制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

東京都が高齢者見守りサービス「シルバー交番(仮称)」を2010年度から開始

2009年12月09日 10時39分27秒 | 高齢者医療・介護
このブログで、1ヶ月ほど前に、
・大都市圏の高齢化が一気に進む
・人口が集中している地域が高齢化するため、高齢者の絶対数が現在とは比較にならない
・それだけの高齢者を支える地域社会がないため、代替する何らかのサービスの開発が必要になる
と書いた。

首都圏では、近い将来、確実に65歳以上人口が1000万人を超える。ほとんどは「元気高齢者」とはいえ、高齢者だけの世帯や高齢者一人暮らしの世帯も多くなり、地域社会とのつながり・支え合い感情が希薄な地区においては、将来への不安を抱えながら暮らしていくことになる(現在は、子どもが独立して出て行った後がイメージされるが、これからは、独身のまま高齢者になる人たち=地域社会のみならず家族による支え合いも希薄な人たちが増えていく。時代に合わせて、高齢者世帯の生活イメージを置き変えていかなければならない)。
そのような「時代」を先取りしているとマスコミに取り上げられている地域は、新宿区の「戸山団地」である。取り上げ方は、「都市部に出現した限界集落」で、65歳以上人口が50%を超えている。高度成長期の「団地」なので、ドアを閉めると家のなかがどうなっているのかわからないし、もはや建て替えることもできない。住民である高齢者の引きこもりや孤立を予防するために「団地内の地域コミュニティを再生し、住民による支え合いを」といった緩やかな支援では、もはや間に合わないという状況(=直接的な支援を必要とする深刻な状況)に至っているという位置づけである。その報道の先には、「高度成長期の前後に郊外に整備が進められた集合住宅の多くは、いずれ同じような状況になる」などと、危機感をあおるものとなっている。
都市部の中心に近い地域で「人口の50%超が高齢者」と聞くとなかなか想像できないかもしれないが、あと10~20年もすれば、「人口の40%超が高齢者」となるのは、ほぼ間違いない。都市の一部に限った「特異な光景」ではなく、日本の至るところでみられるようになる「日常の光景」である。現在の六本木ヒルズやミッドタウンなどの超高級マンションは、50年後には「老朽化した超高層マンション(住民の大半を占める高齢者にとって、住みづらい環境)」などと社会問題として扱われるようになるかもしれない。今のうちに都市における「生活」を超高齢社会に適応したものに変えていかないと、都市部は、とても暮らしづらくなるだろう。

都市部において高齢化が一気に進むこともあり、東京都は、都内の区市町村と連携して「シルバー交番(仮称)」を設置しようとしている。設置は、2010年度からで、予算は1億円程度。居宅介護事業者など15ヶ所に設置して、社会福祉士ら2人ずつを配置。具体的な機能は、住民からの相談を受けて、必要な情報を提供したり介護保険サービスや様々な民間サービス・ボランティアなどにつないだりすること。本人が希望すれば、緊急通報装置や各種センサーなどを使った日頃の見守りと安否確認を行うこと。緊急時には誰かがすぐに駆けつけられるようにすることなど、昔ながらの「交番のおまわりさん」の福祉・介護版といった感じである。社会福祉士を配置するからには、シルバー交番が地域社会への働きかけも行って、「困ったことがあれば何でも相談にきてほしい」や「地域の課題を解決するために、一緒に取り組みましょう」といった「地域のつながり・支え合い感情の醸成」も合わせて実施できれば、と期待しているのだろう。
1ヶ所の担当地域は、中学校区2つ分。初年度は、15ヶ所でスタートする予定ということなので、モデル事業の色合いが強いと思われる。地区によっては、地域包括支援センターの役割と機能と一部重なるため、シルバー交番が提供するサービスの問題を洗い出し、解決方法を考えながら先に進める必要がある。

お年寄り見守りにシルバー交番 安否確認、生活援助窓口も
http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120801000026.html

地域コミュニティが有する住民の支え合い機能・見守り機能が残っている地域においては、このような仕組みは必要としない。支え合いの機能がほとんどない都市部においては、何らかの主体が提供する「サービス」によって機能を代替させ、そのサービスを継続して提供できるような財政的な裏づけ、有償でもいいから提供してほしいと求められるサービスのあり方を考えるべきだろう。