児童手当並みの「800~860万円」との案も出されている。民主党の重点要望は、次年度予算を圧縮するために出された「助け舟」であり、それに乗るべきとの考えである。この額でも、小学校卒業までの全児童の約9割に支給できるし、削減できる額も2000億円を超える。しかし、支給対象にならない約1割は、扶養控除の廃止に伴って負担増となる。子ども手当は、児童手当の名称を替えて支給額を増やしたものに過ぎず、中・高所得層にとっては負担が増えるようなものだったのかとの失望が広がるだろう。これではマニフェストからの後退感はぬぐえず、来年の参議院選挙に支障が出るとの反対意見が強い(民主党は、これを覚悟の上で重点要望のトップに持ってきたにも関わらず、政府=鳩山首相と長妻大臣が理解していないとの不満があるらしい)。

子ども手当 所得制限、年収2000万で調整 首相、公約実施固執せず
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091218-00000071-san-pol

そもそも、これだけ迷走しているのは、厚生労働省の予算規模が膨れ上がっていて、他省ではできている圧縮に失敗しているからである。「政治主導」を標榜するなら、長妻大臣は、無理を承知の上で、全ての予算をさらに一律1割カットすること、カットできない予算は局のなかで調整すること(できないとは言わせない)、確保した財源をマニフェストの実現に充てたうえで予算額の圧縮にまわすことを命じ、すぐに報告を求めるぐらいの覚悟=強権発動が必要だろう。国土交通省にできて、厚生労働省にできないわけがない。
このまま財源確保の決着をつけてしまうと、やりたい放題が止まらない厚生労働省の役人の高笑いが聞こえてきそうである。厚生労働省の予算は無駄だらけ。押しに押せば、いくらでも圧縮できるはず。次年度予算は仕方ないにしても、その次は、民間の知恵をどんどん入れて「官僚主導」を排すべき。長妻大臣には、ピエロで終わってほしくない。

「子ども手当」所得制限で最終調整 参院選対策か 財源捻出か
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091219-00000058-san-pol